別れ道だとわかっていても歩いていく「青春のすべて」

 

アルバム「ジャム」には、様々な意味で“置いて行くものへの名残惜しい気持ち”の描かれた曲がいくつもあるように感じた。実際にそうなのかもしれないし、今の自分がピックアップする言葉が無意識のうちにそうなっているのかもしれない。

特に、いきものがかり水野良樹さんが作詞・作曲をして、編曲を本間昭光さんがしている「青春のすべて」は、聴いていると思い出してしまう存在があってどうにも堪えることが難しい。曲として好きだからこそ、いつか普通に聞ける時がきたらいいなと思う。

 

MVを合わせて見ると、四季折々を越えていく関ジャニ∞の表情を見ることができて素敵だった。

始まりの安田章大さんのシーンがとても好きで、万年筆・インクの瓶・手紙というモチーフが印象的だった。“手紙”がテーマとなるものに、私はめっぽう弱い。優しい表情で手紙を綴る安田さんは、書き終えたあと、紙飛行機を作って窓から飛ばす。ポストには出さない手紙。それがこの曲のメッセージのように思えた。

会えないのか、会わないのか、いないのか、それぞれに思い描く景色があるだろうなと思う。

 

「青春のすべて」を紹介される時、この曲は壮大なバラードと称されたりもしていたけれど、私には、小さな生活のなかで感じる言いようのない寂しさや後悔を許してくれる丁寧な曲だと思った。

イントロは確かに壮大で、しかし歌い出しから一変して、声の際立つ繊細さが現れてくる。渋谷すばるさんと村上信五さんのユニゾン。それに続く横山裕さんと丸山隆平さんのユニゾン。それぞれ相性のいい二つの声が重なり合って、曲の空気に覆われていく感じがした。

“秋”を表す紅葉の美しい映像に胸を打たれて、見入っていた。紅葉に手を伸ばす渋谷すばるさんの横顔、瞳にフォーカスが当たった丸山さんの表情、沢山の赤い木々に囲まれて真ん中にポツリと立ち上を見上げる大倉忠義さんの瞳がキュルキュルと光を映していたところ。ぼかしが綺麗で、素敵な映像だった。

 

アルバムで一曲をしっかりと聴く前は、自分もこの曲をスケールの大きな曲として聴くのかなと予想していた。自分の心に思い当たることがなければ、私はこの曲を“曲の中にある誰かの心境”として聴いたのかもしれない。卒業の時期に思い出しては、学生でいられたら「青春のすべて」を卒業式で歌いたかったなあなんて想像をしていたかもしれないなと思う。

 

きっと僕らが生きる明日は 悲しいけどもうひとつじゃない

サビのこの詞が、ふんわりとしたノスタルジーな描写が続く流れから、はっきりとした現実を示していて、聴く度にどきりとする。

卒業でも、別れでも、 わかっているつもりでもわからないことがあって、その“わからない”を「青春のすべて」は歌の歌詞として言い表してくれていると感じた。

置いて行きたくないものがあるけど、進まなくてはいけない時。寂しさを力に変えていくことの強さを信じたくなる曲だった。

 

2番の始まり、

起きがけのニュースで知った いつのまにか桜が咲いたと

と歌うのが渋谷すばるさんなのはベストだったと感じた。渋谷すばるさんがそのフレーズを歌うことで伝わる、生活感の温度があると感じたからだった。日常のなかで、テレビをつけて、桜が咲く季節になっていたことを外の風景を見てではなく、ニュースで知った。歌の主人公が、毎日を無意識なまま生きている様子が伝わってきて、切なくなった。

 

「これまで」を忘れたいわけじゃない

「これから」を想って生きたいんだ

この言葉が何よりの、歩みを進めていかないといけない人の持つ想いのすべてだと思った。

時間が止まるのならそこにずっと残って閉じ込められてもいいけれど、現実はそうはいかないから、時間は進めていかないといけない。映画「味園ユニバース」のカスミのように、時が止まってしまうこともあるけれど、時間を動かすには自分の意思がなければ動けない。

だから言い訳ではなく、“忘れたいわけじゃない”とはっきり言葉にしてくれる歌詞があることは大切だと思う。

 

だからこそ もがいて あがいて 自分なりをつかんで

というフレーズを、男らしい低くて太い声のイメージがある大倉忠義さんと錦戸亮さんが歌い、裏声で、か弱い声色を出してもらうことによって、いつもは強くいるその人の揺れる心の弱さを表しているように思えた。言葉としては強い意味であるはずの“もがいて”、“あがいて”が、強く歌わず空気を含むことで、必死にどうにか歩んでいるんだという情景まで伝わり、すごいと思った。

 

 

 そして僕はなんどもその手を 思い出して泣きそうになって

「情けないな」と悔しがって また前を向くんだろな

安田さんの声色がなんとも言えず胸を締め付けて、ここは安田章大さんの溢れ出る包容力のある声だからこそ成立するのだろうなと感じた。思い出しては、ではなく、『は』を抜いて、“思い出して泣きそうになって”と言葉を詰めることで、感情が込み上げてくる心情が伝わってくる。

“何度も”思い出して泣きそうになるけど、悲嘆には暮れずに「情けないな」と“悔しがって”また前を向く、というところに、悔しがる気持ちが湧くことの強さを感じた。

MVでの安田章大さんの、笑顔とも泣き顔とも取れない表情と、握り合う両手が、この歌詞に込められている意味を表現していて、ほっとするような、悲しみが素直に溢れてくるような気持ちになる。

 

関ジャニ∞がそれぞれにコンビを組んでのユニゾンは、どのコンビにも特色があって素敵だけど、このサビにきての全員でのユニゾンは本当に感動した。入り組んでハーモニーになってではなく、ユニゾンだからこその良さで、目の前に立つ7人が真っ直ぐに声を届けてくれているような、温かさと安心感があった。

 

いつの日にか春がまたきたら 今度こそはちゃんと伝えるよ

君に出会えてよかった 僕は明日を生きている

僕らがみたのは 青春のすべて 忘れはしないよ 季節が変わっても

 

懸命に時を進める覚悟をした主人公の想いがここにある気がした。

“僕は明日を生きている”という言葉が、何よりの“君”への感謝の想いであり、やるせないほど切ない想いを表す言葉になっていると思った。

“いつの日にか春がまたきたら”と歌うところにまだ切なさがあって、春は毎年来るのに、来年春がきたらではないんだと聴いていて思った。主人公にとって受け入れられる時がきたらという意味なのだろうなと思う。だからもしかすると歌詞カードでの表記が漢字で『来たら』では無く、“きたら”とひらがなになっているのかもしれない。

 

それぞれが、心のなかに持つ青春や、忘れたくないもの。これから作っていくのかもしれない青春も、大切であることに変わりはないと、そっと肩に手を触れてくれるような曲だった。

たとえばもし、今はまだ強い気持ちで言えない言葉があったとしても、関ジャニ∞の歌うこの曲があったなら、進んでいけるのかもしれない。

 

穏やかさとパワフルさを持ち合わせた半崎美子さんの歌声

 

初めて半崎美子さんの歌を聴いたのは、2013年のことだった。

父と行ったショッピングモールで、ライブが行われるというアナウンスを聞き、見に行こうかと大広場の石段に座って、歌を聴いた。

パフォーマンスを見たり、アーティストの歌を聴くことが好きで、出掛けるとよく立ち止まって見ることはあったけど、始まるのを待って、そして最後まで聴いていたのはその時が初めてだった。

「希望の桜」リリース記念で行われていたイベントで、ポスターの優しく鮮やかな桜色と半崎美子さんの横顔の写真がとても印象に残っている。

 

そのショッピングモールで初めて、半崎美子さんの歌声を聴いた。

「希望の桜」を聴いた時、言葉にできず一人で抱えていた感情をすっとすくい上げられたような気持ちになった。

十代だった私は、押しつぶされそうな不安と一人で戦っていて、まだ殻の中にいた。「希望の桜」の歌詞は、自分でもどうしてなのか分からないまま傷ついていた心に、浸透していった。 

あなたの心がそこにある限り

必ず笑える日が来る

誰にも奪えないその心に

また同じ景色を呼び戻そう

自暴自棄な心境を、そういう感情の時もあると肯定できたのも、それでもきっと抜け出せる日が来ると思えたのも、この歌をあの時に聴いたからだった。

歌声を聴いて、こんなに包容力のある声があるだろうかと思った。綺麗な声で綺麗な歌を聴いても心は動くかもしれないけれど、半崎美子さんの歌声は、痛みを知っている声のような気がした。

「希望の桜」はアップダウンの激しい歌ではなくて、序盤は特に抑えて歌う部分が多い。けれどその抑えた声が耳に残る。声が泣いていて、歌に溢れるほどの思いが込められているから心を揺さぶられるのだと感じた。

抑えて歌うことができるのは歌唱力がしっかりと築かれているからで、きっと洋楽のようなソウルフルな楽曲も似合う声だろうなと思いながら見ていた。低音のハスキーさのある落ち着いた声色が、とても印象的で好きだなと思った。

 

ライブが終わって、CD販売があった。

その頃の私はとにかく引っ込み思案で、自らそんなコミニュケーションに向かうようなタイプでは決してなかった。

でも、この歌のCDが欲しいと思った。お買い物に行くからと持っていたお小遣いを使ってでもCDを持って帰りたかった。列に並び、自分の番が来た。

さっきまで歌を聴いていた人がすぐそこにいて、目を見てお話しをできるなんて、緊張して仕方がなかった。緊張のあまり何を話したかは覚えていない。どちらかというと父が色々話していて、私はまた父の後ろという感じだったようにも思う。

それでも、まっすぐに半崎美子さんが向かい合ってこちらを見ていてくれていたこと、会話に慣れていない私の話を聞こうとしてくれていた景色は今も覚えている。あの時の写真が今でもケータイには入っていて、それは私の宝物になった。

最近、部屋を整理していたら、当時のフライヤーとイベント案内がちゃんとファイルに入って保存してあったのを見つけた。

 

HMV限定シングルだったらしい「希望の桜」のCDには、「不等号」と「おいていかないで」という曲も収録されていた。

「不等号」が私はすごく好きで、歌詞に出てくる、全く素直じゃない彼女の心の声が好きだった。

この「不等号」という曲での歌声は、「希望の桜」などの穏やかな印象から変化して、パワフルでスピード感のある歌声になっているところも好きなポイントだった。

ipodにも取り込んで、これまでも曲は聴いていて、特に「不等号」には何度ふがいない自分を励まされていたか分からない。また上手く言えなかった…本心を抑え取り繕ってしまった…と後悔するたびに、この歌を聴いて、なにくそー!と思っていた。

 

自分にとっての半崎美子さんとの出会いから9年が経ち、ふと立ち寄ったTSUTAYAで新作コーナーを眺めていると、“半崎美子”という文字を見つけた。

「うた弁」というタイトルの、お弁当の写真が特徴的なそのCDを手に取ると、『メジャーデビュー初のミニアルバム』と紹介文が書かれていた。

思いがけない場所での出会いに、懐かしいあの時の空気や様々な記憶が蘇った。

初めて見たライブから、また見に行けたらいいなとホームページを見てはいたけれど、まだ当時は一人で出かけることにも臆病で、近くの会場に来てくれたらいいなと思いながら待っているだけだった。

そうこうしているうちに月日が経ち、あの時のお姉さんがメジャデビューを果たすという知らせを、私はあの場で初めて知った。

 

メジャーデビューを知ってから数日後、テレビを見ていると次週の番組予告が流れた。

それは日テレの「深イイ話」の次週予告で、そこに映っていたのは半崎美子さんだった。一瞬でわかった。変わりなく、ショッピングモールでCDを手渡すその姿とその声に、半崎美子さんだ!と声をあげて父に知らせた。

番組はもちろん、しっかり録画をしながら見た。すごいな…本当にメジャーデビューされたんだな…と思っていると、間髪入れずに、更なる驚きが待っていた。

 

2017年6月18日放送の「関ジャム完全燃SHOW」で、蔦谷好位置さん、いしわたり淳治さん、tofubeatsさんの3人が紹介する上半期ベストソングという企画の中で、いしわたり淳治さんがなんと半崎美子さんの曲「お弁当箱のうた〜あなたへのお手紙〜」をランキング内で紹介されたのだった。

毎週食い入るように見ている「関ジャム」に、半崎美子さんの曲が流れている。

もう、感動という次元ではなかった。驚きすぎて、嬉しすぎて、口に手を当てて固まるしかなかった。

しかも紹介していたのはいしわたり淳治さんで、言葉の紡ぎ方に心を掴まれて自分の尊敬している方が、この曲がいいと紹介をされている。いしわたり淳治さんの言葉で。そしてそれを関ジャニ∞が聞いている。なんて凄いことなんだと、衝撃が収まらなかった。

 

この時の紹介を聞いて初めて、NHKみんなのうたで「お弁当箱のうた」が流れているということを知った。私が勝手に嬉しいなと感動したのは、いしわたり淳治さんが着目した点が「お弁当箱のうた〜あなたへのお手紙〜」に込められたメッセージと曲そのものへの魅力についてであったことだった。

歌を聴いていると涙が溢れることも、ショッピングモールで歌い続けることも、半崎美子さんの魅力であり努力であるけれど、それだけではなく、半崎美子さんの曲そのものと歌声にどれほどの魅力があるかということを純粋にシンプルに伝えてくれた、いしわたり淳治さんはやっぱり事の本質を見抜く方だと、嬉しい気持ちでいっぱいになった。

 

あの時から音楽は好きで関心を持っていたけど、まだ自分なりの自己表現の仕方を見つけられずにいて、あの頃はライブ写真を撮ることを仕事にしたいと思っていた。

今も写真が好きで、人物写真を撮りたいという思いは持っているけれど、こうして文章を書くことを見つけて、今はそうした形を通して音楽やエンターテイメントを創る過程に携わりたいと考えるようになった。

こうして自分の文章で半崎美子さんの歌について思いを綴る日が来るとは想像もしていなかったけど、もっと胸を張れる自分になって、また半崎美子さんの歌を聴きに行けるように。

半崎美子さんが歌い続けてきたこれまで、そしてこれからを見つめていく一人に私もなりたい。

関ジャニ∞が魅せるオールディーズファンク「DO NA I」

 

余裕のあるキザさ、主役は俺だと張り合うミュージカルのようなストーリー性。

ありとあらゆるツボを押さえられて、関ジャニ∞のアルバム「ジャム」のなかでダントツに好みなのが

蔦谷好位置さん作曲、いしわたり淳治さん作詞の

DO NA I」[どない]

 

曲のタイトルを聞いた時は、タイトルは…どない…?これは一体どんな曲になるんだろうと楽しみ半分、ドキドキ半分だった。タイトルからして、関西弁コテコテ曲になるのではと思ったりもした。

 

ラジオで聴いた初解禁。なんだこのコントラストの強さは…!という衝撃。

MVを見たっけ?と思うくらいに、歌っている景色が見えた。

次から次に入れ替わるリードボーカル。メンバーのこんな歌声聴いたことない!という驚きの連続で、こんなにグルーヴ感のある、ダンディーさと色気のある声をそれぞれが持っていたんだと思った。

色が視覚的に見えるようで、この声は横山裕さん、この声は大倉忠義さん、と顔がはっきり思い浮かぶ。バッバッっと主役が入れ替わっていくような動きさえも、音で表現されていた。

聴いていて思い浮かんだイメージは、観客である“自分”を主軸のカメラに位置付けるなら、ダンスフロアで関ジャニ∞にぐるーっと囲まれ、長回しのカメラワークでそれぞれのアピールを見せつけられているような。そんな感覚。

 

関ジャムで見せてくれた制作過程は本当に興味深かった。

「DO NA I」を作る際のイメージが『 ’80s 』そして映画「SING」のエンディング曲になっていて、アリアナ・グランデスティービー・ワンダーがコラボした「Faith」のような曲にできたらと蔦谷好位置さんご本人が考えていたと聞けたことが凄く嬉しかった。

映画「SING」は2度観に行って、大好きな映画だった。映画館に行ってエンドロールを見ていて初めて、音楽監修に蔦谷好位置さんが携わっていたこと、日本語歌詞にいしわたり淳治さんが携わっていたことを知って、関ジャムで見たお二人じゃないか!と感動していたこともあり、今回、関ジャニ∞への楽曲提供があると知った時も、飛び上がるほど嬉しかった。

そうして聴いた初解禁の日、「DO NA I」を聴いて真っ先に思い浮かんだのは、「Faith」みたいだ!という感覚だった。

そういう曲を、関ジャニ∞が歌ったとしたら…と蔦谷好位置さんがイメージしてくれたなんて、こんな夢の組み合わせはない。関ジャニ∞に、このような曲調をプレゼントしてくれるのは、‪関ジャム‬で関ジャニ∞をそばで見てきた蔦谷好位置さんだからこそだと思った。

あの映画館で聴いて、リズムに乗らずにいられなかった洋楽のムードを引き継いで、それを関ジャニ∞が歌っている…!

あの時に感じた感覚が間違っていなかったということを、関ジャムで知ったことも嬉しかった。ラッツアンドスターっぽさもあると感じたから、今回はダンス曲というオーダーだったけれど、スタンドマイクに白手袋の衣装もいいな…なんて思ったりした。

 

ベース音から入って、しばらくリズム隊だけで曲を支える。

そこにメンバーの声が入ってきて、まるで楽器のように主旋律を奏でていくのが格好良くて。声が、何よりの楽器になっていた。

曲を通して刻まれるベースのビート音と、決め所でバッっと音が止まってボーカルが目立つメリハリ。声と音の息の合い方が面白いくらいぴったりだった。気にかかるズレが1つもなくて、耳心地がいいというのはこのことだな…!と思うくらい、感覚が狂いかけたら耳のヒーリングに聴きたくなる曲。

あまりに曲のクオリティがボーカルにかかっているので、自分はカラオケでは決して再現できないなと早々に諦めた。

日本の曲のように起承転結がある構成と違い、決まった基本のリズムと繰り返されるリフは、少し違えば単調で退屈に聴こえそうなものだけど、くるくると表情の変わるメンバーの歌声と、シンプルな中にある癖になるリズム感が、心を掴んで離してくれない。

最後まで連れて行かれて、気がつくと1曲が終わってしまう。あ、もう終わっちゃった…と思い再度リピート。この繰り返し。そのうち自分のiPod再生ランキングで1位になるんじゃないかと思う。

 

詞がつく前の仮歌の時点で既にイメージが見えてグルーヴ感が伝わるのは、蔦谷好位置さんが敢えてデタラメ英語で仮歌を入れているからこそなのだなと実感した。確かに関ジャムで話されていた通り、らららでは、この曲のがなりみたいなものが上手く伝えられないなと思った。

蔦谷好位置さんから関ジャニ∞へ宛てたメールには、ボーカルのキーのことまで細かく説明してあって、“シャウトをしてほしい”というオーダーも書かれていた。

この“シャウト”こそ、「DO NA I」に自分がグッときているポイントで、ここでその意図が関ジャニ∞へと伝えられていたんだと感動した。さらに、いしわたり淳治さん宛てのメールには、“ハイトーンにいく部分の母音はシャウトしやすい音を意識してください”と書かれていて、楽曲制作の際にそこまでこだわり、音をとことんまで考えているということを知り、驚いた。

盛り上がりを作りたいという関ジャニ∞側からのオーダーには、“オケというよりは歌で盛り上げたい”と蔦谷好位置さんは答えていて、その意図が存分に完成した曲に表れていると感じた。

オケの音も重厚感があって魅力だけど、何よりこの曲の魅力は、メンバーそれぞれの声にある。

 

格好いい渋さのある流れからきて、音程がちょっと落ち着くところで、

イイトコなしの Everyday

という歌詞がくるところが、最高にいい。 

格好よく余裕たっぷりな感じなのに、“いいとこなし”という要素が歌詞に入るところに、らしさを感じる。新しい関ジャニ∞の一面も、今まで通りの一面も伝わる安心感がある。

でも「DO NA I」は、これまでの曲で見ていた情けなさが可愛らしい主人公のイメージとは違い、やっぱり一段上を歩く大人の男性の印象。

助け出すぜ かならず

という歌詞を歌う錦戸亮さんは最強に信頼できるスーパーマンで。錦戸さんの少しかすれたスモーキーな声が、「DO NA I」の’80sな洋楽の雰囲気にしっくりきていて相性が完璧だと感じた。

この部分と「惚れさしたるぜ」の部分は語尾が標準語になっていて、標準語と関西弁が行ったり来たり混ざり合っているのに、それが自然に聴こえて、くすぐったさは無いように思う。どちらともの良いとこ取りで、そのさじ加減はいしわたり淳治さん流石の言葉選びと組み立てだと思った。

 

長い月から金の出口のない

その迷宮 Take You! 迷宮 Take You!

と歌うのも、一週間をテーマにした曲は数多くあるけれど、短い言葉で、さらっと言い表した素敵な詞だと感動した。月と金だけをピックアップすることで、間の毎日の途方も無い長さを一層感じて、“出口のない”という一言で、もがく日頃のうっぷんを表現していて、本当にすごいと思った。

歌詞の中で出てくる、“ウィークエンド”という言い回しも好きで、週末と言うと、なんだか落ち着いた感じがするのに、ウィークエンドと言うだけで明るい気分になる不思議があって、この単語が気に入っている。

 

「イイトコなしの Everyday」で『E』を印象付けた後に、「A to ZのEverything」とくる英単語の遊び心も歌詞カードを見るとさらに感じることができて、いしわたり淳治さんの作詞は聴いても見ても楽しい。

村上信五さんのラップパートで「スベればスベったで Tasty」という言い回しがあるのも格好よくて、ニュアンスとしては“それも味でしょ?”とか“味わい深い”という意味合いになるのかなと思うけれど、そんなセンスの良い言い方ありますか…と憧れのため息が出る。

村上さんの持つパブリックイメージも見せつつ、実は

振られりゃヨゴレも演じる全部 Entertain You

なんだから、ぐうの音も出ない。あなたのためにエンターテイメントを、なんて言われたら、惚れ続けるだろうと思う。ある意味、皮肉交じりなところも洒落ていて素敵。

ラップに入る前に、メンバーが思い思いに言葉をかけているのだけど、何度聴いても丸山隆平さんだけ「あばばば」と言語化できないエールの送り方をしているのが最高に面白い。一緒に言いたくなる「(Oh Yeah)」の合いの手も、ライブでどんな盛り上がりを見せるんだろうと今から楽しみで仕方ない。

 

「ほらいい顔してる」の歌詞のところや、安田さんの高音ハーモニーのところで伸ばしている音が次の音に潰されずにしっかりと聴こえるところが凄く良かった。音葉の語尾を、機械的にフェードアウトさせたり、バツッっと切ったりせずに、最後まで声が聴こえて綺麗だった。

大サビの「DO NA I…」のところでは、3回目から高音のハモりに錦戸さんが入って、その一つ後、4回目から安田さんが加わってボーカルに厚みが増す演出が素晴らしいと感じた。

 

大倉さんの低音ボイスが大活躍している曲が好きで、「ナイナイアイラブユー」や「罪と夏」など、低音がなくては成立しない曲が好きだった。なので「DO NA I」での大倉さんの素晴らしい低音は何度聴いてもいいなあと聴き惚れてしまって、さらに横山さんとの声のハーモニーが良く、曲の始まりから堪らない。

主旋律の後ろに被せるコーラスも、“パッシュバッ”という一見古く感じそうなコーラスでも、今の曲として格好よさを保って成立している凄さを感じた。

「DO NA I」では、渋谷すばるさんが高音を張るというより、低めの自然なトーンで歌っているのも新鮮で、そこに「惚れさしたるぜ かならず」の“ず”で、上がる音程が聴こえて、これだ…!とテンションが上がる。

 

そして今回の「DO NA I」で大好きなのは丸山さんのボーカル。

ラジオから聴こえてきた時の衝撃は今でも忘れない。優しい声色の印象を感じることが多かったこれまでを全く一新するような、がなりの効いたシャウトがかなりのギャップで、丸山さんのこんな歌い方聴きたかった!とトキメキが止まらなかった。「イッツマイソウル」での丸山さんパートが好きな方ならこれは堪らないはず。

丸山さんは『ん』の音でがなることのプロだと思っていて、無音になりそうな『ん』の音でさえ情感を乗せて聴かせる魅力がある。

だめだ Pretty girl いいボケが浮かばない

のところでも“だめだ”の前にがなりが入って、“浮かばない”の『ば』と『な』の間に、『ん』が入る。

“月から金の 出口のない”でも、『ん』が入る。丸山さんの、このがなりスイッチがオンになった時の音の取り方が凄く好きで、この音に当たると気持ちが良いという勘が鋭いのだろうと思う。

欲しいところにパンチが決まるドラムみたいに、決め所が完璧な丸山さんのボーカル。とにかく、この曲の丸山さんの歌い方と声に終始心を掴まれた。

 

ダンスも、膝を上げながら後ろに下がる振り付けや、“助け出すぜ”のところで手のひらをスライドさせる動きが、ダサくはならずに昔ながらの良さと今のポップさとが融合していて良かった。

さらに、“やばい Pretty girl”のところで安田さんは前を向いて、ほかのメンバーは背中を向けてグッとグーサインを右上に挙げるのが、堪らないダンディーさ。

そしてラストの、誰が前に来るのか分からない変則的な動きから、いつのまにかバッっと安田さんがセンターに!という振り移動がグッとくる。決まっている安田さんのドヤ顔が最高だった。

 

『格好つける』という意味合いの幅が、ここにきての関ジャニ∞だからこそ、どんどん広くなっているように感じる。

徹底的にキメキメでいく良さも勿論あるけど、私は今の関ジャニ∞が魅せる、すこし肩の力を抜いた遊びの部分を持ちながらの格好よさがとても素敵だと思う。

若さから溢れる『格好いい』とも違った、今の年齢だからこその色気を見せつけた最高にファンクな一曲「DO NA I」が関ジャニ∞のラインナップに増えたことが、とても嬉しい。