カフェの冒険

 

いつも行く落ち着くカフェから少し足を伸ばして、カフェの冒険をした。

普段なら行かない駅の降り口。知らない景色をちょっと歩いて、この辺にあるはずとキョロキョロ見渡しながら歩く。

不安になってきたころに見つかるそのカフェに、映画「めがね」の地図みたいだなと思った。

 

おずおずと引き戸を開けて、「お一人ですか?」に「一人です」と人差し指でジェスチャーもつけて伝える。

ジェスチャー多めは習慣になった。なぜなら、ただでさえ声が必要最小限な私がマスクを着けると、もうなにを言っているか分からないから。

お店に入る直前に、おそらく気遣って席を空けてくれた方と入れ替わる形で、テーブル席に案内していただいた。

 

朝も昼も何も食べられずに出てきていたから、しっかりごはんが食べたい。

定食にも惹かれつつ、大好きなタコライスを注文した。

そしてここに来た理由と言える、カフェラテが美味しいという評判を楽しみに、アイスカフェラテとレアチーズケーキを食後にお願いした。

 

店内をのんびり見渡すと、壁一面に並んだ本棚に視点が集中する。

キャンプ、料理、カメラ、漫画、エッセイ、小川糸さんの本…

興味のある本ばかりで、こんなに手に取ってみたくなる本棚はめずらしいと感じた。

特に漫画の取り揃えが好きなセンスで、あれ読んでみたかったやつだ…あ、あれも気になる…と背表紙を眺めているだけで楽しい。

 

お料理漫画が多かったり、素朴な風合いが魅力の漫画があったりする。

特に心惹かれたのは「プリンセスメゾン

試し読みをネットでしたことがあって、いつか読みたいと思ったままになっていたことを、その場で思い出した。

でも、手に取って読んでいいものかが分からない。

“郷に入っては郷に従う”で、注意書きはよく読んで他のお客さんの居方を見習うものの、本についての説明書きを見つけられなかった。

 

しばらく、ただただ本棚を眺める人と化していた。

お隣にいた常連さんが、なんとなく気にかけてくださっているのがわかった。

そうしているうちにタコライスが運ばれてきた。

お皿いっぱい、レタスにトマト、アボカド、ひき肉。そこに細かく砕かれたトルティーヤチップス。

おーいしかった。タバスコ?の辛みがしっかりありつつ、レタスにほんのりドレッシングもかかっていて、味の足りなさがない。

レタスが細かく切られているから、スプーンに簡単に乗せられて、パクパク食べられるのがありがたい。

 

空腹が満たされて、食後のデザート。

ふるんふるんの真っ白なレアチーズに、下は砕いたビスケット。

レアチーズよりベイクド派だったのに、この日は酸味が欲しくてレアチーズにした。

そして、アイスカフェラテ。

ゆっくり混ぜるのが好きなのは何回飲んでも変わらない。飲んでみると、ミルクしっかり多めだけど、コーヒーに深みがあるのでずしっと感もあって、確かに美味しいアイスカフェラテだった。

今度はホットのカフェラテも飲んでみたい。

 

カフェラテが無くなりかけた後半に、常連さんの動きを見てようやく、本は本棚から取って読んでいいんだ!と自分も読みたくてうずうずしていた漫画を手に取ることにした。

プリンセスメゾン

マンションの部屋を買うと心に決めている主人公。高級物件もなんのそので内見を楽しむ。

それを見ている受付さんや、不動産屋さんにもそれぞれに帰っていく家があって、部屋への思いも暮らしも様々。豪華だから豊かな訳でもなくて、こんな部屋に?と思われるかもしれない場所でも、大切にしている時間があれば大切な場所になる。

1巻を読んだだけでも、間にある物件探しのポイントなども含めて、暮らしの参考になる内容と流れる時間の心地良さが素敵な漫画だと思った。

 

程よく日が差し込む店内で、大きなテーブルを前にちょんと座って、ページをめくる。

時折、大きめのトラックが道路を通ると、壁に日陰を作る。

アイスカフェラテに氷が溶けて、水が張ってしまわないようにと美味しく飲むために気をつけながら、1巻を読み終えた。

 

初めて来るカフェは気をつかう。

個人の経営でこだわりがありそうだとなおのこと。

それでも、ネットで見る口コミではなくて、来てみて居心地が良いと感じるかどうかは自分で決めたかった。

確かに、忙しい時のあるお店なので手間を取らせないようにお客さん側がする配慮や守るマナー。店主さんの個性がありつつ、だからこその楽しさが感じられた。

 

セルフのはずのお水を注ぎに来てもらえたり、カフェラテにガムシロップは?と聞かれて、

「(カフェラテにこだわりのある店主さんを前に甘みを足すとは邪道なのでは…)えっと、無しで大丈夫です」とぎこちなく答えるのも、それはそれで楽しかった。

飲んでみて結果、ガムシロップは無しで正解だった。段々と甘みを足さずに美味しく飲めるようになってきた自分の舌も嬉しかった。

この感じ、大阪の中崎町で毎日カフェ巡りをしていた頃のお邪魔します…というような緊張感に似ていて、思い出す空気があった。

 

今回は一見さん。次に来たらどうかな。

今度は何を食べて、どの本を読もう。「プリンセスメゾン」読み終えられるかな。