ソウルフルとはこのこと。
楽器が奏でるリズムと指揮者の さんが生み出すグルーヴに清水美依紗さんの歌声が重なって、エネルギーが弾けていた。
2022年3月26日に放送された「題名のない音楽会」でのディズニー特集。
清水美依紗さんが歌ったのは、アニメーション「ヘラクレス」の名曲「ゼロ・トゥ・ヒーロー(Zero to Hero)」
それがもう最高で。コンサート会場にいたとしたら全力拍手のスタンディングオベーションになる。
『ヘラクレス』より「ゼロ・トゥ・ヒーロー」
作曲:アランメンケン
作詞:D.ジッペル
日本語詞:佐藤恵子さん
様々な曲調で世界観を色づけして、様々な魅力が溢れるディズニー音楽。
好きな曲は?と聞かれたら、小一時間は話す時間が欲しいけど、好きな曲調は?と聞かれたら「ヘラクレス」と答えるのが分かりやすいと思っている。
ジャンルの呼び名に詳しくなくても、この感じ!このぐわーっとくる感覚!と直感でわかる、心躍るグルーヴ。
パワフルな歌声に、繊細なハーモニーと、表情豊かなメロディーが楽しくて、リズムに乗らずにいられない。
「ヘラクレス」はオープニングから思い切りミュージカル。
ストーリーが歌で一気に進む。
5人の『ミューズ』と呼ばれる彼女たちが、語り手として圧倒的な歌声とコミカルなチャーミングさで物語を広げていく。
客観的な位置にいながら、「恋してるなんて言えない」ではメグの恋心に問いかけて、「ゼロ・トゥ・ヒーロー」ではヘラクレスのBIG FANに。
それを清水美依紗さんが歌う。なんて素敵なコラボレーション。
けれど原曲は5人のパート分けがされていて、矢継ぎ早に歌詞が続く。曲のテンポも途中で変わったりと忙しい。
生演奏のブラスバンドと合わせるのは相当な緊張感なのではと思いながら見つめた。
意気揚々と響くドラムの音に、弾んで光るピアノの音。
管楽器たちの爽快な音色が聴こえる。
しっかりと地盤を支えるベース音に、音楽にノリながらボーカルの息づかいを見てエリック・ミヤシロさんが指揮をする。
Bless my soul
このフレーズでもうグンッと引き込まれる。
舌が回らなくなりそうなほどの英語の並びを、楽しみながらサーフボードのように乗りこなしていく。
がなりのかっこよさが痺れるほどで、かと思えばピュアに高音が響く。
“Zero”に合わせてリズムを取っていたり、指差しの動きでまさにミュージカルを魅せているような表現の豊かさから目が離せない。
着ている衣装も、ミューズ感のあるプリーツの綺麗なパープルブルーのワンピースで、“輝く笑顔に溜め息”の歌詞のところで見せた、脚に手を添えてクラッと酔いしれるジェスチャーがとても素敵だった。
From appearance fees and royalties
と続く歌詞の息つぎの出来なさ。
“出演料と印税でお金持ち”という日本語訳の意味からは、ある種の皮肉っぽさを感じる部分だったりする部分で、それがまたいい。
さらにそこからパワーアップしていく歌声。
アニメーションでは一人一人の台詞になっているところを、一人で歌わないといけない。それを楽しんで見えるのがすごい。この曲が好きで、歌えて嬉しい!が溢れているのが伝わってきた。
“Sweet and undefeated(素敵だわ)”で声色が可愛くなっているところが好き。
“ten for ten”においては、アニメーションがついてようやく、矢が的に当たって10ポイント!とわかる歌詞を、歌いながらメロディーに馴染ませていてすごい。
一息あけて、“And who'd a think?(ねぇ信じる?)”を台詞として置いているところも素敵。
びっくりしてしまうのはここで転調するところ。
エネルギッシュな曲調から、ピアノとドラムの際立った裏打ちのリズムになる。
ヘラクレスの英語発音が好きで、ハッキュリーになるところと、清水美依紗さんの裏声が丁寧に響くところが魅力。
そこからの、“魅力は? もう最高”でカメラ目線がくるのでもう最高。
どんどん早くなっていくブラスバンドの音にノリながら、ついて行きすぎて音が走ってしまわないようにバランスを保って歌うラストスパート。
Bless my soul
Herc was on a roll
からの“Undefeated”の発音の心地良さ。
“And the nicest guy(それに ナイス・ガイ)”でにこっと笑って手をちょこっと振る仕草がチャーミング。
音を掴んで、楽しく乗りこなして、力を込めてリズムを取りながら、伸びやかに声を響かせた先の、
眩しい笑顔に、最高のセッションを見た。
ガッツポーズをしたくなるこの感動。
管楽器の強さと迫力に、しなやかさとソウルフルな清水美依紗さんの歌声が正面から固い握手をしたかのような圧倒的エネルギーだった。