今年の憧れは叶えたと言えるくらいのひと時だった。
元は銀行として建築されたクラシックな空間で、アフタヌーンティーができたらどんなに素敵か。
それもホワイトチョコと言うより、“お抹茶”の苦味も大切にした抹茶スイーツがテーマなら、なおさら魅力的。
予定はないつもりでいた「Café1894」でのアフタヌーンティーに行くことができた。
予約が埋まっていくなかで、行けそうな日の予約を取ることができて、1日1日と待ちわびてやって来た当日。
3度目になれば迷わず辿り着ける。
中庭をすこし眺めてから行こうと立ち寄ったら、昼間の景色も素敵で、薔薇が咲く庭園があった。
赤いレンガの建物と薔薇の相性は抜群で、アーチの美しい大きなドアや窓がとても良かった。
今日のため何を着て行こうか考えて、クラシックをテーマにコーディネートしたワンピースと、レースの靴下と革靴。
小さめのパールとビジューのイヤリングも合わせた。
今回は、前もって予約をしてある。
自信を持って店内に入って、名前を伝えて案内された先には、アフタヌーンティーのためのテーブルセットが。
照明の明るさというよりも、大きな窓から差す日の光が店内を照らしていて、座った瞬間から居心地がよかった。
ウェルカムドリンクを、アルコールかノンアルコールか選ぶことができる。
ノンアルコールを選んだら、華奢なグラスにピーチサイダーが出てきた。
ネクターの甘みと炭酸が美味しい。
三菱第一号美術館スペシャルドリンク「ポエム」
ドリンクが、“お好きなだけお選びいただけます”なのも嬉しかった。
お水は大きなワイングラスで出てくるので、グラスを手に持つたびに緊張感があって、おしとやかモードになる。
テーブルへと最初に運ばれてきたスイーツは、
「抹茶テリーヌ」と「白胡麻のブランマンジェ(抹茶ソースを添えて)」
ここのアフタヌーンティーの特長で、冷たいスイーツプレートの「アシェットデセール」という位置づけらしい。
濃度しっかりの抹茶テリーヌ。
抹茶の風味として苦味もちゃんとあって、ぎゅっと抹茶。
白胡麻のブランマンジェは、ビスケットが一緒に入っていて、胡麻系の味が得意ではなかった私は恐る恐る食べたものの、ふんわり白胡麻の味。
そこに抹茶ソースをかけると、味がさらに変化する。
この抹茶ソースも、甘さではなく、しゃかしゃかと立てる抹茶の味。お椀で飲むようなお抹茶。
甘みやホワイトチョコで逃げる気のない真っ向勝負だ…!と序盤から前のめりになった。
アイスカフェラテと合わせて、スイーツプレートを食べ終える頃。
すっと置かれた3段のティースタンド。
眺めるこの時間が楽しい。
スタンドの色や形にもお店の個性が出ていて楽しい。あまりに自然に持って来てくれるので、運ぶの大変そうなのにいつの間に?と思った。
お食事の3段目から、
「彩り野菜のラタトウイユ」
クラッカーの上にラタトウイユ。一口でトマトの風味。
「ホタテとマンゴーのタルタル」
スプーンの上に盛られたタルタル。思い切ってパクッと頬張ると、レモンのような酸味とホタテの甘み。
マンゴーのことをすっかり忘れたほど、味がマッチしていた。赤い粒のペッパーが後味に効く。
「鴨とアボカドとビーツのミニバーガー」
ミニマムなハンバーガーのてっぺんに、ミニマムな目玉焼きが乗っている。
どうやって食べたら…と迷ったけど、上半分と下半分に分けて、ナイフでさらに半分にカットして食べた。
鴨の厚みがしっかりで、歯応えもあって美味しかった。バンズ部分がサクサクだったので、もう少しパンの柔らかさがあると嬉しいなと思った。
真ん中の2段目は、
スコーン「プレーン」「抹茶とホワイトチョコチップ」
サイズ感にして、存在感はかなりのもの。
密度がぎっしりな生地で、プレーンはバターの風味を感じる。ホワイトチョコチップに気づかなかったけど、抹茶に甘みほんのりのスコーン。
クロテッドクリームをお好みでつけて食べる。
ちょこっと試しにつけて、クリームチーズっぽさがあったのであとは普通に食べた。
「パウンドケーキ」も抹茶。
このサイズのパウンドケーキを3等分にして食べるなんてアフタヌーンティーだからこそ。
ちょっとずつ、ドリンクも味わいながら、少し背伸びしている自分も含めておもしろたのしい。
1段目は、
「2種のわらびもち(ヴェルジョワーズの黒蜜付)」
スポイトで好きなように黒蜜をかけられる。
プレーンなきな粉のわらびもちと、抹茶粉のかかったわらびもち。
これがもっちもちで、美味しかった…
「抹茶レアチーズタルト」
レアチーズだった。レアチーズで、抹茶。
下のクッキー部分と、間にあるクリームは小倉だろうか。
「抹茶ロールケーキ・小倉クリーム」
半分にしようとするとクリームが出てくることを見て学習したので、一口でいただいた。
ドリンクの種類が様々で、次は何にしようかなと眺めるのも楽しかった。
紅茶や緑茶の種類も色々。
抹茶ラテも飲みたかったし、最初に美味しかったポエムも締めに飲みたかったけど、最後は三菱第一号美術館スペシャルドリンクの「blue(ブルー)」を選んだ。
この色だけど、味はオレンジジュースの酸味。
イギリスの“ベイキング”コンテストを番組にした、「ブリティッシュ・ベイクオフ」を見るようになってから、
完成されていて、それが当たり前のように見えていたパンもパイも、焼き菓子もスポンジも。
膨らんで当たり前な訳ではなくて、この綺麗な見た目も美味しい味も、人の手仕事あってのお菓子なんだと思うようになった。
番組では、アフタヌーンティーのプティフール作りがテーマに出ることもあって、
サンドイッチ、スコーン、マカロン、どれも作業は忙しくでも美しく作るために、オーブンの温度や生地を寝かせる時間、発酵の度合いに試行錯誤していた。
コンテストの場合は、作業に制限時間が設けられる。
「On your mark,」
「Get set」
「Bake.」
で始まるベイキングタイムのことを思い出すと、テーブルで目の前に並ぶスイーツが出来上がるまでの過程をイメージできた。
たまにする背伸びは楽しい。気分は映画「プリティ・プリンセス」で所作授業を受けるアン・ハサウェイだった。
上手くなくて、ナイフとフォークでカチャンッと鳴って、あーとなるのも経験。
抹茶のグリーンで統一されながら、華やかさを見せるのは難しそうだと思ったけど、見た目に嬉しく、食べ終えたころにはお腹いっぱい。
美術館の展示の入れ替え時期にアフタヌーンティーがあるらしいと知ってしまったので、またそのうちに…
変わりない毎日を送っていても、こんな時間も味わえるんだと嬉しくなるティータイムだった。