MORISAKI WIN ライブ「Dancing Charter Flight」 - 空を繋ぐフライト

 

飛行機がコンセプトで、機内アナウンスから始まるライブ。

これが好きにならないはずがない。

 

MORISAKI WIN(森崎ウィン)さんのライブに、初めて行ってきた。

好きかも、好きかもと思いながら、今まで保たれていた距離がぐんと近くなってしまったような。ついに直に聴いてしまったという感覚がある。

耳に心地良い英語と、雲を晴れにするかのように突き抜けていく歌声。

 

それがトークになると一転、「ハッハ!!」と快活に笑って、三日月みたいになる目元。落ち着いて話す時の声は、ほっこり穏やか。

歌いながら音にのって、魅せるダンスはグルーヴィー。色気のムードとチャーミングさのギャップは、何者なの…と考え込みたくなる。

 

MORISAKI WIN ライブツアー

Dancing Charter Flight

TYO:人見記念講堂

2022.05.05 木曜日 開演15:00〜【DAY Flight】


機体の音に、機内アナウンスの声は森崎ウィンさん。パイロットとしてご案内。

しゃんとスーツケースを引きながら並んで歩いてくるCAさんに、ここはもう空港。

歌うのは「Fly with me

好きな演出すぎて登場前からノックアウトされた。

女性ダンサーさん4人を従えて、パイロットではなく、スーツ姿に蝶ネクタイ、サスペンダーをジャケットの下に隠した森崎ウィンさんが踊る。

ダンサーさんはジャケットにスカーフ、パンツとヒールにスーツケースと、CAさんの服装。ウィンさんを先頭にしたV字のフライトフォーメーションがかっこいい。

いつの間にかステージ上に並んだスーツケースの裏側が4つ、Wのロゴになっていた。

 

歌声を聴きたい!その一心で来たものの、曲を聴き込んだりできていなかった。

ライブの間は曲名もきっと分からないけれど、何を好きになるか分からないブラインド方式の参加も楽しいかなとライブ空間に飛び込んだ。

どう居たらいいんだろうと探り探りな心持ち。

座りなのかスタンディングなのか、終演時間は何時なのか。何も分からないなかで、ここ!と感じ取れた盛り上がりの瞬間に、わっとスタンディングになったのが楽しかった。

オーディエンスを盛り上げる森崎ウィンさんの空気作りも絶妙で、気張っている感じではなく、その場の空気をキャッチしてさらに大きな気流にしているように見えた。


2曲目の前あたりで、暗転していく中で見えた森崎ウィンさんの横顔。

右手でチャキッと親指と人差し指を立てて、スタッフさんにGOサインを出していたのがかっこよかった。

別のタイミングでお辞儀をする時も、自然と胸に手を当て、もう片方の手は背に回し、少し片足を前に置いて脚が軽くクロスする形で紳士にお辞儀をするのを見て、本物…と息を飲んだ。

 


Blind Mind」重々しさのある歌詞とメロディーのなかで、筒状にストライプで照らされた白の照明。

“照らす”はずの照明に、“囚われて”いるような。そこに立ったままで動かずにいる様子に、胸がぎゅっとなった。

 

d.s.t.m.」の女性ダンサーさんとペアで踊る演出は魅惑的。

両サイドの中段ステージで踊りながら、アイコンタクトをダンサーさんへと何度も何度も送るところがまたハンサムでずるい。

タンゴのように両手を持ったステップからのターンで胸前に抱きとめたり、ちょいちょいダンサーさんのジャケットの腕辺りを引っ張ってみたり。気の引き方までも洋画のハンサムの所作。

 

ライブ中盤、暗転の中で左側からタッタッタッタッと駆けて来て、高く腕を掲げて「パチン」と指パッチンでポーズを取った。

なのにちょい前に当たるスポットライト。

「うそやん」

かっわいいの。決めきれないその感じ、好きだ。

大阪公演では、ちゃんと4番の立ち位置で当たったと説明するウィンさん。スタッフさんの遊び心か、これも含めてのウィンさんの遊び心か。どちらにしても、こういうコミカルさのセンスも好きだと思った。

 

anymore」の時の、焚き火のようにちらちらと揺れる照明も印象に残っている。

そのほかのシーンでも、丸いスポットライトが背中の幕に右左で2つ。赤と白。赤い幕に黒のシルエットが映える。

後ろの幕がベルベットカラーになった瞬間に、一気にステージのイメージが海外になった。

別の曲では、左端だけブルーの照明で、あとは横一列にレッドになっていたのも視覚に衝撃だった。

階段に座って歌う曲で、後ろと天井に映る照明が、オフィス街の窓ガラスのように見えたりもした。

ウィンさんの斜め後ろから当てている照明の先に座っていたこともあって、立ち位置の角度によってシルエットに見えたり照らされたりする変化が楽しかった。

 

今回の会場、人見記念講堂に来るのも初めてで、まず三軒茶屋の駅で降りることに戦々恐々とした。

三茶…車内の会話で当たり前に聞こえてくる三茶…

南口Aの出口から階段を登って、そのまま真っ直ぐ、少し不安になってきたころに右手に現れる大学の門。

勝手が分からなくて、門の前で待つなら右側だということ。

敷地内を歩く時も、左側は公道扱いなようで、しっかり右を歩いて、人見記念講堂の目の前になってから道を渡るのがルールだと覚えた。

しっかり右側を歩こうと心掛けたおかげで、わさっと咲いていた白くて小さな花が、香水のような甘い香りを漂わせていた。

(この花がジャスミンだったと、1日経って知った。)

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ホールに入ると、果てしなく高い天井。

鯨のお腹みたいだ…としばらく眺めた。壁にはカモメみたいな装飾がある。

深海を思うブルーの座席は座り心地が良くて、前のスペースが保たれているので万が一途中で通る必要ができても大丈夫だと安心できた。

音響の意味では、天井が高いからか声が上に抜けて、高音になるほどバリバリ鳴ってしまっている気がした。

ドラム、ベース、ギターの音はよく聴こえて、油布郁さんの鳴らすドラムのキックが、ドンドンと胸に響いてきた。重低音が体に響く、タケミヤユウマさんのベースのスラップもかっこよかった。宮野弦士さんの高らかに鳴るギターが空間いっぱいに広がる。

終盤のアンコールの「Live in the Moment」と、ダブルアンコール「おばあちゃんのうた」が、歌声がダイレクトに耳へ届いてきて聞き取りやすかった。

MCに入った時にすぐに、「ここ音が上にすごいね」「ゆっくり話すから、聞き取りづらかったら手を上げて教えて」と話していたので、ウィンさん自身も気づいていたかもしれない。

もしくは、自分の耳が慣れたのかなとも思う。

 

“Dancing”とツアータイトルにつくだけあって、お客さんもノリノリ。ウィンさんも踊りっぱなし。

客席が両サイド空席にしてあって、ディスタンスも保たれていたので、好きなようにのって手拍子できるのが楽しかった。

片手を上げてバウンスしたり、両手をリズムにのせて揺らしたり、普段ならここまでライブハウス感のあるノリはしないなというところまで、ライブの空気で連れて行ってもらった。

 

ステージ両サイドに腰掛けて歌った「Love in the Stars -星が巡り逢う夜に-」で、

右サイドに歩いて行って、アイコンタクトを取りながらそっと座るのを見て、ビックバンドビートのやつや…と思った。

左サイドに来た時に、腰掛けている状態から、なぜかストンとそのまま直立で降り立ってしまって、しばしそのまま歌っていた。

目の前ってわけではないけど、線を引くと真っ直ぐ目線の先に立っている森崎ウィンさん。贅沢な時間だ…と思いながら目が離せなかった。

よじ登るのではなく、サッと両脚で斜めに飛んでステージに戻る後ろ姿。かっこよかった。

後のMCで、ステージ淵に立ってまじまじと下を見て、「高かった…」「思ったより高かった」「次、箱馬貸してくださいね(カメラさんに)」と笑っていた。

 

My Place, Your Place

“ボクを信じて”の歌詞がある曲をウィンさんが歌うのはずるい。アラジンだものそれは。

そして英詞がもう。

My little princess do you trust me baby?

“do you trust me”は、もう。少し疑いを表情に滲ませながら手を取るワンシーンです。

英詞にとびきりのお砂糖を隠して歌うところにまで惹かれてしまう。

2番の歌詞で、“「パレード」”と出てくるところも、文字通りのパレードでもあり、ウィンさんの歌っている曲「PARADE」でもあるダブルミーニングが粋。

 

 

マイケルジャクソンを彷彿とする動きが、演出に時折あるところもよかった。

重力斜めダンスや、シルエットの観せ方、チャールストンステップ。

好きなんだよな…と思っていたら、演出にダンサーの50(FIFTY)さんが携わっていると後から知って、ひっくり返りそうだった。

Live in the Moment」の振り付けは50(FIFTY)さんだと、ウィンさんがラジオで話していた。

 

森崎ウィンさんが魅せるダンスの身のこなしは、しなやかで着地が静か。スッと止まる動作が美しい。

それでいて衣装が黒スーツ。

さらに黒の光沢あるシンプルな革靴、靴下は白で踊るなんて、好きにならないはずがない。

さっきからこれを書きながら、頭の中を「Can't Help Falling In Love(好きにならずにいられない)」が流れ続けている。

 

昼公演のことを【DAY Flight】夜公演のことを【NIGHT Flight】として扱っていたのも、好き!と思った。

バンドメンバーとのMCで、ギターの宮野弦士さんがネックを棒に見立てて、手をひらひらさせて「鯉のぼり」を体現していたのが面白い。

この日は祝日、こどもの日。わりと多く見かけた小さな子たちと楽しむドンブラザーズのオープニングテーマ「俺こそオンリーワン」と、エンディング「Don't Boo!ドンブラザーズ」のDAY Flightもいいものだった。

 

「ハッハ!!」と笑う度にマイクを自ら遠ざけていて、笑い声が大きい自覚があるんだなぁと思ったり、

マイクが悲鳴を上げそうなほど、歌声のエネルギーはまだまだ有り余っている感じがするなと思ったりした。

 

無邪気なのにムードがすごい。

人懐こさ溢れる笑顔が素敵で、魅惑とも言えるその引力に後ずさりすらしてしまう。

それでも気になっていくのは、ただ無垢なのではなくて、憂いに立ち向かう時に抱える重たい心を知っていて、笑顔でいられる時間を大切に守っていると感じるからかもしれない。

ピーターパン?紳士?アラジン?と翻弄されていく、森崎ウィンさんだけが持つ雰囲気。

ネバーランドでは不可能なはずだった、大人になっても空を飛べるピーターパンになれる人なのかもしれない。

 

ミャンマーでのおばあちゃんとの暮らしが、大切な心の軸になっている森崎ウィンさんにとって、

今そこへ行けずここで出来ることを探すのは、歯痒さも胸の苦しさもあることだと思うと、心がぐっとなる。

それでも、ドラマ、ミュージカル、そしてライブという場所で、今出来る全力をみせる森崎ウィンさんの姿を真っ直ぐ見つめていたいと思った。

 


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晴れ渡る青空も、夢のような夜空も、

どんな場所でも空を越えて。

空を繋ぐフライトでまた連れて行ってくれるなら、チケットを握りしめて、次の旅を楽しみにしたい。