声が届けるもの - 清水翔太さん「花束のかわりにメロディーを」

 

清水翔太さんの歌声を聴くと、車の中でラジオをひたすら聴いていた時間を思い出す。

遠出をする車の中、TOKYO FMで流れるリクエストソング「HOME」

日が暮れて、大きなショッピングモールの駐車場の坂道を降りて、少し渋滞している道路のランプを眺めながら聴いた、加藤ミリヤさんと清水翔太さんのコラボ曲「Love Forever」

ソウルフルな歌声を柔らかな音色にして、優しく歌う「君が好き」が大好きだった。

 

清水翔太さん「花束のかわりにメロディーを

作詞:Shota Simizuさん

作曲:Shota Simizuさん

 

「花束のかわりにメロディーを」を聴いたのは、とある方のインスタライブ弾き語り。

二宮和也さんの「虹」の良さを知ったのも、DISH//の「猫」の哀愁を知ったのもこの時だった。

 

それからすぐに清水翔太さんの曲を購入して、何度も、何度も聴いている。

JO1のオーディション課題曲で歌われているのを見たのは、それからちょっと後のことだった。

想い人への言葉として聴こえていた歌詞が、ステージに立つ彼らの声として響いた時。

ステージから客席にいるあなたへと贈る言葉として聴こえるようになった。

 

清水翔太さんの歌声が生み出すニュアンスあってのこの歌詞。

君を想ってばかりで

どうにかなりそうなんだ

愛情という感情を信用しないわりに、こういう感覚は痛いほどわかる。

届くような話ではない相手のことを思い、考え、本気で心配する。

聴きながら、そんなふうにある意味独りよがりでもある想いを向けられてみたいものだと、ほのかに思ったりする。

 

 

花束のかわりにメロディーを

抱きしめるかわりにこの声を

 

歌い人が贈る最上のプレゼント。

ステージから歌声を届ける存在と、一段降りた客席から聴く存在との間にあるものを、隔たりには変えず、“抱きしめるかわりにこの声を”と歌う言葉の美しさ。

ステージと客席でなくとも、イヤホンを耳につけ流れてくるその声を聴いている間は、届いていると言っていいはず。

 

きっとこれは、立場を反転しても聴くことができる。

聴きながら、そう思ってしまっている自分がいる。

どんなに感謝や思いが溢れようと、抱きしめることはないから、“この声を”と思いたくなる気持ち。

 

花束のかわりにメロディーを

抱きしめるかわりにこの声を

いつも遠くから 君を見ていた

でも今日は僕を見つめて

 

今夜だけは僕を見つめて

 

そんな言葉を前に、目をそらせる人がいるだろうか。

映画「花束のような恋をした」の絹ちゃんが抱えていた花束のように、小さな花びらや大きな花びら、葉の青々しさも、いろんな色が合わさった花束を思い浮かべながら、

そんな穏やかさのメロディーと、切実さが募る歌声に心がきゅっとなる。

 

 

「花束のかわりにメロディーを」と一緒に「HOME」も聴くことが増えた。

リリース当時は、わかりそうでわからない…と思っていたけど、

今更 帰れないよ あの場所は

どんな素敵な思い出も

心にしまっておくべきなのさ

この歌詞だけはずっと、わかる。そう。と思いながら聴いてきた。

車の中、あの頃に聴いていた声は今も、私の心の切なさと温かさをくすぐる。

 

眠れないほど思い悩む時、ありとあらゆる気持ちのドアが閉じていっていると感じる時、私の胸にはまだ花束を抱えられているだろうか。

諦めたつもりでも。それでも残る、人へ抱く思いを消してしまわないように、この歌を聴いている。