2人分の瞳でみる世界。『も』がつなぐ優しさ ー 関ジャニ∞「ひとりにしないよ」

 

ドラマ「コタローは1人暮らし」を毎週見ている。

訳あって1人暮らしのコタロー。

とのさまんが好きで、起きたらいくつも新聞に目を通す。お引っ越しのご挨拶は柔らかい高級ティッシュ。おにぎりを握れるし、ひとりでお風呂だって入れる。

だけど狩野どのに出会ってからは、銭湯に一緒に行くようになって、幼稚園の送り迎えも来てくれるようになった。

お弁当を一緒に作ってくれる美月どのがいて、何かにつけて“コタローきゅん”と駆けつけてくれる田丸どのもいる。家賃が払えるならいいよーと契約書に書き足して住まわせてくれた、大家さんの清水のじーさん・ばーさんもいる。

幼稚園に行けば、おどおどしながらも優しい花輪先生。毎月訪れてくれる、弁護士の小林どの。

隣り合わせになった出会いから、通り過ぎずにそばにいることを選んでくれたみんな。

 

「あの子が大人びていることに、慣れちゃいけない」 

コタローのことを見守り続けてきている、法律事務所の鈴野さんはそう言った。

説明がなくともわかる、助けが必要な存在に、彼の意思を尊重しながら目を離さずに気にかける狩野どのとのやり取りは、微笑ましくも切実に胸に迫る。

 

毎話あっという間に終わってしまうそのエンディングに流れる、関ジャニ∞の「ひとりにしないよ」

おずおずと支えあう2人の背中に、そっと手をそえてくれるような曲。

 

関ジャニ∞ひとりにしないよ

作詞・作曲・編曲:丸谷マナブさん 

関ジャムでもトークゲストにいらしている丸谷マナブさん。

古田支配人が生み出した無茶振りソング「ユニットバスのマーメイド」の作曲をされたあの方でもある。

 

ひとりにはしないよ

ひとりじゃなく 一緒に強くなろうよ

 

「強くなるためぞ」

コタローがひとりで向き合おうとした答えに、狩野どのは「一緒に強くなるぞ」と応えた。

曲を単体で聴いていても温かさは届くけれど、コタローのことを胸に聴くと“ひとりにはしないよ”と語りかけることの意味と、その奥にある悲しみと決意が浸透してくる。

曲のタイトルは「ひとりにしないよ」だけど、歌い始めは“ひとりにはしないよ”と歌う。

音のはまり具合もあるのかなと考えながら、そこは一文字違うんだと思っていた。でも、曲の一番最後に“ひとりにしないよ”とタイトルそのままの言葉で出てくる。

『は』と一字入るだけで、絶対にと言うような確固とした意思が見える。日本語の受け取り方は多様だけど、この曲の端々で一字に込められたニュアンスの繊細さが好きだなと感じる。

 

 

雨の日も 風の日も

立ち止まる事 知らない君だから

寒がってないか ちゃんと寝てるか

無理してないかと いつも見てるよ

 

関ジャニ∞の声で聴こえるそれぞれの問いかけが、まるくて温かい。

そして、“雨の日も”の部分や、2番での丸山隆平さんの“雨が去って”で際立って聴こえるスタッカートのついた跳ねるような歌い方が、曲をのっぺりさせずに、水たまりにポチャンと落ちた雨粒みたいに、真っ直ぐ軽やかに聴こえる。

“雨が去って”は特に、『ん雨が』と音にはしきらない音があったり、その直後に『っは』と息と声を混ぜてビートにするような歌い方をしていて、丸山隆平さんの中での挑戦や遊び心があるように思った。

書いた後にメイキングを見たら、丸谷マナブさんの借り歌に入っていたアクセントを習得したようだった。

 

横山裕さんの歌声で聴こえる、“寒がってないか ちゃんと寝てるか”

器用な優しさで寄り添おうとするのではなくて、口元を尖らせながらそれでも気にかけてくれる狩野どのとリンクするように声が聴こえる。

その後ろで“yeah”と重なるコーラスが、柔らかなメロディーの中でグルーヴ感を生み出していて、リズムの重心がうしろになるようなこのフレーズがいい。

今回の曲で、グルーヴや音をキャッチするダンスの振り付けをしてくださったのは、s**t kingzのNOPPOさん。

手をマイクにして踊るs**t kingzが好きだったから、“yeah”に合わせてハンドマイクのジェスチャーで踊るところに、好き!と思った。8のモチーフも、ダンスに組み込みまれている気がして楽しい。

 

ひとりじゃまだ 観れない景色もある

強くなれる 優しくもなれるんだ 

1番と2番、別々の場所に置かれている言葉だけど、『も』が表す穏やかさはこの曲の魅力だと思っている。

もし、ひとりじゃまだ 観れない景色がある と表現されていたら、印象はかなり変わる。『も』を『が』にしただけで、譲らないものが大きくなったような印象になる。

“ひとりじゃまだ 観れない景色もある”は、ひとりで観られる景色も理解しながら、ひとりじゃまだ観られない景色もある気がするんだというニュアンスを感じて、相手の考えを否定せずとも自分の考えを伝える柔和さがそこにあると思った。

“強くなれる 優しくもなれるんだ”も同様に、強くなれる 優しくなれる では言い切るような形になりそうで、それ以外の余白が無い印象になるけれど、

“優しくもなれる”と言われると、そうでないことがあったっていいし、強くなれるだけでもないんだよと幅を受けとる気持ちになる。

 

やすらぎがほしい時、穏やかな曲がフィットするとも限らなくて、ささくれ立っている気持ちには眩しすぎる時もあるけれど、ひとりになりたいと言いながら見ていてくれる人がいたならと思ったりするのも本当で、

コタローに狩野どのがいるように、関ジャニ∞が日常の中でそう歌ってくれる1曲があることは心強い。

 

ドラマ「コタローは1人暮らし」の最終回は、今週の土曜日。

津村マミさんが描いている原作の漫画は、ビックコミックスペリオールで連載している。ドラマの中ではどんなエンディングになるのか。

急遽オリジナルキャラクターとして登場した、戸塚純貴さんが演じている若手編集者の矢野さんの冷静な挙動が好きな私としては、最終回に矢野さんは登場できるのか。最高な一人二役で清水のじーさん・ばーさんを演じている、イッセー尾形さんの出演シーンはどんなふうになっているのか。

そして、狩野どのとコタローはどんなかたちの一緒を選ぶのか。

2人分の瞳で観る世界。どうか希望のある景色の中で、この歌が聴こえてきてほしい。