青山さんが教えてくれた珈琲

 

コーヒー豆と、ドリッパーが届いた。

この日を心待ちにして、コーヒーに合わせたシナモンロールを用意した。冷凍庫にシナモンロールがある時は気分が最強になる。

早めに届くか遅めに届くかも分からないのに、受け取ったらすぐにコーヒーを淹れられるように支度をして、テーブルを整えて。YouTubeのコーヒー動画をおさらいしたりした。

待ち構えていたのを分かっていました?というくらい早くに届いた。ありがとうございます!と力強くお礼をしたい気分だった。

 

プレゼントを手渡された海外の子供のごとく、段ボールをザッザザッザと開ける。

紙袋から香る、コーヒーの残り香にまでテンションが上がった。

 

コーヒー豆は、猿田彦珈琲と「珈琲いかがでしょう」のコラボで作られた“TAKOブレンド

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ドラマにちなんで8種類の豆がブレンドされている。

紹介文には

『優しい香ばしさと、キャラメリーな甘さ。まろやかなバランスを大切にしたブレンドです。』

と書かれていて、“キャラメリーな”という表現に一度飲んでみたいと惹きつけられた。

本来なら、お店に買いに行くのも楽しみたかったし、お店で飲む味と自分で淹れる味にどんな変化があるのかを知りたかった。通販で買うのは少し寂しいものだなと思っていたけど、豆と共に入っていた一枚のメッセージが丁寧で嬉しかった。

お店で顔を合わせて買えなくても、届ける先に待つ人がいることを想像してくれていることが伝わってくる文だった。

 

封を開けると、思わず覗き込みたくなるほどつやっつやの豆が。

予習のおかげで、深煎りだ…と見分けがついた。

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そして、大事なドリッパーは。

長いこと漠然と探していて、雑貨店、キッチン用具店、カフェ、店が目に入れば気にいるものはないかと眺めていたけど、基本はこのメーカーなんだなと分かってきてもまだ探していた。

陶器なのかガラスなのか。フィルターは紙か金属か。

何度か調べては流してを繰り返して、今は1杯ごとに使い捨てられていろんな味を試せるものが楽しくていいかなと思っていた。

それから珈琲屋さんとの出会いがあって、やっぱりもう少し探してみようかなという気持ちになって、ネットサーフィンの波に乗ってるうちに見つけたのが、ドーナツ型の枠とシンプルなフォルムが美しい陶器のドリッパーだった。

 

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はじめは白の陶器に目が止まって、おっこれいいかもと見ていたけど、オーダーが沢山来ているようで、大きいサイズも小さめサイズも何もかも売り切れになっていた。

公式サイトから買えないのかーと諦めかけていると、販売委託をしているお店がいくつかリンクで見つかって、タイプによってはそこで買えるものもありそうだった。

大きいサイズの抽出方法が特殊で、縦長の構造がおもしろいなと思っていたけど、入荷にはしばらくかかりそう。

小さめサイズの方もありかもなあと見ているうちに、インスタグラムに辿り着いて、あるコーヒー店とのコラボでオリジナルカラーが作られたことを知った。

 

これだ!と思ったら早かった。迷いは無くこれ一択。

白のスタイリッシュな雰囲気にも惹かれていたけど、カフェラテ色だと感じたブラウンの柔らかい雰囲気に、これがいい。と決まった。

白を使い込んでいくうちに色に味が出ていくのもいい。ただ、コーヒーの色がついていくのを気にかけるようなら、もとからコーヒー色に染まったものを使うのが楽しいかもしれないと思った。

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これだけ良かったら、きっと売り切れなのだろうと諦め半分でサイトを見ると、まだ買うことができた。えっ買えるの?いいの!?とドキドキしながら注文ボタンを押して、注文確定のメールが届いた時には小躍りしそうになった。

お店の名前を書きたいのだけど、忙しそうなお店で許可の確認もできていないのでロゴから探ってほしい。

 

ドリッパーのみかと思っていたら、

・マウンテンドリッパー

・コーヒーサーバーピッチー

・コーヒーサーバーピッチーのフタ

・ペーパーフィルター

セットで販売されていた。何もかも分からぬところに、なんと優しい!

マグカップに直に淹れようかと思っていたから、サーバーまで持てるのは嬉しかった。しかもフタが、これまたカフェラテ色。お揃い。良い。

サイズも大きすぎず、コロンとコンパクトなのが良い。

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サーバーには「Pitchii(ピッチー)」と名前がついていて、小鳥のさえずりから名付けられたらしい。

職人さんが一つずつ手作りされていると知って、手にしたガラスのサーバーがますます大切なものになった。

ドリッパーの名前は「Mountain.」

山と鳥。イラストが可愛く、説明書きの紙までセンスよく丁寧で、ここのものにして良かったとしみじみ思った。

 

 

ドリッパーと豆が揃い、長らく眠っていたコーヒーミルと、細い注ぎ口のケトルの出番がやってきた。ポイントで交換したケトル、大活躍ですありがとう。

よし、コーヒーを淹れよう。すかさずカフェBGMのジャズを流して、気分から入る姿勢。

豆のツヤに感動しながら、恐る恐るミルに入れてみる。カラカラッと音がして、ハンドルを回すとガリガリ吸い込まれていく。

これでいいの…?と思いながら、落ちきるまで回す。フィルターはそのままフィットするのかと思っていたから、形によって折り紙のように1箇所か2箇所折ると知って、細やかさに驚いた。

さらに、一旦フィルターをドリッパーに置いて、お湯をかける。これは珈琲屋さんに教わった。そのまま注がないんだ!へええ!とまた驚いて、うちでの淹れ方はそれを見習うことにした。

 

ちゃんと挽けているんだろうか…とミルの引き出しを恐々開けたら、しっかり粉になっていた。

移して、トントン均等にして。何杯分も淹れる時には、コルクで注ぐ目安をつくる方法もメーカーのホームページに載っていたけど、1〜2杯分なので「かもめ食堂」に倣ってコピ・ルアックをしてみた。多分いまだけ。

お湯を注ぐ瞬間が一番緊張した。一度注いで、すこし蒸らすのは以前からしていたから、その先からが未知だった。コポコポコポと雫が落ちていって、合ってるか分からないけど出来てる!と嬉しかった。

数字で記された目盛りではなくて、サーバーのくびれに沿って目安がわかるのもいい。

 

最後の一滴まで落ちきらないように、気持ち早めにドリッパーを外して、カップに注いだ。

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自分のために淹れたコーヒー。自分で注いだのに、注いでもらった感じがした。

黒い苦い飲みものとしか思えなかったものが、透き通る茶色の層が重なって奥深い焦茶をつくっているのだと、のぞき込みながら思った。

まずはそのまま飲もうと口に含む。苦さ…は確かにあるけど、飲めるぞ?酸味がそんなに主張せずにいてくれるおかげで、「珈琲いかがでしょう」のぺいのようにいつも一口でうへえとなってお砂糖とミルクに手が伸びる私でも、飲めそう…あれ、飲める。おいしい。

キャラメリーなのかは気づけないけど、苦味が後を引かずにスッと通り過ぎてくれるから、ブラックコーヒーのまま飲んでおいしい。ミルクを入れるのがもったいない気すらしてしまう。

豆の特徴なのか、淹れ方が自分に合っていたのか、ドリッパーのおかげか。胃にくることもなく、すっきり飲める。

甘みのあるおやつと一緒にしたらぴったりなコーヒーを淹れられた。

 

一緒に食べるおやつは、カルディのシナモンロール

冷凍でしょ…?と疑って買ったら、失われたスタバのシナモンロールに近いと気づいて、カロリー度返しで何度も買ってしまう。

これとカフェラテを用意して、スウェーデンでの生活を映してくれている動画を見る時間が、今一番の落ち着く時で、今回はついに本格的なコーヒーと合わせられる。

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少し温めて、溶けた砂糖をちょちょっと付けながら食べるシナモンロールの甘みと、すっきり飲めるコーヒーの相性は、ばっちりだった。

 

 

今までは、豆が売られているのを見ても道具が無いし…と通り過ぎていた。

でもこれからは、自分にも関係ある事として注目できる。しばらくはTAKOブレンドを堪能して、それからまたいろんな味を冒険してみたい。

プロやお店には当たり前に敵わないけど、あなたの淹れるコーヒーが飲みたいと言ってもらえる時がきたらうれしい。

関心はあるけどいつかね、と遠巻きに眺めていた私の背中をもうひと押したのは、たこの絵が描かれたトラックで現れるあの珈琲店で。

甘くないと飲めないし、詳しい人は沢山いるから…と気後れしていたのを、誰がどんな時にどんな形で飲んでもいいのだと思わせてくれたのは、「珈琲、いかがでしょう」と語りかける青山さんの声だった。