持ち合わせる個性と、更なるポテンシャル「僕らAぇ! groupがbrakeしそうですねん?!」

 

Aぇ! groupのポテンシャルと、プロデューサー横山裕さんとのぶつかり稽古を見ているようだった。

 

今年、春の松竹座公演として予定されていた、Aぇ! group、Lil かんさい、関西ジャニーズJr.出演の舞台

僕らAぇ! groupがbrakeしそうですねん?!

構成・演出は関ジャニ∞横山裕さん。

タイトルは意図的に?ブレイクと書こうとして、ブレーキになった?もし、始まりはそうだとしても、どこからあえて活かしていこう!と決めたのか…

赤地に白の文字が特徴的なポスターデザインがすごく良くて、メンバーの表情もコミカルにいきいきとしていて、ポスターを見ただけで興味が湧くデザインだった。

 

春の時点では公演の中止が決まったものの、今回、配信という形で開催が決まった。

2020年8月11日(火曜日)18:00公演

12日(水曜日)14:00公演 18:00公演

計3公演を、生配信。

 

8月12日の14:00公演を見た。

概要をちゃんと知らないまま、ライブを見るぞ!という気持ちでいたから、なるほどこういう形か…!と段々と理解していく流れだった。

オープニング映像で、ひとりひとりの顔と名前を認識して、グループには所属していない子たちも役がついていることがわかる。

舞台に広がるのは、テレビ局の楽屋が再現されたセット。

 

Aぇ! groupのメンバー、末澤誠也さん、草間リチャード敬太さん、正門良規さん、島健さん、福本大晴さん、佐野晶哉さんが会話を始める。

楽屋という設定のお芝居。舞台裏を舞台表に持ってくる、思いきった演出に引き込まれた。

まだ見せない面として、ギャップの切り札にとって置こうと考えることもできそうなシチュエーションを、デビュー前の今、見せる形に仕上げたことの意味深さ。

演出として、だんだん調子に乗りはじめていて、スタッフさんへの態度がちょっと大きくなっているような空気を脚本に組み込んでくるのも、テーマとしては鋭いと思った。

この先、置かれる環境が変わっていって突き当たるかもしれない事象を、前もって客観的に見つめるきっかけになるのかもしれないと、横山裕さんの親心を感じた。

そんな演出の妙も感じつつ、末澤誠也さんのウインクに打ち抜かれたり、黒髪の似合い具合に釘付けになったり。小島健さんの私服風衣装がアルファベットの文字入り白シャツにベージュのニットロングカーディガンで、染めた明るめの茶髪とぴったりで見惚れたりしていた。

佐野晶哉さんがマジックを披露するわと言った流れで再生されたBGMが、いわゆるマジックのテーマ曲…に近いちょっと違うメロディーラインで、楽曲使用権の避け方が独特!と思った。

 

“ミヤザキさん”として聞こえた、突然の横山裕さんの声に、!!となりながら話を聞いていると、“いろんな番組のパイロット版を撮ろうと思っている”ことがAぇ! groupに告げられる。

パイロット版というのがまた、テレビの仕事をしてきている横山さんの視点だなと感じる。

新番組を立ち上げる際に、試しに企画される(仮)の段階の番組で、本命のタレントさんをはじめからは揃えずに仮でキャスティングすることもあれば、仮が好評だった場合はそのままレギュラーになることもある。

パイロット版で自分が出演していた位置に、別の人がいるのを見ることもよくあると、アメトーークの“パイロット芸人”では話されていた。

シビアでありながら、見てもらう機会が与えられている時点で、チャンスだとも考えられる。

 

まず最初の現場は「健康番組

ディレクター役の奥村颯太さん。出てきた瞬間にいい声のナレーションの子だ!と嬉しくなった。

アシスタントディレクター役は、岡佑吏さん。AD呼びではなく、アシスタントディレクターとちゃんと呼ぶところが素敵だと思う。

「スタジオになにわ男子の大橋おるやん」とモニターを指差して言う草間リチャード敬太さん。急な大橋くん。

健康番組では、令和のラジオ体操をぶっつけでどうぞ!という指令。番組からの無茶振りにどうにかこうにか答えていくAぇ! group。「平成のラジオ体操もあらへんのに」のツッコミに、確かに!と謎の気付きを得た。

 

美術・大道具スタッフさんの役は、山中一輝さん。角紳太郎さん。

デコ広いねんギャグをしてた子が角紳太郎さんで、山中一輝さんも自己紹介の時にいた子だ!と認識できているから、親しみが湧いて楽しい。

 

 

続いては「刑事ドラマ

コンプライアンスを守って、その都度判断しながら演じてください!と指示。

円形に回転していくステージ。舞台を観ている実感が湧く場面転換にワクワクした。

ここでLil かんさいが登場。嶋﨑斗亜さん、西村拓哉さん、大西風雅さん、岡﨑彪太郎さん、當間琉巧さん。

Lil かんさいは揃って犯人役を担当。そこへ刑事役でスーツに着替えたAぇ! group。着替えの早さに驚く。赤いネクタイをした末澤誠也さんがかっこよく決まりすぎていて、目が離せない。

シートベルト着用に、拳銃の所持…様々な面で立ちはだかるコンプライアンス。「絶対零度」や「ON」で刑事ドラマに出演してきた横山裕さんならではのあるあるも含まれているのかなと思うと、変わってゆく価値観と現場で感じてきたじれったさもあるのだろうなあと思った。

そしてこの場面からどんどん明らかになっていく斗亜くんの可愛がられキャラ。

「水に濡れたら風邪ひいてまう」と言う斗亜くん。「そうやんなぁ」と聞こえた声は小島健さんだろうと直感した。小島健さんがLil かんさいの“斗亜くん”を溺愛していることは風の便りに聞いていたけれど、その知識がまさかここで役立つとは思わなかった。

 

ドラマシーンになると、カチンコのカカンッという音と共に、画面のアスペクト比がスクリーンモードになる。

横長で、上下の黒い画面部分が広くなる仕様。

その切り替えるタイミングがほんっとに完璧で、台詞と動きに息を合わせた、音響さんと技術スタッフさんのお仕事の凄さに感動した。

そして、この映像効果は配信でみんなが画面越しに見ている環境だから出来る演出だと気づいて、さらに感動した。客席から見る形では、また違ったものになる。

 

ドラマ撮影スタートの瞬間から一気にテンポ感が増し、松竹座を大きく使った演出に心躍った。

ドローンで空撮して見下ろす花道。犯人役の草間リチャード敬太さんを勢いよく追いかける刑事役の末澤誠也さん、佐野晶哉さん…!と思いきや動きが小さい!乗ってるの三輪車!

シーン切り替わって、崖に犯人たちを追い詰めた正門良規さん、福本大晴さん、小島健さん。「崖が高すぎて怖い…」と怯える斗亜くん。心配する仲間二人。すぐにカットが入り、アシスタントディレクターさんが崖を下げさせる。

下げに下げて、ちょっっっとした段差になった“崖”を前に、撮影再開。

さらにシーンが変わり、ステージ下から机と椅子ごと迫り上がってくる末澤誠也さんと草間リチャード敬太さん。

この画がかっっこよくて……痺れた。

スポットライトの当たる取調室で渋い雰囲気が倍増。あれはもうドラマだった。

 

 

お次は「キッチンスタジオ

食リポと、スポンサーさんの商品を自然な感じでプロモーションしてくださいとの指示。

ここで伊藤兄弟が登場!お兄さんの伊藤翔真さん。弟さんの伊藤篤志さん。

丸山隆平さんがMCの「サタデープラス」に出演していた個性を最大に活かす演出になっていて、横山裕さんは本当に幅広く把握しているんだな…と感じた。

本番前にダミーリハーサルが始まり、Lil かんさいがAぇ! groupメンバーの名前のプレートを掛けて、各メンバーに成りきってモノマネ。

ご飯を食べての食リポで、なぜかすすってしまう大西風雅さん。「白飯すすってるで」とつっこまれる。末澤誠也さんの担当をした西村拓哉さんは極端なハイトーンで口癖の「やってんな!」を真似。「お前がやってんな!」とつっこむ末澤誠也さん。末澤さんのやってんなが好きだと新たな自分のツボに気づいた。

末澤誠也さんのコントとお芝居のアンテナと言うのか、ふっと肩の力を抜いた空気の作り方がすごいと思ったのはこの場面で、タクシーチケットを渡したくないと握ったまま訴えかける表情をした時だった。

会話の中で「スケリグ」という舞台に出演していた話が出ていたけど、今回の公演を見て、「スケリグ」もアドリブ劇の「青木さん家の奥さん」も観たかったと思った。

 

正門良規さんと草間リチャード敬太さんのコンビでは、カレーライスと食器用洗剤をプロモーション。

“キラーン”の効果音の時の正門良規さんの表情づくりとポーズがタイミングばっちりで、完成度が高い!

 

 

ひと通りの撮影が終わり、撮影スタジオから楽屋へと帰るセット転換。

半分半分にセットが区切られていて、扉を開ければ次の部屋は楽屋という仕組み。

そのナチュラルな移動も演出としてすごく好きで、当たり前のように移動しているけれど、シーンが変わるごとに転換作業を素早くしている裏方スタッフさんのプロの仕事を感じて、舞台だなあ…!とテンションが上がった。

舞台の両サイドから上まで沿うように、テレビ画面のフレームみたいな枠が付いているのも、テレビを見ている感覚になれる演出なんだなと思った。

 

楽屋へと戻ったAぇ! groupメンバーは、反省点を振り返って、心にある葛藤を見つめ直す。

「チャンス棒に振ってもうたな…」

「結局俺ら、音楽アピールできてないよな…」

「一番やりたいことだけ、見てもらえてないままですね…」

歌がやりたい。音楽がしたい。

「豪華なセットなんていりません。とりあえず歌わせてください!」の言葉が切実に響いた。

“ミヤザキさん”に思いの丈を伝えたことで、その機会が作られることになる。

 

降りた幕の前には、ディレクターの奥村颯太さんと、アシスタントディレクターの岡佑吏さんが再登場。

「本日は、Aぇ! groupチャンネルをご覧いただき、ありがとうございます。」

「まもなく、Aぇ! groupのバンド演奏が始まります!」と案内。

ここまでは、お芝居と番組の枠の中でのお芝居が重なる“劇中劇”としての作用。そしてここから、お芝居とリアルが繋がった空間が発生して、“ライブ”だ!と観客としてのドキドキが高まっていく。

指し示された手の先には、ステージに用意されたバンドセットと楽器を手にしたメンバーたち。

バンドがうしろからライトアップされて、シルエットになっている姿はどうしてこんなにかっこいいんだろう。

マーシャルのアンプを背に立つ、草間リチャード敬太さんのサックス演奏がさらにかっこよかった。

 

新曲ですと歌い始めたのは「Brake Through

本当に初披露の、新曲。

Break(ブレイク)ではなく、ここも“Brake”(ブレーキ)表記なままにしてあるところがいい。“Through”(スルー)は【貫いて、通り過ぎて、突き破って】という意味。

造語で意味を持たせつつ、本来言いたかったことに置き換えれば“ブレイクする”という語感の音遊びにも聞こえる楽しさがある。

確証はないけど、歌詞の言葉選びや、音の詰め感に安田章大さんの空気がそこはかとなくある気がした。

この曲では正門良規さんの歌い方がストレートに響かせる感じで、その感じもいいなあと心惹かれた。

 

演奏が終わり、「ありがとうございました」「ありがとうございました!」と揃った声。そしてお辞儀。

 

ディレクターさんたちに連れられてステージを去った後は、映像へと切り替わり、

後日、松竹座の楽屋でAぇ! groupメンバーが披露した曲が歌番組で放送されるのを見ている。

期待に胸膨らませて見ていたものの、演奏している自分たちより目立つ、スポンサーさんの商品たち。

そしてエンドロール。本編はここまで。

 

これで終わるかな…?と思って見ていると、衣装を着替えたAぇ! groupが、再びリアルのステージに。

紫衣装を着ているAぇ! group、ミステリアスさと艶をまとっていてかっこいい。

「アフタートークという形でね」とトークの時間が設けられて、フリーでメンバーの会話が聞ける時間もあったのが良かった。

安田章大さんからボイスメッセージがメンバー宛に届いたこと、楽屋が一人部屋の振り分けになっていて、年上組にはトイレ付きの部屋だったけど年下組にはトイレが付いていない話、末澤誠也さんの隣の部屋が福本大晴さんで爆音で音楽を聴いている話。

 

春に公演するはずだった、「僕らAぇ! groupがbrakeしそうですねん?!」

3公演できたねと話しつつも、もっとしたかったなという言葉に、本来ならもっと出来たはずの舞台、それはそうだよねと切なくなった。

約2ヶ月あった稽古。1時間20分ほどの公演時間で、ひっきりなしに言葉が飛び交う脚本。これだけの細かさで、とちらないのがすごい。みんな緊張もしているはずだけど、それぞれが手にした役割を懸命に全うしている姿が輝いていて、相当練習してきたのだろうな…と今日までの時間の積み重ねに全力のカーテンコールを贈りたかった。

特に司会進行の役割も担っていた奥村颯太さん、プレッシャーを越えた大活躍に、大きな花束を渡したい。

 

 

最後にAぇ! groupとLil かんさいで歌った「Dream Catcher」

夢を掴むという意味はもちろん、悪夢を捕まえてくれるようにと願うの意味も含まれるのかなと想像すると、この曲への関心が深まっていく。

ラストにグッと引き込んで掴んだその手のシルエットが美しかった。

 

今回は、舞台としての印象が強かった構成で、

関西ジャニーズのライブスケジュールが発表された際に、「僕らAぇ! groupがbrakeしそうですねん?!」と、Aぇ! groupの松竹座ライブがそれぞれあるんだなーと少し不思議に思っていたけれど、今回の公演で歌った2曲を見たら、ますますライブも見たくなって、なるほどこれはどっちも必要だとわかった。

Firebird」が聴きたい。歌うところもバンドも、もっと見たい。

 

ポテンシャルは、可能性として持っている能力。潜在的な力。

ぶつかり稽古は、体の大きな横綱などが胸を貸して、稽古を受ける側が思いきり当たりにいって土俵のふちまで全力で押し込んで行く稽古。

自分でこれだ!と思うものでも、自分ではこれが?と思うものでも、気づいたり気づかせてもらったりして見出した個性が、貫いて磨かれて、だれかに見つかるきっかけを掴む。

横山裕さんが見つめている、彼らのポテンシャルへのワクワクが止めどなく伝わってくる舞台。全力のぶつかり稽古だった。