これは運命的な恋煩い
君と何万回ロマンティック
イントロのシャララランと鳴る音に合わせて、順に流れるようにポーズを取る動き。腕をそっと胸に添える振り付けで、一気にロイヤル感溢れる世界をつくる素晴らしさ。
歌のはじまりで、サビでもあるこの歌詞のインパクトの強さは有無を言わせない。
キザにも取られそうなこの言葉を、圧倒的説得力でもって成立させられることのすごさに、何度聴いても感動する。
King & Prince「koi-wazurai」
作詞・作曲:栗原暁さん(Jazzin'park)・前田佑さん
キラキラと言えば思い出す、なにわ男子の「ダイヤモンドスマイル」を作詞されたのも栗原暁さん(Jazzin'park)
作曲も、栗原暁さん(Jazzin'park)・前田佑さん。同じ方で、「koi-wazurai」を聴いて引きつけられたことに納得だった。
栗原暁さんと前田佑さんの表現する曲のキラキラは、粒子の細かいラメのよう。絵を描く時、白い紙に明かりを描くのが難しいように、音と歌詞で光を表現するのはすごいことだと思う。
Nissyの「ハプニング」「恋す肌」の共編曲では、久保田真悟さんと栗原暁さんが担当していたと知って驚いた。お二方とも好きな曲でよく見るお名前。
ほかにも、Kis-My-Ft2の曲で好きな「SNOW DOMEの約束」作曲・編曲。「ダイスキデス」作詞・作曲・編曲をされていた。
「koi-wazurai」で最も好きなのが、歌い出しのあとにつづくフレーズ
素直になれたら This love will last forever
“素直になれたら”のメロディーが意外な転調を見せる瞬間のドキッと感。
美しく駆け降りて行く音階が印象的で、聴こえるたびに高い天井で光るシャンデリアと螺旋階段を思い浮かべる。
このメロディーが出てくるのは後にも先にもここだけで、その後のサビにも出てこない。絶好調にキラキラな歌い出しから、もう一押しくるかと思いきやスッと引く駆け引きすら感じる。
「koi-wazurai」の最大級なキラーメロディーはここにあると個人的には考えていて、歌番組で必ず歌われる箇所にとびきりの黄金比を持ってきていると思う。
歌詞としても曲の鍵になるフレーズで、英文も含めてニュアンスを考えるとしたら、“素直になれたら This love will last forever”(この恋はきっといつまでも続く)と訳すかもしれない。
誰にでも開かれたハッピーエンドではなくて、素直になれたらきっと、と期待を持つ視点が、二人の恋を見守る第三者からの視点を思わせて、フェアリーテイルのはじまりを予感させる。
数学をモチーフにした歌詞が登場するのも魅力的で、“方程式”や“ベクトル”といった言葉に心躍る。
理論としては分からなくて解けそうにない数式も、デザインとして見ると好きな自分にとっては、MVの神宮寺勇太さんの後ろに書かれた数式も見ていて楽しかった。
“今日もプライドってベクトルが ミスリードする二人の未来”という歌詞の、“ミスリード”という言葉選びも好きで、すれ違いなどの言葉ではなく小説的でもあるこの表現にしているところがいい。
このフレーズで歌う神宮寺勇太さんの歌い方が、CD忠実バージョンとすこしハイトーンになるアレンジバージョンがあるところも、歌番組で見るたび注目する。
特別でいたいくせに 普通じゃないと不安で
投げた視線そらすなんて 君らしくない
ファンタジーさを見せるなかに日常を溶けこませる世界観はKing & Princeの魅力だと思っていて、
デビュー曲の「シンデレラガール」も、おとぎ話をモチーフにしているようで、“門限”や“人波に消える”という描写で現実の駅の風景などが思い浮かぶ。
特別でいたいくせに 普通じゃないと不安で
という歌詞にも、ワクワクする恋物語のなかにドキッとさせる日常の視点があって、聴くたびに確かにそうだと思ったりする。
You & I
難攻不落 近づくほどに
“You & I”で追いかけるようにボーカルが重なるところ。さらに、“難攻不落”と入っていく間合いと、“難攻不落”の語感。どちらもメロディーの中でアクセントになっていて、耳心地がいい。
近づいているのに、太刀打ちできない様子が短い言葉で伝わる。
“I love you”も“Do you love me?”も口にすれば同じ
一瞬も永遠も 恋すれば同じ
君のことが好きと言っても、僕のことが好き?と聞いても、言ってしまった時点で意味は同じだと、限られた歌詞の語感の中でこんなに完結に言い表せるのかと感動した歌詞だった。
岸優太さんの歌声で聴こえることで魅力を増している。ささやくような、息が多く喉から通るニュアンスで歌うフレーズは確信犯に近い。
King & Princeが王子をイメージした衣装を着ている姿がとても好きで、あの品格に着られることなく着こなす存在感に、いつも見入ってしまう。
「koi-wazurai」を歌う時の衣装も、ジャケットスタイルなことが多く素敵だった。
腕をそっと胸に添えるだけで、脚をすこしクロスさせるように曲げて靴のつま先を立てるだけで、ロイヤルな空気が漂う。
King & Princeの作りだす気品を魅力的に引き出しながら、片想いではなく“恋煩い”という、ほんのり古風な印象もある言葉を活かして輝かせた「koi-wazurai」
聴くたびに、あの印象的なメロディーに惚れ直す。