せっけんの香り、そんな爽やかさが吹き抜けていく。
去年ライブで聴きながら、うわあ好き!と思ったのがこの曲だった。
1st sight なんとなく目が離せなくて
わざとらしく 聞いたんだ
Do you know how to get there?わかるかな?
ふいに恋に落ちていく男性視点の歌詞、ベタ惚れで、だけどあまのじゃくで素直さを見せられない不器用さ。
こんなに可愛らしい歌があるのかと、がっしり、がっしりハートを掴まれた。
このワンフレーズに、歌の中の主人公となる彼の性格が溢れている。
“1st sight”のsightは、視力、見解、光景といった解釈をできる単語になっていて、この歌の歌詞が第1段階、彼という1人の視点で語られることを表現しているように感じられる。
そして“なんとなく目が離せなくて”という言葉、これ以上ない惚れ言葉。ロマンチックがキザにならないNissyの自然なトーンがあるからできることだと思った。
Do you know how to get there?
という英文には、「道順はご存知ですか?」と訳すことができて、この歌詞の空気感に合わせるとしたら「道順は知ってる?」になると思っている。
文字通りの“道順”というよりは、恋の進め方という比喩表現もある気がしている。
そこに“わざとらしく 聞いたんだ”、“わかるかな?”と繋ぐ言葉があるところに、もうすでにあまのじゃくさが顔を出していて、ちょっといじわるに微笑む様子が思い浮かぶ。
卑怯なほど無邪気な笑顔
ずるいほど大人びた仕草
対極にある気もする、“無邪気な笑顔”と“大人びた仕草”
その描写に、彼が恋をした彼女の魅力をグッと感じて、そんなギャップがあったら好きになるよなと共感してしまう。
嬉しい!をためらわず見せる無邪気な笑顔。そうかと思えば、ふっと目を伏せて下がり気味のまつげに憂いが添う。
悔しくなるけど
堕ちてゆくみたいだ
“卑怯なほど”、“ずるいほど”という言葉や、“悔しくなる”という表現をするところに、抵抗したい心境が見える。一見ネガティブにも思える言葉でも、それなのに、という意味で受けとめると、彼の気持ちが彼女へと引き寄せられていく力の強さを切実に感じる。
そして、サビの中にある
天邪鬼な僕の言葉を どうか全部信じないでよ
という歌詞、ここが好きで仕方ない。
自分の天邪鬼(あまのじゃく)を自覚していて、そんな自分では誤解させてしまうこともわかっていて。だから、“どうか全部信じないでよ”と先にフォローしている健気さ。
全てを信じないで、ではなくて、きっと全部まるごと(は)信じないでという願い。
言われてみたい胸キュンというよりも、シンパシーに近い感覚でこの歌詞を好きになった。本心を隠すため、正反対の言葉が口をついて出る。そんな僕だから、どうか話半分で、素直になれない気持ちを覚えておいてと語りかけるようなこのワンフレーズには、焦ったさも愛くるしさもぎゅっと集まっている。
落ちサビ前の“大人びた仕草”の部分では、一瞬ぴたっと周りの音が静まり、“た”の音が声のみになって際立つ。
そこがすごく好きで、聴くたびにくうーっ!となる。たった一箇所ここだけアレンジを変えてくるところがずるい。Nissyの声がパーンと真っ直ぐ届いて、その後にコーラスが加わる絶妙な間合い。それは秒単位で計算されたものだと思う。
歌の中のそんな“僕”が、“素直になんて言えないよ”を何度も繰り返して、
最後の最後に、“素直に言ってもいいかな?”の前置きのあと
You’re the girl l need
Girl I Need
と呟く。
“You’re the girl l need”は、直訳すると「あなたは、私が必要とする女の子です」になる。
意訳するとしたら、「君は僕にとって必要な女の子」などになるのかなと思う。
でも本当は、文法としての解釈よりも感覚的に、英語だからこそのニュアンスがそこにあるはずで、“need”で「欲しい」とも訳せる言葉が入っていることの切実さ、“the girl”でtheが頭についていることでスペシャルなオンリーワンの女の子を見つけた意味合いが感じられる楽しさを噛み締めていたい。
語りかけるように、首を少しかしげて顔をのぞき込むみたいな声色で、
素直じゃない僕が素直になるため、あらがうのをやめ、お手上げだと恋に沈んでいく想いが美しい歌だった。