羅針盤のように導くのは − V6「スピリット」

 

自分の気持ちに響く。そう思って繰り返し聴いていた曲が、実際はだれかに贈りたい言葉だったと気づくことがある。

V6の曲は、なにを大事にしていたのか分からなくなった時、家の柱のように確固とした安定感で背中を押してくれる。アルバムの曲を聴くことが多くて、シングルのカップリングなど知らずにいる曲は多いけど、聴くたび好きを実感するのは「愛なんだ」や「HONEY BEAT」

 

そんな中で、今すごく好きなのは「スピリット」

作詞・作曲は清水昭男さん、編曲はMasaya Suzukiさん

こんなにも強く、ひた向きに、確かな軸で届けられる言葉があるのかと思った。

みんな、と投げかけられる言葉に、自分は含まれていないとためらいなく思うくせがある。それでもこの曲は一切のひねくれ心を跳ねのけて、全肯定!!と言わんばかりの力強さでエールをくれる。

 

心のまま 感じながら 信じながら

燃やしてく情熱は

真の強さ 間違いなはずがない

 

すごい、ひたすらそう思った。

いま持っているつもりの軸はこれでいいのか、このままで前進できているのか、わからなくなることを全部、この言葉が晴れにする。

とくに“真の強さ 間違いなはずがない”の歌詞。間違いないではなく、“間違いなはずがない”と言い切るところに語気の強さを感じて、でも…なんて返答は必要ないくらい確信に満ちた頼もしさがあると思った。

これを聴いて、イノッチこと井ノ原雅彦さんの歌声が好きなことにも気がついた。晴ればれとしていて、ドアを開いて風が吹くような開放感が声にある。垂れた目尻と口角の上がったあの笑顔が思い浮かんで、そんな声色で歌うあの歌詞を聴くと、大丈夫かもしれないと思える。

このパートを井ノ原さんが歌ってくれたことが素晴らしいと思う。あまりに耳心地がいいから、それ聴きたさに何度も最初から聴いたりするほど。

 

 

君のために君のすべてが この世界を走るから 

 君のために君の想いが 全力を尽くすのなら

同じメロディーラインで歌われる2つの言葉が、無条件のエールと的確なエールとで対になっているようで、外側への期待だけではない、自分の想いが全力を尽くすかどうかという大切な点に気づかせてくれる。

忘れないでどんな時でも 大切なのは スピリット 

そう続く歌詞が心強い。

 

 

2番の歌詞になり、

流れるまま 捻れもせず 曲がりもせず

真直ぐな生き方を

貫くのは 難しいことだけど  

という言葉がくるところが本当に好きで。

“流れるまま”だから、意固地なわけではなくて、そこがいい。

ストイックすぎるという受け取り方もあるけど、でもなんだかこの歌詞にはしなやかさを感じていて、まさに心掛けたいことだった。そしてそれを、“貫くのは 難しいことだけど”と添えているところにグッときた。簡単じゃないけど、と言い表すのではなくて、難しいと認めた上でそこに付け加えられる“けど”の大切さ。

素敵だなと思うのは、“けど”の後にそれ以上は続けずに、そのままサビの歌詞で伝えたいことを表現しているところ。サビに込められたメッセージがしっかりある分、引きが際立っていた。

 

 

いつか届く それぞれの未来できっと 笑おう

 

ずっと今年のまま、年を越さずにいたいなと思ったりもした。だけど、この先へ進みたいという願いもある。

名残り惜しさと、期待と。どんなことでも整理のつかない思いがある時はじっとしているに限ると思っている。

決めたことを貫くのはやっぱり難しい。けれどもっと簡単な道があっても、上手く進んでいく方法があっても、変わらずにいたい事がある。だからしなやかに、折れることのない柔軟さと確かな軸を持っていたい。

しなやかな物って例えばなんだろうと調べていたら、“柳(やなぎ)に雪折れ無し”という言葉があることを知った。これもいいな。来年の手帳のはじまりに書く言葉はこれにしようと思う。

溢れ返る多くの声と言葉に溺れかけてわからなくなったとき、V6の歌う「スピリット」は見るべきものを教えてくれた。