坂元裕二さん脚本ドラマ「anone」を心待ちにして

 

ドラマを見るのが好きで、日々の楽しみになっている。

今日は月曜日だからこのドラマ、今日は金曜日だからあのドラマと、時間の流れをドラマで感じる。

春・夏・秋・冬と4期に渡って、各放送局が制作するドラマ。3ヶ月に渡り見続けていると、最終回の頃には愛着が生まれ、もう来週は見られないのかと寂しくなる。

3ヶ月、という期間は意外と長い。あのドラマを見ていた頃にすごしていた時間はどんなだったと、ドラマの空気感と共に記憶していることも多い。このドラマを一週間のご褒美として、置かれている状況を乗り越えるんだと闘っていたことや、このドラマを見終えるたびに感想を送り合い楽しんでいたなということを、鮮明に思い出す。

 

ふと、自分の好きなドラマは何だろうと思い浮かべてみた。

リアルタイムで見ながら録画して、今だに大切にとってあるディスクは、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」「問題のあるレストラン」「深夜食堂」などだった。

よく飽きないと自分でも思うくらいに何度も何度も見ているのは、初めに挙げた3つ。そろそろセリフを空で言える気がする。見事に坂元裕二さんの作品ばかりで、なんてわかりやすいんだろうと思った。

 

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」「問題のあるレストラン」の3つは、坂元裕二さんの作品の中でも断トツに好きな作品。

ほかの作品も見ていて、「Woman」や「それでも生きてゆく」は深く深くに刺さる針のように心に残って、容易く好きなドラマだと言うことはできない。あれは、ドキュメンタリーだと思っている。

坂元裕二さんの脚本で日テレがドラマを制作する時の空気は独特だと思う。それが局からのオーダーによるものなのか、坂元裕二さんの書きたいと思うタイミングと重なるからなのかはわからないけれど、グワー…っと心に重りがのしかかるような感覚。後味は決してよくない。ならば見ないという選択もできるのだけど、目を背けるわけにはいかないという気持ちに駆られるのも事実。

 

水曜日から「anone」[あのね] という坂元裕二さん脚本のドラマが始まる。

日テレで、主演は広瀬すずさん。坂元裕二さんの作品に空気レベルで馴染み、多く出演する瑛太さんや、阿部サダヲさん、小林聡美さんの出演も決まっていて、とくに阿部サダヲさんと小林聡美さんはとても好きな役者さんで、坂元裕二さんの書くあの口語調の温度感をどう話すのか、楽しみで仕方ない。

「Mother」は幼い子供が直面する世界を描いていた。「Woman」は二人の子供を育てる母の姿が描かれていた。今回の「anone」では、少女が生きる術を探す姿が描かれる。

 

「Woman」でも、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」でも、坂元裕二さんは貧困の存在をないものにしない。今回のドラマの主人公も、清掃のアルバイトをしながらネットカフェで暮らす19歳。

坂元裕二さんが主人公である彼女の生き方をどう描くのか、周囲にいる人々の行動はどのようなものなのか。そこに救いはあるのか。

きっと息をつくのも忘れてしまいそうなその時間を、3ヶ月間見つめていたい。