“君のために生きようか” 「イッツマイソウル」

 

散々なくらい振り回されるのに、たった一つ、惚れた弱みですべてがちゃらになってしまう。

「イッツマイソウル」を歌う関ジャニ∞が好きだ。

関ジャニ∞のイメージとして、自分のなかで一番に思い浮かぶ曲は?と聞かれたら、「イッツマイソウル」と答えると思う。

 

「大阪ロマネスク」も「ズッコケ男道」も聴けば自然と彼らの姿が思い浮かぶけど、かっこわるさがかっこいい「イッツマイソウル」を歌う彼らが大好きなのだ。

あの特徴的なイントロで始まるトランペットの音と、ピアノに指を滑らせるグリッサンドの音を聴けば心拍数が急上昇する。

歌詞は独特の感性で、大好きなあの子を褒めてるのか貶してるのかわからない。でもベタ惚れで、お手上げな彼が歌う彼女へのラブソング。

ラブソングと呼ばれる曲は数多くあるけれど、ここまで本音をぶっちゃけているのも珍しいと思う。

 

「イッツマイソウル」に惹かれる大きなポイントは、“なにかを好きでいる状況”全般にこの歌詞が当てはまるからだと思う。好きな人や恋人に限ることなく、趣味や目標、憧れも含めて、どうしていいのかわからなくなるほどの胸の高鳴りに、ぴったりはまるのがこの曲だった。

なにかを好きになる理由を、歌詞のなかで“そこはツボ”と言い表しているところがすごくいい。理屈ではなく、“弱い”や“ツボ”という言葉で表すことによって、自分の思考さえも飛び越えて惹かれていくスピード感が伝わってくる。

かなり辛辣な彼女への分析だけど、でも奔放な彼女は多分気にしていない気がする。彼も頭の中では客観的な分析をしているものの、そこからどんどんのめり込んでいく様子が歌詞で描かれているところが楽しい。

 

俺弱いの そーゆーの

終日 もう君に夢中 OH ベイビー

振り回されるけどそれでも好きで、なんかもう好きすぎてちょっとキレ気味なのがいい。骨抜きとはこのことで、情けないほど惚れている。

“OH ベイビー”の歌い方が、強く歌わず力を緩める歌い方になっていることでその印象が際立っていて、この部分のさじ加減がいつも絶妙で感動する。

彼女の綺麗に完成されたところに惹かれているのではなくて、彼女だけが持っている個性に彼だけが持っている感性が動く感じがいい。彼はお決まりのモテテクには落ちなさそうだなと思う。

関西だからこそ成立する“惚れる”という概念が、「イッツマイソウル」には根付いているように感じる。

 

 

君のために生きようか 惚れたもんだから仕方ない

こんな男前な腹の括り方あるだろうかと、聴く度にドキッとする。このサビにくるまではうだうだと煮え切らないような、気だるい雰囲気を纏っていたのが、突然ONになった男前スイッチ。

見習いたいと思った。いいなーというより、自分の惚れた感情の責任を持つかっこよさ。自分が好きなんだから仕方ないと腹を括れる覚悟は大事だと思った。なんで好きなんだろうとかどうして諦められないんだろうとか、考えても仕方ない。好きなんだから。

 

 

曲の中で、一番好きなフレーズ

君を思い出さない そんな夜はいらない

なんだかんだやっぱ好き 終日君で

すべてこれに尽きると思った。この時に入る、手拍子のリズムもいい。

“君を思い出さない そんな夜はいらない” 

どれだけ考えても迷っても、思い出さない夜のことを想像すれば、知らない方が良かったとは思わない自分に気づく。 曲の中の彼は、好きでいることに格好つけないところがすごいなと感じる。

 

このフレーズをソロで歌うのは渋谷すばるさんで、それが直球で心に響く。渋谷すばるさんの声で聞くこのフレーズは物凄い力がある。

「イッツマイソウル」は振り付けも含めて、ライブで聴けるとすごく嬉しいのだけど、特に去年の「関ジャニ's エイターテインメント」の時の渋谷さんは最強だった。

ソロに差し掛かるとトロッコの上から斜め下にスタンバイしているカメラをきょろきょろと探し、見つけた!と指差してじーっと真っ直ぐにカメラを見つめながら歌う。“終日君で”のところで指を差すから、モニターを見ている人たちが軒並み撃ち落とされていく。

若い頃に歌う「イッツマイソウル」と、今の年齢になって歌う「イッツマイソウル」は異なる魅力があると気がついた瞬間だった。

 

そして、歌の最後のフェイクでメロディーを歌う渋谷さんが「イッツマイソウル」の世界観を最高に表現している。

言葉ではなく、“な”の音で感情の揺れを表していて、どんな表情でいるのか伝わる。歌詞がないのに、なによりも歌詞の彼の心境を物語っていることに驚いた。気持ちのいいメロディーを聴かせるためではなく、感情が言葉よりもリアルに伝わってくる声だった。

特に、流れのなかでキーを跳ね上がるように高くする部分が印象的で、こんなに切ない声があるだろうかと思った。肩の力が抜けて、半泣きのような声。駄々をこねる子供のようにも聞こえる。

渋谷すばるさんのフェイクはほかの曲でも聴けるけれど、私は「イッツマイソウル」のこのパートが堪らなく好きだ。

 

何かへ思いを向ける時のただ好き!という楽しさとワクワクだけではなくて、それによって巻き起こる、モヤつきやふがいなさ、そのかっこわるいところも含めて歌詞になっている魅力がこの曲にはある。

好きすぎて煮詰まって、なんで好きなのか考えてグルグルして、でも結局はここに帰る。曲のタイトル「イッツマイソウル」という言葉に、その感覚が凝縮されているところが巧みだと思う。

 

単純に好きだったはずのものについてわからなくなると、「イッツマイソウル」を聴く。そうすると、不思議なくらい気持ちがすっきりとして、しょうがないかーと思えるからすごい。

好きでいるだけのことがぎこちなくなることはある。それでも、難しいことを考えても抗えないのなら、私はこれからも君に夢中なままがいい。