『語感』と「関ジャニ∞」の方程式

 

丸山隆平さんをテレビで見ていて、時折飛び出す英語の発音が綺麗だと思った。

錦戸亮さんが英会話伝言ゲームのコーナーに出ているのを見ていて、リスニングと発音の思考が真っ直ぐ繋がっていると思った。

日本語も面白いけど、英語も面白い。関ジャニ∞のなかでその面白さを直感的に、もしくは潜在的に感じていそうなのは、丸山隆平さんと錦戸亮さんのような気がしている。同じ英語でも、英語へのアプローチはそれぞれ違う気がしていて、丸山さんの英語力と錦戸さんの英語力の違いはなんだろうと思った。 

 

丸山さんは、耳と感覚で音を楽しみ興味を持つ。

錦戸さんは、耳と思考で論理立てて関心を持つ。

 

個人的な見方ではあるけど、そこに違いがあるのではと思った。感覚なのか、思考なのかはきっと大切なポイントになっている。

丸山さんも錦戸さんもリスニングに長けていて、発音がネイティヴに近い。錦戸さんが丸山さんのギャグの音感を気に入って真似することが多いのは、そこで共鳴するものがあるからなのではと思った。もちろん、単純にツボにハマっているということもあると思う。

けれどそこに法則を見出すとしたら、ライブツアー「JUKE BOX」メイキングでの“リップスティック”や「取り合いメイキング」での“すきま風”など、錦戸さんが思わず口ずさみたくなるのはそういう理由からかもしれないと感じた。

 

“言葉”に対する関心が強いメンバーが関ジャニ∞には多い印象がある。

語彙力という点では、「関ジャニ∞クロニクル」のイケメンカメラ目線陸上を見ていると分かりやすい。あのコーナーで際立っているのは大倉忠義さんの連想から繋がる言葉の表現で、目で見たものを記憶と照らし合わせて、“何っぽいか”を言葉にしている。どこかで見たものを瞬時に言葉に変える観点は才能だと思う。

村上信五さんはMCの位置についた時の、相手の話していることを聞いて返す瞬発力がすごい。聞かずに説き伏せるのではなく、相手が何を言いたいのかを聞いてから、状況に合わせた言葉で返す。その聡明さは、「関ジャム」での前に出過ぎず話過ぎずという塩梅に表れていると思った。

さらに、渋谷すばるさんと安田章大さんも言葉への好奇心がすごいと感じることが多い。それぞれの作詞ということに注目して考えると、渋谷さんと錦戸さんはどちらかというと文学的な思考からの“言葉”としてのアプローチ。安田さんはまず音のはまりを先行で考える“音”へのアプローチがあるのかなと感じた。

安田さんが作詞・作曲をした「Never Say Never」や「JAM LADY」は個性が弾けていて、いざ歌うとなるとかなりの難易度なのは、それほど耳からくる音への創造性が卓越しているのだと思う。

 

丸山さんは作詞の時と話す時では言葉選びの仕方が別な気がしていて、話す時は特に“響き”を気に入って感性が揺さぶられているように見える。井上陽水さんや山下達郎さんの歌真似が上手で、当てる音のポイントを掴んでいるのも、先入観なしで音に反応できるスイッチを持っているからではないか。

「A-Studio」に出演した際に、手を叩くとどんな音がすると思います?パンッって鳴っているとみんな思い込んでいるけど、実際は違うかもしれない。と話していたことがとても興味深くて、その通りだなと思った。

リニューアル後の「ジャニ勉」で、若い頃の井上陽水さんと現在の井上陽水さんの歌い方の違いを再現した時も、微妙なニュアンスの違いを見抜いていてすごかった。

 

錦戸さんは耳が本当にいいのだと思う。大きな音に驚きやすいのも、少しの音のズレに気がつくのも。

関ジャニ's エイターテインメント」のライブDVDのビジュアルコメンタリーで、アコースティックコーナーの「ローリングコースター」をメンバー揃って見ていた際に、大サビ前のフレーズの音が違ったことを自分で気づき、いま音違ったやんな?と話していて、その観察力と聴き分ける力がどれだけ繊細なのかを知った。

メンバーはこれはこれでかっこいいで?と答えていたし、普通に見ていたら気がつかなかった微妙な違いでも納得がいかない様子だった錦戸さんを見て、その耳が鍛えられるまで、どれほどの音を聴いて自ら学んできたのだろうと思った。

言葉の意味を掘り下げて、ロジックを組み立て、メロディーに落とし込む。そのセンスは天性のものだけではなく、知らないものを知っていこうとする動機で学ぶ探究心の賜物だと思う。

 

渋谷さんは作詞と作曲では音について別の考え方で向き合っているような気がしていて、作詞については、なにを伝えたくてそれを伝えるためにはどの言葉を使うかを丁寧に考えているように感じる。

語感を楽しんでいるのは主にメンバーと話している時、特に丸山さんと一緒にいる時の渋谷さんはそんなふうに見える。シングル「あおっぱな」のメイキングで突如発生した“なしょふんゲーム”は謎深きゲームで、あれは本当に興味深い。研究対象にしたいくらい様々な法則が隠れているような気がしている。

 

 

音として英語を覚えているから発音が上手ということだと、横山さんの耳もすごい。

「This is a pen.」なんて理屈を無しにして、発音にも先入観がないからこそ、横山さんの発音は無意識のうちにネイティヴに近づいていると「関ジャニ∞クロニクル」を見ていて思う。

英会話伝言ゲームのコーナーで以前、ハルカさんが横山さんに「発音は出来てる」と言ったのはきっと間違いなくて、そうとしか聞こえへんと頭を抱えていた“パスポート取りたいんです”も、「Is possible to return this?」の発音として捉えれば、音のリスニングとしては大正解なのではと思う。

「I am」は「アイ アム」と発音するもの、というような固定概念がないことで、音だけに集中できていると感じた。意味から考えず、音から入る横山さんの学び方はある意味強い。

錦戸さんは単語も文法も理解しているから、聞き取り、意味を考えることができる。横山さんに単語力がついたら、きっと喋られる。

 

こうして考えるきっかけになったのは、丸山さんが初めてのMCを務めたという2014年に放送された番組「ラスコク」を見たから。

オープニングの最後にくる「I love you.」の発音を聞いて、やっぱり丸山さんの英語いい!と衝撃が走った。

LとRの違いを舌の形で発音し分けていたり、外国の方との会話で単語をしっかり聞き取り文章として理解しているのを見て、英語特有の雰囲気や言い回しを楽しんでいる感じがして、英語が音として好きなのだろうなと思った。

海外の映画やドラマを観たりしたからのか、自然と身についたものなのか、丸山さんは物凄くナチュラルにジェントルマンな雰囲気をまとう時がある。発音の良さとその所作が合わされば、いつか本気で丸山さんにエンジンがかかった時、海外の作品に出ている丸山さんを観られる日もくるのではという可能性を感じる。

 

丸山さんが生み出す語感のマジックは、メンバーだけに留まらず関ジャニ∞のファンのもとへ。さらにはその外まで広がっていて、その代表格が“U字の水槽”だと思う。
日常の当たり前にあるかもしれない言葉というものを、そんなふうに面白がりながら、言葉を楽しんでいる関ジャニ∞がいいなと思う。

言葉を話す時、音を聞く時、どちらにしても興味を持って意識していると、それだけで思いのほか楽しい。