全力並走で追いかけたい。金曜ドラマ「MIU404」

 

面白い。これ面白い…!!と沸き立つエネルギーで何かしらの発電ができないだろうか。

待ちに待って、焦がれるほど待って。ようやく放送開始にたどり着いた、TBSドラマ「MIU404

金曜22時が、これからの楽しみになることが嬉しい。

 

脚本は野木亜紀子さん。

プロデュースは「アンナチュラル」「中学聖日記」などを手掛けた新井順子さん。監督は「アンナチュラル」「中学聖日記」の塚原あゆ子さん。

お三方が集結するのは、「アンナチュラル」以来だという。

 

実現した綾野剛さんと星野源さんのバディ。

“バディ”というものへの募る思いは「海猿」の頃に着実に培われていたから、そう易々とは刺さらないぞなんて余裕な素振りでいた。しかし。これは、くる。

コウノドリ」で見ていたはずの、二人の並び。温厚なコウノトリ先生と、冷淡に見える四宮先生。その空気感を完全に切り替えて、今回は役柄が違う。再びの共演に喜ぶというよりは、どちらも見たことの無い表情で全くの別人。

綾野剛さんが演じる伊吹藍は、勘は鋭く足が速くて、耳は良いけれど突拍子も無く危うい。

星野源さんが演じる志摩一未は、観察眼が鋭く慎重さも兼ね備えているものの、不意に見える“戻れなさ”がある。

 

春ドラマとして始まるはずだった「MIU404」は、6月26日に放送開始。

この状況下で撮影をストップせざるを得なくなり、放送されるのだろうかと心配もした。延びに延びて、これから放送されていくドラマは通常以上に期待値が上がっているのではと、勝手に危惧する気持ちもあった。

タイトルバックが出るまでに、数分間で登場人物たちのキャラクター性と置かれている状況を伝えるスピーディーさ。

伊吹と志摩の相容れない性格に目が離せなくなって、今の言い方!今の表情なに!と思っているうちにグングン進む。さっきのあの言動、さっきのあのカットはそういうこと…!と猛スピードで走り去りながら、道に置かれた伏線を颯爽と拾い上げていく。

これだけ上がりきったハードルを高らかに越えていく凄さに笑ってしまう。圧巻で、爽快。

 

第一話の軸になるのは煽り運転だと序盤で分かった時、いきなりそのテーマでくるのと驚いた。切実であればあるほど、触れることをためらう事はあるはずで、けれど今回のドラマでも書きたいことを書く、という意思を感じた。

その中でも、言いたい事だけを突きつけるのではなく、週の終わりに見てワクワクできるエンターテイメントになっている。

 

 

麻生久美子さんの演じる桔梗ゆづるは、機捜の隊長。

ナチュラルな佇まいでありながら、付け入る隙は与えない凛々しさがかっこいい。志摩との空気に“何だか”あった感じを察するのは気のせい?

橋本じゅんさんの演じる陣馬耕平と、新人でありながらキャリアの警部補、九重世人を演じる岡田健史さんのバディにも心惹かれるものがある。ベテランと新人の関係性だけど、威圧感では抑えない、新鮮な二人の距離。

中学聖日記」で俳優としてデビューをした岡田健史さんがこれからどんな作品に出演していくのか楽しみで、今回出演されると知った時、絶対に見ようと決めた。第一話を見終えて、開始早々に登場していきなり台詞もしっかりとある九重世人の役を、綾野剛さんや星野源さんたちに並んで演じていることの凄みを感じた。

作品をつくっていく熱量、現場の空気。沢山のことを吸収する場になっていると思うと、このドラマとの出会いが、岡田健史さんにとっても大きな起点になる予感がして嬉しくなる。

 

逃げるは恥だが役に立つ」を見た後で「MIU404」を見ていると、まるで違う星野源さんにグワングワン振り回される。

イラッとした顔を見せる志摩。淡々と説明したかと思えば、怒りのままに物を蹴り飛ばす。が、すぐに後悔。

無茶な運転をする伊吹に向かって「バカバカバカバカ!!!!」と叫ぶシーンは予告で見た時から大好きで、こんな表情を見られるのか!と楽しみでたまらなかった。

パトカーランプをノールックで乗せる動作があんなにカッコいいって、一体どういうことだろう。

 

 

脚本の野木亜紀子さんが、TVガイドのインタビューについての補足として

企画書の人物設定に書いたのは正確には「伊吹はドーベルマン」と志摩はコリーはコリーでも「ボーダーコリー(牧羊犬)」でした。

ツイートされていたのを読んだ。

綾野剛さんの演じる「伊吹」のイメージはドーベルマンで、星野源さんの演じる「志摩」のイメージはボーダーコリー。

イメージとしては逆のような気も…と思っていたけど、いやこれで合っているんだとわかるまでに時間はかからなかった。開始から26分で、ドーベルマンとボーダーコリーってまさにだ。と腑に落ちた。

ドーベルマンは身近に飼っている人がいたことがあった。どんな音も拾いそうなツンとした耳、毅然とした体格に、キッと鋭利な眼差しは睨まれただけで動けない。

ボーダーコリーは家で長年飼っていて、その習性は間近に見ていた。犬の中でかなり賢いと言われるボーダーコリー。びっくりする観察力で人の動機を見抜き、機嫌を損ねると取り戻すのに一苦労。瞬発的に動く物を追わずにいられない性質を持ち、可愛らしい懐っこさに気を抜いていると、噛みつく時は不意打ちでくる。

伊吹の「ねえ今の犯人じゃない?」「なんかそんな感じした」「うーん」と話す様子がもうドーベルマン。ガッと怒った後に自己反省する志摩はまさにボーダーコリーで、犬感がすごい。よくわからないときめきの扉が開きかけた。あぶない。

 

ラストに流れるのは、米津玄師さんの歌う「感電」

歌詞に耳を澄ますと、かなりエッジの効いた言葉が聞こえた気がしてドキッとした。メロディーは管楽器の音が特徴的に聴こえて、ファンキーなグルーヴ感がある。

一筋縄ではいかないように思える、伊吹と志摩のバディとしての関係性に重なるトリッキーさで、振り切る爽快さも感じさせるエンディングから息つく暇なく次週予告になだれ込む。

第二話では、朝ドラ「スカーレット」で八郎さんとして見つめ続けた、松下洸平さんが出演する。

 

面白い。そんなドラマに出会えることが嬉しい。

制作に関わる人たちが楽しみながら作った作品を、これから毎週見られることが毎日を進む糧になる。

金曜の22時、猛スピードで駆けていく機捜の面々を全力併走で追いかけたい。