今宵、あなたにだけ見せる - なにわ男子「2 Faced」

 

ふっと止まった動きに息を飲むと、聞こえる口笛と指のスナップ音。

暗くなった照明に、きらっと光を反射させた衣装が揺らめく。

 

なにわ男子の「2 Faced

余裕な感じで見せるのも、余裕のない感じで見せるのもありな、ダークで色気のある曲。

Face”ではなくて、“Faced”で過去形になっているところに、隠したままではなくその一面を見せることを決めて、もう後には戻らない心情がある気がした。

にこにこしているなにわ男子の印象が周知され始めた今だからこそ、こんな一面が!?とドキッとさせられる。世界観にいきいきとマッチする高橋恭平さんが見られるのも魅力。

 

YouTubeのジャニーズチャンネルで披露された、なにわ男子のセットリスト4曲のうち、3曲目に披露したのが「2 Faced」

その前に歌っていたのは「アオハル」だった。

「アオハル」から、フォーメーションを合わせて「2 Faced」に入った時の空気の変わり様がすごい。

曲の始まるちょっと前、時間で言うと8:12あたり。曲に入る直前に、大橋和也さんが大きめに腕を振りかぶって動かして、躍動感を作り空気の変化を表現しているところに感動した。

 

大胆に境界線を 越えようか Princess

ダークな雰囲気の中に“Princess”のワードが入ってくるバランスが素敵で、それを歌うのが道枝駿佑さんなのが、素晴らしく完璧なパート分け。

パブリックな顔から パーソナルな顔へと

このパートを歌うのは、大西流星さん。曲名「2 Faced」の意味をシンプルに表現した、“パブリックな顔”と“パーソナルな顔”という分け方。語感がいいのも印象的で、はじめの『パ』の音と、『ク』と『ル』の子音が同じ“ゥ”だからかもしれない。

大西流星さんを正面からではなく真横から撮るカメラワークも良い。決めの動きが勇しく、普段見るキュルルン感はどこかへ。

 

 

全体的に低めの声色で雰囲気をぐっと強めるなかに、センターへと出てくる大橋和也さんの声は高めのハイキー。気品のあるなかに高く響く歌声が、アクセントの効いたバイオリンの音色のようだと思った。

今宵 君に見せる 2Faced

西畑大吾さんをセンターに、再び口笛がくるところがすごく良い。

圧、圧、圧できていたところに、口笛でふっと引きの美学を見せる。周りのメンバーが目隠しを作る振り付けが素晴らしくて、西畑大吾さんの顔がメンバーの手で隠された後、フェイスが見える演出。

 

離す手の動きが、煙のようにふわーっと引いていくニュアンスが指先に現れていてすごい。

前中央にいる大橋和也さんは、しゃがみながら裏手でひらひらとさせて、画面に向かって右前に藤原丈一郎さん、左前に道枝駿佑さん。

後ろ右に長尾謙杜さん、後ろ中央に高橋恭平さん、後ろ左に大西流星さんの並び。

カメラがグッと寄りになるので正確なことはわからないけど、おそらく長尾謙杜さんだと思われる手の動きが特に好きで、繊細に怪しげに、ステージに焚かれている煙のような動きを手で魅せることが出来るんだと感動した。

 

 

その瞳に 僕を映してる

音に合わせたダンスが中心になるこの曲で、“その瞳に”では前を指差す振りをしているところが、歌詞を表現する振りとして効いているのが良かった。

“oh oh oh…”で、顎下、そして顔半分を隠す振り付けからは、それぞれにぴんとくる角度を探究したと感じられるそれぞれの黄金比があって、違いが楽しい。

 

ダンスに見入っている間に、気がつくとステージに横一列に並んでいるメンバー

右から長尾謙杜さん、大橋和也さん、高橋恭平さん、藤原丈一郎さん、道枝駿佑さん、西畑大吾さん、大西流星さんの順で、

赤のライトに照らされているところから、コココココッと鳴る音に合わせ、一人ずつ白のライトへと切り替わって、同じ方向へと向きを変える。早いスピードでテンポの狂いなく、微かに腕を伸ばして視線の導線をつくる。

衣装の、ひらりと時差をつくって動くスカート部分がここで活きて、ダンスとの相性が抜群。

同じく、ダダッダッダッ…のところでも、可動域が広がって見えることで、体を大きく見せることができる。

 

生きた夢の魔法をかけてあげる今すぐ

という歌詞の次に来る、ダダッダッダッ…で映る長尾謙杜さんの右膝の角度と、全身の斜め具合を保つ体幹がすごい。

柔らかいしなりが美しくて、この角度で見せようと考えた長尾謙杜さんのセンスが好きだと思った。

そこからサビへと盛り上がって、“Everybody Alright”で腕を片方前に出して、ハンドルを回すような動きにはそれぞれ個性が出ている。

大西流星さんの猫ちゃん感のある動きに目が惹きつけられる。

 

大サビではあえてダンスを止めて、並んで一線に立つ。

ガシガシ踊って、ここで止める強さ。それぞれの横顔を見ているだけで、ひとりずつの曲の解釈が伝わってくるのが楽しい。

 

ラストも口笛で、それぞれ違う決めポーズがかっこいい。

頬の近くに寄せる手が、容易に近づくことを拒むような仕草に感じられて、ミステリアスさを増幅させる。

広めに顔を隠している大橋和也さん、隣の西畑大吾さんと思いっきり目が合っているんだろうなと思いながら見ていた。

 

「2 Faced」で見せるメンバーそれぞれの魅力の中でも、長尾謙杜さんがダンスに飲み込まれている瞬間には息を飲む。

再生時間で言うと、10:41あたり。振りや歌詞への意識から、曲に入り込んで“我”を忘れているように見える没頭した表情に、まだまだ知らない面があることを知る。

曲の序盤の“kiss”からはじまる藤原丈一郎さんの色っぽさは、スイッチオンになっている時の大人の落ち着き。

月夜にのぞき見てしまったかのような道枝駿佑さんの微笑みは、美しすぎて怖くなる。

 

息をつかせない曲の緊張感が次第にくせになってくることに、怖さを覚えたらいいのか飲まれてしまえばいいのか、闇の森を惑わされて進むような感覚。

ヴィランズに愛されるヒロインの世界があるとしたら、こんな感じなんだろうか。

なにわ男子の魅せるダークサイドな世界へと足を踏み入れていることに気がつくころには、もう帰り道がわからない。

耳に残る歌詞のリズムに、空気ごと塗り替えるパフォーマンス。なにわ男子の新たな表情を知ることができる曲「2 Faced」だった。