なにわ男子の「2 Faced」をきっかけに考えた、ギャップ曲とグループイメージの相関性について

 

グループのコンセプトによって、リリースする曲の雰囲気がしばらく同系統で続くことがある。

かっこいい曲が歌いたくても、長い間、理想とは違ったシングルが続いていく場合、グループのイメージが定着するまで必要なことだとも思うけど、本人たちの気持ちとしてはどう動くのだろうかと考えていた。

 

イメージが定着するまで、変化は控えめにする方針。

それが、最近は変わりつつあると感じるようになった。

そこまで本人たちの希望をぐっと我慢をさせることなく、多種多様な曲調を、わりと初期のうちから歌えるようになっている気がして、それはきっと本人たちのモチベーションに繋がる変化なんだろうなと思った。

例えば、かっこよくカッコつけられるのを理想として来た子が、2周くらい先回りした外しのかっこよさ、みたいなものをわかってパフォーマンスしてと求められたとしても、年頃に持つ感性から見た時に納得がいかないこともあるはずと俯瞰から見て勝手に考えていたから、

かわいい曲、おもしろ楽しい曲、かっこいい曲といろんな面を見せる機会があることは、アイドルを続けていくなかで大切になってくるんだろうと、ここ数日のファンクラブ動画やYouTube配信のセットリストから感じていた。

 

3月末に、YouTubeのジャニーズチャンネルで配信された、無観客でのライブ「Johnnys World HappyLIVEwithYou」

グループごとの選曲がサプライズに満ちていて、興味深いと感じたことから考え始めたのは、グループごとのイメージになる曲と対照的にぐっと意外性を見せる“ギャップ曲”と言えるようなものがあることについて。

配信動画は、基本4曲のセットリストが組まれて、パフォーマンスをする形式。

好評だったのは、各グループのパブリックイメージに応えるど真ん中な曲と、ライブなどの限られた場でしか目にすることのできないギャップを見せる曲の、2パターンが盛り込まれた選曲になっていたところだと感じている。

そのグループをよく知る人にとっては、この曲をやってくれるの!という驚き。歌番組などで見てグループの存在は知っているという人にとっては、こんな曲も歌うの!と意外性になる。

 

なにわ男子は

「ダイヤモンドスマイル」

「アオハル〜with U with me〜」

「2 Faced」

「関西アイランド」

4曲を披露。

選曲のバランス、そして順番が素晴らしかった。

「ダイヤモンドスマイル」で一気に、青の澄んだ景色でシュワシュワと弾ける世界観に引き込み、「アオハル〜with U with me〜」で等身大の男の子な青春感を魅せて、「2 Faced」でグルンとダークな空気に持ち込んでドキッとさせてからの「関西アイランド」で安定の関西の魅力溢れる曲でフィナーレ。

 

爽やか、爽やか、ダーク、かわいい、この4つの起承転結がアトラクションのように楽しくアップダウンを作る構成の良さ。

それも「ダイヤモンドスマイル」の爽やかさは、どちらかと言うと王子で、ファンタジーの要素もあるものなのに対し「アオハル〜with U with me〜」は、現実味のある近距離の学生感からくる爽やかさで、曲の色として近くても、タイプの違う爽やかさなところがすごい。

 

「2 Faced」の口笛、リズム、歌詞のハマり具合、ねじ伏せる圧、圧、圧。

少しでも照れや迷いがあると途端にかわいく見えてしまうからこそ、クールな雰囲気を作り出すのは難しいと思うけれど、一瞬で曲の世界観に浸かったなにわ男子の切り替え力と、曲が持つ勢いと息継ぎさせない隙間無いメロディーの強さで、どんどんとその場の空気が奥行きを増していく。

“oh oh oh oh  ohoh...”の同じ音を繰り返す中毒性。

“ダダダ ダッダッ…”のダンス。腕の動きと膝のひねり具合。

なにわ男子に、笑顔のイメージがついたから魅せることのできる二面性がまさに「2 Faced」だと思う。

 

 

こういう曲がしたい!を、早いうちから経験できることで得られるものはあるはずで、

最近ファンクラブ向けに配信された、Aぇ! groupの松竹座公演で披露された新曲も、大きなギャップ曲と言えると思う。

なにわ男子はマイルドめな比喩だとすると、Aぇ! groupは直球。クールでダークな曲、大人っぽいとも言う曲調の振り付けに、はだけたり腰のグラインドが必須かどうかはちょっと考えたいとこだけど、今それは置いておくとして、

ジャニーズWESTは配信ライブで「YSSB」というバリバリのダンスとクールな表情を魅せる曲を披露して、見ている側の意外性をかっさらった。

King & Princeは、デビューの「シンデレラガール」から「Memorial」の流れを考えると、キラキラとした王道をしばらくは続けるか、バラードで切り替えを図っていくのかなと思っていたら、「Naughty Girl」で一気に色っぽいダークカラーも魅せられることを提示したのは驚きだった。

ここぞという時に隠し持つ秘儀のようなものだと予測していたから、今もう出してしまうのかと思ったけれど、結果あのタイミングで華やかな曲調以外も出来ることを広く伝えたことは強かったと感じている。

 

ギャップ曲は、必ずしもダンスやダークな雰囲気が決まってあるものだとは思っていない。

それまでのグループの世間的なイメージから180°の変化を見せる楽曲であれば、明るい曲でも可愛い曲でも、それはギャップ曲になり得る。

 

歌番組では、望まれる歌、披露する歌が基本決まっていて、その他の選曲をできる機会は無いに等しかった。

そのために、ライブでだけ聴くことができる曲がファンにとって存在して、ライブ会場に足を運んで初めて目にする一面にググッと引き込まれていく。

そこにも変化はあって、長時間の歌番組が増えたことで時折思いがけない曲の披露に沸くこともあった。例えば、関ジャニ∞がTBSの歌番組で「I to U」を歌った時など。

 

TBSで3月から始まった「CDTV ライブ!ライブ!」では、アーティストに一定時間のライブ作りを任せて、セットリストを組んで演出も考えてもらうという企画が誕生して、

これによって今まで聴いてもらう機会の無かった曲を、アーティストの新たな表情を知られる場が増えた。

よく歌う曲以外にも、いろんな曲があることを広く伝える機会。

今は、ジャニーズにも“配信”という場ができて、出来るようになったことの一つだと思う。

 

 

ジャニーズJr.の世界をほんの少し知りはじめたなかで、私が知らずにいただけかもしれないけれど、最近の傾向として変わりつつあるのかも?と感じていたのは、その“ギャップを見せられる場”についての変化だった。

関ジャニ∞の歩みで考えてみると、デビュー曲の曲調が演歌で、リリース当時はメンバーにとっても意外なものだったこと、それ以降リリースされる曲が関西色の濃いものがずっと続いたこと、その期間は長く、いろんな思いを生む時期でもあったと思う。

ひとりひとりに違う意向があることを前提として、主にバンドを手にする、2010年「LIFE〜目の前の向こうへ〜」や「8UPPERS」のあたりまでだろうかと推測している。

見ている側からすると、それまでの曲も楽しくて好きなもので。時を経て今、楽しそうにコッテコテな曲を歌っているのを見られるのは嬉しい。

 

ただ、もし仮に、その先ずっと思っていることと違うことを続けるしかない状況が長引いていたら、それはやる気に直結する部分だと考えられる。

デビュー前のJr.時代から歌ってきた「Cool magic city」は、シングル曲「浪花いろは節」のカップリングになっていて、ライブで披露していたけれど、それをテレビで披露できるわけではなかった。メンバーそれぞれ、若いなかでの理想や葛藤もあったかもしれない。

好きなことを出来るようになるまでには時間かかるという理論もあるけれど、モチベーションを維持し続ける意味で、Jr.時代は特に“理想を実体験すること”は必要だと感じる。

こういう曲が出来る、こういうドラマに出られる、追いかけたい理想をまず現実として経験することで、想像ではなく現実に出来ることなんだと具体的に考えられるようになる。

 

今回、配信で「2 Faced」を披露したなにわ男子は、なにわ男子になって1年。

Jr.歴は、藤原丈一郎さんの16年から、大橋和也さんは11年、西畑大吾さんは9年、大西流星さんは7年、高橋恭平さん道枝駿佑さん長尾謙杜さんの5年とそれぞれ。

なにわ男子で活動が始まってから、「なにわLucky Boy!!」の披露に始まり、シャンパンのような輝きを放つ「ダイヤモンドスマイル」

これからが開けていく晴れやかさのある、前山田健一さん作詞作曲の「僕空〜足跡のない未来〜」

爽やかな青春を届ける「アオハル〜with U with me〜」

そしてクールなダークさが魅力の「2 Faced」と、なにわ男子としてのグループ曲がハイスピードでどんどん増えている。

アルバムが作れちゃうじゃないかと思うくらい、バリエーションに富んだ曲たち。多面性を表現できるフィールドが、曲の中にある素晴らしさ。

なにわ男子もAぇ! groupも、事務所のスタッフさんだけでなく大倉忠義さんと横山裕さんがそばにいて、プロデュースに関わるようになり。

二人が経験してきたことをふまえて、同じ道を用意するのではなく、今の大倉忠義さんと横山裕さんが伝えることができるものをアシストしているのかもしれないと感じる。

 

グループの魅力に気づいてハマる手前の段階で、いろんな系統の曲、ライブを観てみたくなるような曲を、不意打ちで見られることのメリット。

ステージに立つ側にとってもきっと、煮詰まらずにお仕事を楽しみながら続けていけるポイントがここにあるのかもしれないと思った、YouTubeでのパフォーマンス。そして、なにわ男子の「2 Faced」だった。