ふざけてる?お茶目?の境を攻める「木梨ファンク ザ ベスト」

 

「食わず嫌い王」を見ていた頃、タカさんが言ってることをころっと変えた時に木梨さんがする、“よおー!(手のひら返しのジェスチャー)”の流れが好きだった。

日テレの金曜23時に放送していた「未来想像堂」は好きな番組で、一時期そういった空気感の30分番組がいくつもあった頃はハシゴして見るのが楽しみだった。

木梨憲武さんをMCに、ゲストのこだわりの品を聞いて実際に手に取ってみたり、VTRのコーナーでは生活に馴染んで気にも止めなくなったような物がどのように発明されたのかを紐解いてストーリーとして知ることができた。

番組のテーマ曲が、フランク・シナトラ版の「My Way」だったことも覚えている。

 

野猿」として歌番組に出演していた時代もあることから、木梨憲武さんが歌を歌うことは知っていたけれど、まさかこのタイミングでいきなりアルバムをリリースするとは思わなかった。

しかもタイトルは「木梨ファンク ザ ベスト」

最初のアルバムなのに、ベスト。

 

謎の多すぎるアーティストのMステ出演は、関ジャニ∞と同じ週で、関ジャニ∞は中継でスタジオには居なかったものの、村上信五さんが木梨さんに呼びかけた「ウルトラソウルッ!!」のノリが最後まで繋がったことで、中継越しの共演を見ることができた。

まずヘアスタイルとサングラスに髭の出で立ちからして、かなりの鋭角さでふざけにきている木梨さん。

セットにスタンバイして、カメラがそれを映すと、やっぱりすごい存在感のヘアスタイル。まーたそうやってふざけて…!と思ったら流れだした曲がかっこいい。

それっぽく渋く歌うが、歌詞は日常密着型。

ただふざけているように見えて、音楽に関心のある層には音楽面で。歌詞に共感を覚える層には木梨憲武さんとしてのライフスタイルのような見せ方で。年代の隔たり無く楽しみの間口を広げているところがすごい。

リード曲のタイトルは「GG STAND UP!!」歳を重ねることを、曲のパフォーマンスとして渋くかっこよく成立させていて、だけど身体にくる節々の痛さは隠さない。力の抜き加減が絶妙で、その魅力に惹かれる。

 

 

「GG STAND UP!!」では、“パーリラ”と入ってくるコーラスに、70年代を彷彿とさせるEarth,wind&Fireの「SEPTEMBER」を思い出したりして、いたるところに散りばめられている音楽の遊び心にワクワクしてくる。

「I LOVE YOUだもんで。」の“だもんで。”に込められた、照れたはにかみのような言葉が持つ表情にグッときて、木梨憲武さん節がこれでもかというほど効いているところにも笑ってしまう。

 

しかしこのアルバムのずるいところは、

「Laughing Days」

という曲を隠し持っているところにある。

ブラスバンド、優しいドラムで刻むリズム。ピアノが奏でるジャジーなメロディーに木梨憲武さんのボーカルが合わさり、好きにならないはずがない。

ここまで曲の好みが分かりやすいといっそ清々しいな!と思うほど、これまで文章にして好きだと書いてきた曲たちと傾向が似ている。

「Laughing Days」作詞はH.U.B.さん。作曲はJosef Melinさん。

 

Laughing in the love Laughing in the shine 君はずっと大丈夫

smileが表情だけで微笑むことを表すのに対して、Laughは声をだして笑うことを意味する。

“Laugh”という言葉を歌詞の中で見つけると、私は関ジャニ∞が歌った「All you need is Laugh」を思い出す。

あまり頻繁には見かけない単語だからこそ、あえてそれを選んだ意味を考えて、微笑んでと伝えるよりも気軽な、そして切実な思いをそこに見る。

 

 

私は時間が恐い。歳をとることも恐い。

若くなくなることへの恐れではない。人も場所も“このまま”が守られることはないのだと思い知らされるようで、立ち止まらせてはくれない時計の針が恐い。

けれど、お茶目にふざける大人の姿は、ときにどんなヒーローよりも輝いて見える。

肩肘張らず、向かってくる出来事にものらりくらりと交わす術を身につけて、楽しみどころを見つけ出す。

 

座右の銘にしたいと思っている言葉がある。

「柳に雪折れなし」

しなやかな柳(やなぎ)の枝は、雪が降ったとしても、その重みに耐えることができ折れることがない。しかし堅い木は雪の重みで枝は折れやすい。

強くあろうとすることは大切な心持ちだけど、頑なにならなくとも、しなやかに成せるはずだと思っている。

関ジャニ∞、レキシの池ちゃん、木梨憲武さん

少し先を歩く、私が憧れる大人たちは、脱力のすべを知っている人たち。

エネルギーを持ちながら、その脱力の緩急をセンス良く用いることのできる大人に、私もなりたい。