小雨ふる、井の頭公園

 

「Rain」があまりに似合う日、吉祥寺へと降り立った。

吉祥寺。気になる街だけど、そう多くは訪れないのだろうとなんとなく思っている、不思議な距離感の街だった。

でも今回は、ガラスペンとお手紙のワークショップがあることをネットの情報から知って、場所がどこかを調べるよりも先に参加したいと思ったことで、ここに来ることが決定した。

 

久しぶりの吉祥寺駅は、目線の置き場に困るほどの情報量。改札を出ればあっちにカフェこっちにもカフェ。座る場所に困らない。駅ビルに迷い込めば、初めて目にするスイーツショップにパン屋さん。

一際目を引いたのは、白いコッペパンの専門店「やわらかシロコッベ」

コメダコッペパンの専門店を作ると聞いて気になっていたけど、取り扱い店舗が限定されていて、食べる機会はないかなーと思っていた。そうしたらいま、目の前に。

しかも、最近好きな味の小倉とマーガリンの組み合わせのコッペパンがある。帰りにまた見つけられたら買って帰ろうかな。そう思いつつ、ひとまずその場を後にした。

 

止むかもしれない予報だった雨は、小雨のままサラサラと降りつづけていて、駅を出ればみんなが傘を開いて同じ方向を目指す。

傘をささないほうがスムーズに歩けるのではと思うくらいに休日の吉祥寺は賑わっている。

 

ここまで来たなら、井の頭公園に行きたい。

2年前だったか、初めて来たのはその頃で、晴れた日だった。名前だけは聞いたことのある大きな公園というイメージだけを持っていて。

実際に行ってみると、ドラマで見ていた景色や、関ジャニクロニクルのロケで映っていたお店のある通りにわくわくはしたものの、公園の印象は、こういう感じなんだなあと思うだけで予想を上回ることはなかった。

だけどもっとなにか楽しみどころがある気がして、小雨が降っていようとローファーが濡れてしまおうと、もう一度訪れたかった。

階段を降りた先には、木々が大きく高く生い茂っている。雨で湿った緑は暗めに深く、目に飛び込む情報量が少なくなって、気づけば人もまばら。

 

f:id:one-time:20190711095748j:image

 

すこし前に、井の頭公園の池に絶滅危惧種だった藻が大復活で増えて、モネを彷彿とさせると話題になっていた。晴天ではないから鮮やかな風景とは言えないけど、本当に沢山の藻が水の中に生息していた。

水の中に生える草はなんだか不思議でおもしろくて、そこでプカプカと浮かぶ小鳥“カイツブリ”のヒナを見つけて、静かにテンションが上がる。

お風呂に浮かべる黄色のアヒルくらいのサイズ感で、2羽の小鳥がお互い見せ合うみたいに順番に水の中に潜って、出てきてを繰り返す。あんなに小さいのに真下に潜れるのか…!という感動と、潜った時と出てくる時に水面にできる輪っかの波紋が綺麗で、すごいなあとしばらく眺めていた。

 

 

井の頭公園には、行きたいコーヒー屋さんがあった。

もう一度見つけられるかなと思いながら勘を頼りに公園を歩く。今となれば、なぜ勘を頼りにしたのか。こんな時こそグーグルマップを使ってと私に言いたい。

公園内にお店はそんなにないと思っていたし、お店の外観は草木に覆われて大体でしかわからない。目の前に見えたお店に、ここだ!と思い入店した。

席に着くと、エスニックな香りがしてくる。メニューを見ると、アジアン料理なラインナップ。“トムヤムクンラーメン”の文字に、おお!と嬉しくなった。カップ麺でもスープでもこの味を選ぶくらいに好きなトムヤムクン

お値段はしっかりだけど、ちょうどお昼を食べていなかったし食べてみようと、トムヤムクンラーメンと、本来の目的はコーヒーだからカフェラテのホットを頼んだ。

 

どっしりとした器で運ばれてきたボリュームしっかりのトムヤムクンラーメン。

スープはそれ単体でも成立する酸味と辛味の効いた美味しいトムヤムクンで、大きなエビも2つ入っている。麺は細麺で少し縮れていて、スープに絡む。

 

思いがけず好きな味に出会えて嬉しかったのだけど、ここで私は気がついてしまった。

このお店…目指していたコーヒー屋さんではないな…?

その場で調べ直すと、今いる場所ではないところにマークが付いていた。しかしワークショップの時間も迫っているし、カフェラテを飲んでしまったし、お腹いっぱいだしで、時すでに遅し。

あーと思いながらも、急ぎつつトムヤムクンラーメンを食べ終えて、とりあえず目指すはずだったコーヒー屋さんも見に行こうと、再び公園に繰り出した。

ちょっと歩くと、数分もない距離で見えたコーヒー屋さん。ここだったー!早とちりしたーと思いながら近づいて、飲んでみたいおいしそうなドリンクメニューの書かれた看板を未練がましく見つめる。

飲みたい…ここまで来たのに、でももう時間がない。また今度か…と恋しさを残して、コーヒー屋さんを離れた。

 

雨はつづいて、木の下を歩いているとたまにザザッと葉から雨粒がまとまって落ちてくる。

絶対にこの景色の中ではこの曲だとiPodを取りだして、秦基博さんが歌う「Rain」を聴きはじめた。あまりにぴったりだから、「言の葉の庭」の絵の中に入り込んだ感覚になる。

 

 

ワークショップの場所は初めて行く所だから余裕を持って向かうつもりでいたのに、井の頭公園を楽しみすぎてしまい、時間ギリギリ。全力の早歩き。

間に合いそう!と目的地付近に来たところで、グーグルマップの弱点、狭い小道になるとルートがぐるぐる更新されてしまう現象が起きて、どうしようと焦る焦る。こんな時は電話で聞くしかないと、苦手な電話を思い切ってかけて、今見える建物を伝えた。目印になるものを教えてもらって、近くにあったコンビニで道を聞いた。

この間、大変焦って申し訳ない気持ちでいっぱい。5分前には着いておこうと思ったのに遅刻なんてー…と思いながら、右も左も分からなくなった私に目指すべき方向を教えてくれたコンビニのお兄さん。すいません、ありがとうございましたと言ってからコンビニを出て、急ぎ足。

どこに行っても自力でなんとかしようとしてしまう自分が、SOSで“道を尋ねる”というコマンドを選択できたこと。成長だと嬉しくなった。

 

この道…で合ってる…?と建物を見上げていると、お店の外まで出てくれていたスタッフさんが声をかけてくれた。ようやくたどり着いて、始まったワークショップ。そのことについては、記事を分けて書きたいと思う。

 

ワークショップが終わり、駅を目指す道のりもなんとかたどり着くことができた。

井の頭公園に向かう時は“公園口”から出ていて、ワークショップの場所は“中央口方面”なので、若干角度が違う。あのコッペパン、買いたいけれど見つけられるだろうか。こっちかなー見つけられないままならそれもまあいっかと歩いていると、あった。戻って来られた。

お目当て通りに小倉マーガリンのコッペパンを購入して、家路についた。