人の心は移ろうもの、ダー子とジェシーの麗しさにご用心。 - 映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」

(ネタバレは無いように書いていますが、個人の判断をお願いします)

 

放送時間にスタンバイして部屋でこっそりと見ては、その意地のワルさと無茶苦茶さにニヤニヤしていた、ドラマ「コンフィデンスマンJP」

それを映画館で、大スクリーンで、みんなで観る。

むずがゆさというか、いい意味での違和感がすごかった。上映前、席につく人たちを見て、同志がいたと喜びに似た感情が芽生える。ひっちゃかめっちゃかなダー子、リチャード、ボクちゃんの3人に注目せずにはいられなかったのは自分だけではなかった。

 

盛大なちゃぶ台返しが爽快な「コンフィデンスマンJP」

だからこそ、脚本を書くたびにハードルが上がって、ひとり◯×ゲームみたいな大変さがあるのではと勝手にドキドキしていた。けれどそんな心配は無用とひらりかわすかのように、映画館のスクリーンの中でもダー子はゴーイングマイウェイ。ボクちゃんはボクちゃん。リチャードは動じない安定感。

そして、いたのか五十嵐!

映画公開前の五十嵐スピンオフに心躍って楽しく見ていたら、ドラマの時には自覚できなかったちょび髭さん萌えというツボに気づいてしまい、そこからすっかりちょび髭さんから目が離せなくなった。なんならスピンオフのなかで結婚をして子供ができ3人のパパになったちょび髭さんに淡い失恋を覚えたくらいに。

 

今回舞台となるのは、なんと香港。

ダー子 × 香港の相性が驚くほどしっくりきていて、アジアンな空気が黒髪ショートな長澤まさみさんの美しさとベストマッチ。衣装が素晴らしく、ダー子のキャラクター性もそのままに、香港で着るからこそ際立つ大柄のついた衣装で見せるスケール感がとてもよかった。

 

 

そして感動したのは、三浦春馬さんが演じる天才詐欺師ジェシーの存在。

見目麗しいとはこのことかと、画面越しでも心を奪われる佇まい。香港の風のせいか、天才詐欺師ゆえの魅力か、熱帯夜にあてられる妖艶さ。

ミュージカル「キンキーブーツ」を観たばかりの自分だからか、撮影期間が稽古に重なる期間があったのかはわからないけれど、どこかローラで培った甘美な視線が滲んで見える気がして、一層引き込まれていった。

ドラマ「サムライハイスクール」を見ていた頃、瞳が変わる瞬間や空気を変える表現の凄さを感じていたものの、声、に関しては注目したことがなく、どちらかというと喉の見た目よりも細く声を出すイメージだった。

それが「キンキーブーツ」を観て、こんなに安定したジェントルボイスを出す人だったのかと驚いて、息をのんだ。喉の使い方、声の出し方が変化している印象で、そのしゃべりかたの魅力が溢れているのが今回のジェシー役だった。

 

さらに所作が素敵。紳士さはやってみようと思って出来るものではないはず。

海外へ渡ることが増えて、英語への関心を深めている三浦春馬さん。身のこなしの美しさは、その地の空気から吸収したものがあるのかなと思う。映画の中で使われる英語に広東語、三浦春馬さんの発音が繊細で、どちらも言語として真摯に取り組んでいると感じた。

身のこなし、エスコート、表情の移り変わりまで、気品があり人の視線を惹きつけるジェシー

胡散臭い天才詐欺師ではなく、本物のジェントルマン。

怪しさをミステリアスさに変えて、この人になら騙されてもいいかもしれない…と、つい気を許したくなってしまう、抗えない引力。スタイルの抜群さで言えばボクちゃんだって負けず劣らずだけど、圧倒的な紳士としての役回りを担う三浦春馬さん。ぱっとしない空気感を保ち続ける、東出昌大さんのすごさも同時に実感する。

小池徹平さんも出演されているので、「キンキーブーツ」を観た方はぜひ「コンフィデンスマンJP」へ!とおすすめしたい。

 

 

ターゲットである“オサカナ”を見つけて騙すのがコンフィデンスマン。

コンゲームの先にあるものとは一体なんだろうか

 

Confidence】(コンフィデンス)とは、信用、自信、秘密

ダー子のしていることは無茶苦茶だけど、誰よりも人に関心があって、人をかわいい存在として愛でているのもダー子。

どこから騙された…!?と頭を抱えるこれまでのお魚たちと同様に、すべて終わってみれば何が真実で何が嘘か、考えれば考えるほどわからない。でもあれは…と一筋の“真実”にすがりたくなる。

あの時の気持ちは本当だったか、あの言葉は本心だったか、本人にさえわからないこともある真実。

人の心に絶対が無く、不変ではない移ろいのあるものだということを楽しんでいるダー子だから、私たちの目に魅力的に映るのかもしれない。