何度訪れても足りることがない。もっと知りたい。
自分の住む日本のなかで、こんなにも興味を駆り立てられる場所があることはしあわせなことだなと思う。
大阪観光局シンボルキャラクターに任命された関ジャニ∞が、大阪の魅力を伝える曲を作ろうという企画から誕生したのが「All you need is laugh」
作詞はメンバー会議のもとアイデアを出し合い、最終的な作詞作曲の構成は錦戸亮さんと安田章大さんが担当した。さらに編曲は錦戸亮さんとPeachさん。英語詞は翻訳家の朝日順子さんが監修している。
その作詞の過程を見ることができるメイキングは、シングルCD「ここに」201∞盤の特典映像として収録されていて、「All you need is laugh」の音源は「ここに」通常盤に収録されている。
ライブツアーの期間中に、そこまでハードなスケジュールで、短期間での曲作りという無理難題を提案しなくても…と深夜に渡る会議を見ていると心苦しく思うものの、作戦会議の様子自体は見どころでいっぱい。
関ジャニ∞クロニクルの「英会話伝言ゲーム」のコーナーが好きな人は笑顔になれること間違いなし。村上信五さんのゴーイングマイウェイ英会話が炸裂していたり、錦戸亮さんの大阪への愛が見えたり、安田章大さんのゆるりとした空気感に和んだりできる。
アイデアを出し合う中で、「天下の台所」を“Top of system kitchen”と訳した村上さんのセンスが最高に好きだ。天下の台所=なんかすごい感じの台所、でシステムキッチンを当てはめたのかと思うと、理屈はわかってしまうのがくやしくも愛おしい。
出来上がった歌詞に、自然な形で“kitchen”と入っているところに錦戸さんの優しさを感じる。
吉本新喜劇が上演されている劇場、「なんばグランド花月」が外せない錦戸さんの気持ちもよくわかる。関西の魅力とは?という問いにそれぞれが挙げるキーワードのなかで、特に安田さんの話す“大阪の良さ”のポイントは、まさにその通りと頷きたいことばかりだった。
“人と人との近すぎる心の距離、不器用すぎる愛情表現、言葉じゃなくてそっとただ側にいてくれる真心、ずかずか入り過ぎるも関西ならではのご愛嬌、ほっとけなくてどうしようもなくて。”
そのどれもが、実際に大阪に行ってみて体感した、大阪への思いに当てはまっていた。
関ジャニ∞はこれまでも大阪をテーマに歌う曲は多かったけれど、今の関ジャニ∞が自分たちで作る大阪ソングというのはなかった。
そして生み出された、「All you need is laugh」
この曲が、驚くほどラグジュアリーで、楽しく、遊び心に満ちている。ビルの明かりが光る都心のハイウェイを車で走りながら聴きたくなる。通天閣や食い倒れ人形などの印象でコッテコテになるのかと思いきや、あべのハルカスや大阪駅の開発で都会的になった大阪の多面性を感じられる曲になっている。
制作過程を見ていると二転三転、曲調にも変化があり、ここから一体どんな曲が?!と予想がつかない。曲だけ聴いても驚くけれど、制作過程込みでこの曲を初聴きするとびっくりさせられる。
Where would you like to go?
此の水の都は初めてですか?
大倉忠義さんの歌い出しで始まるこの曲。
いきなりハイトーンに飛ばす声が綺麗で、ジェントルマンに尋ねられる“此の水の都は初めてですか?”の言葉にギュンッと心を持ってかれる。大阪、と言葉にせずに、“水の都”としたところには粋な表現のゆとりを感じる。歌詞カードを見ると、“この”という言葉も“此の”と表記されていて、どこか古き良き風情が漂う。
“初めてですか?”と尋ねる言葉には、初めましての人にも何度も訪れている人にも優しく寄り添う柔らかさがあると思った。
関ジャニ∞にお出迎えされる大阪、行きたくならないはずがない。
2番に入ると、
Where would you like to go?
堀江でお茶しながら決めるのはどう?
と丸山隆平さんが甘いボイスで問いかける。
デートに行きませんか?と聞かれるシチュエーションよりも、この後どうする?と聞かれるシチュエーションの方がグッとくると、なぜバレているのか。しかも“堀江”という場所をセレクトしているあたりにセンスの良さまでうかがえる。
自分が個人的に、中崎町の次に気になっている場所が堀江だった。お洒落なお店がどんどんと増えていて、古着屋さんが多く、人で賑わっていると聞く。そこにお誘いされている。丸山さんに。と考えると、ロマンティックが止まらない。
NGK(なんばグランド花月)に何としてでも行きたいことが伝わる、結局NGKサンドイッチ状態の歌詞もすごくいい。関西の人が聴いたらツッコミどころはここだろうなと思って聴いたりする。
さらなる吉本新喜劇の要素として、川端座長の決めギャグ「カーッ」を持ってきたところにも、錦戸さんの吉本新喜劇への本気の愛が垣間見える。
そしてメロディーは弾む心に合わせるかのように、カッティングが心地いいギターの明るい音色。
安田さんの声とともに曲調が緩やかになって、その後さらにストリングスが奏でる雅な音色が加わり聞こえる
疲れた時はいつでもおいで
という大倉さんの声に、数値化できないマイナスイオンを感じる。
ここでの雰囲気づくりがすごいと思っていて、聴くたびに感動する。バイオリンなどの音色と共に、カメラがふわっと円を描いて近づく画の動きが見えるかのよう。そこに旅館の暖簾(のれん)をそっと上げて顔をのぞかせる大倉さん。そんなイメージ。おこしやすの姿勢で、“そうだ、京都、行こう”も顔負けなおもてなし。
その緩やかな流れから突然の、例のテーマのメロディーに合わせて
悲しみさえ 笑いに変え 君の元まで
あのクセの強い音並びに歌詞を当てる勇気とセンス。 しかもスーパーマンのごとくかっこいい。
この音に最適なのはこの言葉だった!と納得してしまうほどぴったりな語感。
例のテーマとは、吉本新喜劇のテーマ曲。決めのここで使うまでに、伏線のように忍ばせた吉本新喜劇のテーマをスクラッチさせた音が一度流れていて、サブリミナル効果がすごい。
笑ってしまうのに、かっこいい。これが関ジャニ∞の最高な魅力だと思う。この言葉があることで、旅に“来る”という“距離”をそれとなく表現することができて、移動距離さえひとっ飛びな頼もしさがある。
作詞の会議で、“All”という単語が出たところから、ビートルズのAll you need is loveを口ずさんだ錦戸さん。
「All you need is laughは?」という言葉をきっかけに、曲の幹となるテーマが決まった。
ビートルズを敬愛している錦戸さん。曲のなかで繰り返される“All you need is laugh”の語感も耳に心地よく、ファルセットな関ジャニ∞のハモりが思いがけない爽やかさになっている。
安田さんのフェイクが入ってからが、景色が一変して、一気に都会感を増す感覚があって、キラキラしていく。
県外の人たちが抱きやすい大阪のパブリックイメージにとらわれることなく、関西出身の関ジャニ∞だからこその自然体な大阪の雰囲気を伝えられていて、こういう大阪もあるよという観光紹介として理想的だと感じた。
定まったリズムで進んだ後に、錦戸さんと安田さんのフェイクボイス対決のようなパートがやってくるのがたまらない。
ベースの音もがっつりと聴こえるのが嬉しい。
曲の始めのうちは右耳に聴こえる音はエレキギターの音が強めで、左耳に聴こえる音はベースが強いように感じた。わずかな差のような気もするのだけど、そのわずかなところにさえ錦戸さんはこだわるだろうなと思うからこそ、聴き込むのが楽しくなる。
ベースラインとギターのユニゾンのような相性に、終盤で満を持して入ってくるサックスの音が最高にダンディーで、広がる景色は一気にゴールドのきらびやかな世界。フェードアウトで終わるのがさらにかっこよかった。
大阪に向かう新幹線で聴きたいプレイリストに、「大阪LOVER」「大阪ロマネスク」に続いて「All you need is laugh」がしっかりと仲間入りした。
この曲の魅力は簡単に言葉にできないと、聴き込むばかりを繰り返していたら、嬉しい発表があった。
関ジャニ∞は今年の冬、ユニバーサルスタジオジャパンでクリスマスアンバサダーを務めることになり、なんとこの「All you need is laugh」がジェットコースターの「ハリウッドドリームザライド」で選曲できる。期間は2018年11月7日〜2019年1月6日まで。
歌詞に“USJ”が出てくる曲を、USJで聴ける。“USJからのNGK”を現実にするチャンスが。
USJの思い出といえば、幼い頃に家族で最寄り駅までは来たものの、向かう途中の電車で唯一のお気に入りだったねずみのぬいぐるみを無くして、すぐそこまで来たというのにおじいちゃんとおばあちゃんが気乗りせず、とんぼ帰りという、今思えばあまりにもな思い出だけが残っている。
だからUSJに行ったことはまだ一度もない。
絶叫アトラクションに全く乗れないとしても、ハリウッドドリームザライドの躍動感を地上から見上げながら「All you need is laugh」を聴くというのも楽しそう。
様々な風が吹く大阪を感じながら、冬の近づく景色のなかを歩きたい。