沸き起こる手拍子、上がる歓声。-関ジャニ's エイターテインメント「ジャム」前編

 

1月の京セラドーム。

ダブルアンコールで村上信五さんが切り出した、「発表があります」という言葉。

 

「DVDが春に発売します!」

「アルバムが初夏に出ます!」

 

5大ドームツアーを夏にやります!」

 

終わってしまう寂しさで心細くなっていた時に聞いた、まさかの知らせに驚いた日からもう半年が経ち。アルバム「ジャム」が発売された。

そのアルバムの濃度は100%以上のもので、何度も繰り返し聴いた。ツアーが終わった今でも、発売当初のように新鮮に聴き続けている。

アルバムに入っている曲どれもが好きで、アルバムを出していなかった間のシングルはどれも思い入れのある曲だった。アルバムには「NOROSHI」も「侍唄」も「なぐりガキBEAT」も入っている。ライブのセットリストがどんなものになるのか、期待は最高潮だった。

 

そうして迎えたライブ当日。

関ジャニ’s エイターテインメント「ジャム」

耳も目も、全身で楽しい!!その言葉がすべてだった。初めてのパフォーマンスを目にする時のドキドキと、関ジャニ∞が目の前で観せているライブを全身で浴びる楽しさを思い出して、嬉しくてたまらなかった。

オープニング映像と共に自然と沸き起こる手拍子の波にテンションが高まり、会場全体がここへ全力で楽しみに来たぞという男前な空気で満ちていた。

 

オープニング映像は、フッとメンバーがカメラ目線を決めたところで名前が出て、その瞬間に歓声が上がるというテンポ感もすごくよかった。シンプルでありながら、メンバー1人1人の顔をしっかり認識していく流れがさらに高揚感を煽って、7人が揃った!という熱気を生み出していると思った。

中盤にくる「JAM LADY」でも、手拍子をしたくなるイントロがあって、今回のライブはリズムに体が乗れば自然と手拍子になって、それが1人2人ではなく、会場全体の空気として起こる一体感があった。

それが本当に楽しくて。1人で曲を聴いているのとは違う、広い会場で沢山の人と聴く楽しさがオープニングから最後まであった。

 

 

本編に入ると、予想もしていない思い切った構成にびっくりした。

前半がバンドセクション、後半がダンスセクション。

2つの構成にはっきりと別れていた。劇的な登場というより、ニュートラルな状態でステージに登場し、バンドセットの立ち位置にそれぞれ入っていく姿にグッときた。後半またバンドに移ったりするのかなと思っていたら、しっかりと切り替え、バンドとダンス、どちらかを行ったり来たりすることはなかった。2つのライブを観ているかのような感覚。

それなのに、あっという間だった。

ぶつぶつと途切れる感じはせず、エンディングで “え、もう?” と本気で思ったほど、集中が途切れなかった。

そしてアンコールはいつもの空気感と一味違い、ツアーTシャツで出てくる感じではなく、ファンへのサプライズを観せる第3セクションのような役割を果たしていて、メドレーで外周を回るような演出ではなかった。 

今までのありそうな流れでいくと、ダンスセクションが先でバンドが後でもおかしくないのかもしれないと思う。そこでバンドを前半にして、ダンスを後半に選んだ。バンドの姿でこれが関ジャニ∞ですと観せることもできたはずだけど、アイドルとして関ジャニ∞の魅力を思い切り炸裂させる後半をつくったところに、関ジャニ∞の誇りを感じ、胸が熱くなった。

 

バンド曲の始まりは「High Spirits

7人の音で作られた、インスト曲。あまりに圧倒的な丸山さんのベース演奏の姿に見惚れて、自分が何を聴いているのか理解するのに時間がかかった。そのまま雪崩れ込んだ「勝手に仕上がれ」に一気に会場のボルテージが上がり、3曲目の「宇宙に行ったライオン」を聴いてようやく何が起こっているのかを理解した。

メトロックだ…!!

そう気付いた時の感動。あまりの感動に息を深く吸い込むばかりで、声も出ない。

そりゃあ出来ることなら見たかった、目撃できるのであれば目撃したかった、そう思いながら、関ジャニ∞が挑戦すると決めたステージを今は待つことで見守っていられたらと考えていたあのステージを、今度はファンのいるドームで、ライブ「ジャム」版のセットリストとして組み直し、見せてくれている。

大きく鳴り響くトランペットの音を聴きながら、こんな夢のようなことが起きるのかと思った。

思い返せば、「侍唄」の前に錦戸亮さんが少し話しをするという流れまで同じになっていた。実際にフェスの場にいるのは怖くてできないかもしれないけど、もし自分があの場にいたら、自分はどんなふうに楽しむのかなと想像するばかりだった空間が、今目の前に広がっていて、ドーム全体がガンガンに盛り上がっているのを体感した喜び。「象」をまた聴けるなんて、思っていなかった。

 

 

開演5分前の注意事項アナウンスのアニメが流れた時、「いつもうちわの応援ありがとう!でも今回は少しうちわを置いて、拳を上げてくれないか」という内容のアナウンスがあった。意外なアナウンスだなと思ったけど、それもそうだなと手にはペンライトだけを持ち、開演を持った。

セットリストが明らかになっていくうちに、その意味がこういうことだったのかとわかり、粋なアナウンスでうちわを持つのに適したタイミングと楽しみ方をエスコートする、その思い切った潔さとがっかりさせないための配慮に感動した。

前回のツアーで終盤に組まれていたバンドセクションを観ていた時、もはや何かを手に持っているのがじれったくなって、たこ焼きペンライトさえ置いて、拳だけでいたあの楽しさ。関ジャニ∞の曲は身一つあればそれだけで楽しかった。身軽でいると、こんなに自分を解放できるのかと体感したあの時の感覚が、今回の演出でそのまま蘇ってくるようだった。

 

セットリストのなかで、バラードやスローテンポな曲をゆっくりと聴かせる時間を避けなくなったというところも物凄く嬉しかった。

「侍唄」や「奇跡の人」「青春のすべて」など、ポイントで呼吸を整えるタイミングがあり、それでも空気の熱が冷めたりすることはなく、要所要所でしっかりと聴き込めるところがあることで構成の厚みと満足感が増した。

「侍唄」の後に「夢への帰り道」を置いた曲順は特に、今までならしなかったのではないかと思った。ゆったりめな曲ということで数えると、今回のセットリストで5曲ほどはあると思うから、やっぱりその多さに驚く。

アップテンポな曲で盛り上がりをつくることも大切だけど、バラードでさらに深いところまで引き込む力を関ジャニ∞は持っているし、バンド演奏というものに触れて音楽を楽しむ感覚を肌で知った会場全体の空気なら、関ジャニ∞が音楽を楽しんでいるだけでボルテージは自然と上がっていくのだと実感できた。

そうしてお互いの信頼関係を築けたからこそ、実現したことなのかなと思う。それは前回のスカバンドコーナーでの反応も自信の一つになっているのかもしれない。

あれだけバンド曲を演奏して、尚且つアルバム曲を一つも落とさず全曲披露したのも凄いことだと感じた。

 

「元気が出るLIVE!!」で良いなと感じていた、上からカメラが今回もまた大活躍だった。大倉さんのドラムセットを上から映すとなぜあんなにもエモーショナルなのか、後ろに隠れてしまいがちなドラムの存在感を放ち、普段見ることのできないパーソナルスペースを覗き見させてもらっているようなドキドキがある。

キーボードの村上さんの動きも見ることができて、バンドとして動きのある演出になっていると感じた。だから、前半丸ごとがバンドだったとしても、常に変化があり新鮮で、ステージを縦横無尽に動き回っているかのような立体感を感じることができた。

そして「Answer」での3人を上から映す構図、「今」で円になって手を重ねるところを上から映してみんなでちらっと見上げる演出、どれも素晴らしかった。

「Sorry Sorry love」での、後ろの方にあるカメラから思い切り引きで映してから、サビの音に合わせてバァン!とズームアップするカメラの寄り方が最高で、2度ほどあったその映し方がくるたびにスクリーンを見て、フウー!という気持ちだった。

 

2回観ることができた今回のライブで、そのうち1度は天井の一番後ろの席だった。

ホントのホントの最後尾。圧巻な傾斜角に多少、身の危険を感じながら、でもここまでくるともう楽しいな!とスイッチが入り、後ろに人のいない開放感と、全てが見渡せるこの景色を思い切り楽しむことに専念した。

メインステージの動きが、上から見ていると生き物のように予測不可能で面白くて、それを終始目で追いかけていた。床だったと思えば壁になり、段になっている部分も全てスクリーンになっていて、両サイドにあるスクリーンと繋がるように映像が流れていく。せり上がったりボックスになったりも自由自在で、そのおかげでドラムの大倉忠義さんもキーボードの村上信五さんもトランペットとパーカッションの横山裕さんも上段に配置されて見やすくなった。

「S.E.V.E.N 転び E.I.G.H.T 起き」でのスクリーン映像が特に好きで、赤や青、オレンジの色合いがアメリカンコミック風でカラフルなのが可愛くて、途中の“1.2.1.2”の部分の出かたも良かった。

“S.E.V.E.N 転び E.I.G.H.T 起き”の音数に合わせて、白で描かれた線がクシャクシャクシャっと絡まって消えるところもまさにステージが音楽に合わせて生きているみたいで好きだった。

海になって波に乗ったり、四季の移り変わりを感じられたりと大活躍のスクリーン。「Answer」では、幾何学模様や赤と紫と白の3色がブロックのように動いたりして、ステージに奥行きがあるみたいに目の錯覚が起きて、あれ?ステージに立っているんだよね?と確認したくなるほどだった。

 

メインスクリーンの他に、縦長のスクリーンが左右に、そしてさらにサイドに中くらいのスクリーンがあった。この中くらいのスクリーンがとてもよくて、メインで柱にかぶり見切れてしまう画面があってもサイドのスクリーンで視界を補うことができた。

さらに今回は音響のPAブースがいつもの形態と違う気がした。イメージはアリーナの後方中央に横長の形で配置されている記憶だったけど、今回上から見てみると中央に大きくは無く、少し中央からずれて一つ、そしてスピーカーの柱の下辺りに右と左に分かれているように見えた。もしかすると左側は映像担当かもしれない。

いつもの位置でないことは音響さんにとっては簡単でないかもしれないけど、その努力によって中央のアリーナ席数が増えているとしたらすごい試みだと思った。