関ジャニ∞が魅せるオールディーズファンク「DO NA I」

 

余裕のあるキザさ、主役は俺だと張り合うミュージカルのようなストーリー性。

ありとあらゆるツボを押さえられて、関ジャニ∞のアルバム「ジャム」のなかでダントツに好みなのが

蔦谷好位置さん作曲、いしわたり淳治さん作詞の

DO NA I」[どない]

 

曲のタイトルを聞いた時は、タイトルは…どない…?これは一体どんな曲になるんだろうと楽しみ半分、ドキドキ半分だった。タイトルからして、関西弁コテコテ曲になるのではと思ったりもした。

 

ラジオで聴いた初解禁。なんだこのコントラストの強さは…!という衝撃。

MVを見たっけ?と思うくらいに、歌っている景色が見えた。

次から次に入れ替わるリードボーカル。メンバーのこんな歌声聴いたことない!という驚きの連続で、こんなにグルーヴ感のある、ダンディーさと色気のある声をそれぞれが持っていたんだと思った。

色が視覚的に見えるようで、この声は横山裕さん、この声は大倉忠義さん、と顔がはっきり思い浮かぶ。バッバッっと主役が入れ替わっていくような動きさえも、音で表現されていた。

聴いていて思い浮かんだイメージは、観客である“自分”を主軸のカメラに位置付けるなら、ダンスフロアで関ジャニ∞にぐるーっと囲まれ、長回しのカメラワークでそれぞれのアピールを見せつけられているような。そんな感覚。

 

関ジャムで見せてくれた制作過程は本当に興味深かった。

「DO NA I」を作る際のイメージが『 ’80s 』そして映画「SING」のエンディング曲になっていて、アリアナ・グランデスティービー・ワンダーがコラボした「Faith」のような曲にできたらと蔦谷好位置さんご本人が考えていたと聞けたことが凄く嬉しかった。

映画「SING」は2度観に行って、大好きな映画だった。映画館に行ってエンドロールを見ていて初めて、音楽監修に蔦谷好位置さんが携わっていたこと、日本語歌詞にいしわたり淳治さんが携わっていたことを知って、関ジャムで見たお二人じゃないか!と感動していたこともあり、今回、関ジャニ∞への楽曲提供があると知った時も、飛び上がるほど嬉しかった。

そうして聴いた初解禁の日、「DO NA I」を聴いて真っ先に思い浮かんだのは、「Faith」みたいだ!という感覚だった。

そういう曲を、関ジャニ∞が歌ったとしたら…と蔦谷好位置さんがイメージしてくれたなんて、こんな夢の組み合わせはない。関ジャニ∞に、このような曲調をプレゼントしてくれるのは、‪関ジャム‬で関ジャニ∞をそばで見てきた蔦谷好位置さんだからこそだと思った。

あの映画館で聴いて、リズムに乗らずにいられなかった洋楽のムードを引き継いで、それを関ジャニ∞が歌っている…!

あの時に感じた感覚が間違っていなかったということを、関ジャムで知ったことも嬉しかった。ラッツアンドスターっぽさもあると感じたから、今回はダンス曲というオーダーだったけれど、スタンドマイクに白手袋の衣装もいいな…なんて思ったりした。

 

ベース音から入って、しばらくリズム隊だけで曲を支える。

そこにメンバーの声が入ってきて、まるで楽器のように主旋律を奏でていくのが格好良くて。声が、何よりの楽器になっていた。

曲を通して刻まれるベースのビート音と、決め所でバッっと音が止まってボーカルが目立つメリハリ。声と音の息の合い方が面白いくらいぴったりだった。気にかかるズレが1つもなくて、耳心地がいいというのはこのことだな…!と思うくらい、感覚が狂いかけたら耳のヒーリングに聴きたくなる曲。

あまりに曲のクオリティがボーカルにかかっているので、自分はカラオケでは決して再現できないなと早々に諦めた。

日本の曲のように起承転結がある構成と違い、決まった基本のリズムと繰り返されるリフは、少し違えば単調で退屈に聴こえそうなものだけど、くるくると表情の変わるメンバーの歌声と、シンプルな中にある癖になるリズム感が、心を掴んで離してくれない。

最後まで連れて行かれて、気がつくと1曲が終わってしまう。あ、もう終わっちゃった…と思い再度リピート。この繰り返し。そのうち自分のiPod再生ランキングで1位になるんじゃないかと思う。

 

詞がつく前の仮歌の時点で既にイメージが見えてグルーヴ感が伝わるのは、蔦谷好位置さんが敢えてデタラメ英語で仮歌を入れているからこそなのだなと実感した。確かに関ジャムで話されていた通り、らららでは、この曲のがなりみたいなものが上手く伝えられないなと思った。

蔦谷好位置さんから関ジャニ∞へ宛てたメールには、ボーカルのキーのことまで細かく説明してあって、“シャウトをしてほしい”というオーダーも書かれていた。

この“シャウト”こそ、「DO NA I」に自分がグッときているポイントで、ここでその意図が関ジャニ∞へと伝えられていたんだと感動した。さらに、いしわたり淳治さん宛てのメールには、“ハイトーンにいく部分の母音はシャウトしやすい音を意識してください”と書かれていて、楽曲制作の際にそこまでこだわり、音をとことんまで考えているということを知り、驚いた。

盛り上がりを作りたいという関ジャニ∞側からのオーダーには、“オケというよりは歌で盛り上げたい”と蔦谷好位置さんは答えていて、その意図が存分に完成した曲に表れていると感じた。

オケの音も重厚感があって魅力だけど、何よりこの曲の魅力は、メンバーそれぞれの声にある。

 

格好いい渋さのある流れからきて、音程がちょっと落ち着くところで、

イイトコなしの Everyday

という歌詞がくるところが、最高にいい。 

格好よく余裕たっぷりな感じなのに、“いいとこなし”という要素が歌詞に入るところに、らしさを感じる。新しい関ジャニ∞の一面も、今まで通りの一面も伝わる安心感がある。

でも「DO NA I」は、これまでの曲で見ていた情けなさが可愛らしい主人公のイメージとは違い、やっぱり一段上を歩く大人の男性の印象。

助け出すぜ かならず

という歌詞を歌う錦戸亮さんは最強に信頼できるスーパーマンで。錦戸さんの少しかすれたスモーキーな声が、「DO NA I」の’80sな洋楽の雰囲気にしっくりきていて相性が完璧だと感じた。

この部分と「惚れさしたるぜ」の部分は語尾が標準語になっていて、標準語と関西弁が行ったり来たり混ざり合っているのに、それが自然に聴こえて、くすぐったさは無いように思う。どちらともの良いとこ取りで、そのさじ加減はいしわたり淳治さん流石の言葉選びと組み立てだと思った。

 

長い月から金の出口のない

その迷宮 Take You! 迷宮 Take You!

と歌うのも、一週間をテーマにした曲は数多くあるけれど、短い言葉で、さらっと言い表した素敵な詞だと感動した。月と金だけをピックアップすることで、間の毎日の途方も無い長さを一層感じて、“出口のない”という一言で、もがく日頃のうっぷんを表現していて、本当にすごいと思った。

歌詞の中で出てくる、“ウィークエンド”という言い回しも好きで、週末と言うと、なんだか落ち着いた感じがするのに、ウィークエンドと言うだけで明るい気分になる不思議があって、この単語が気に入っている。

 

「イイトコなしの Everyday」で『E』を印象付けた後に、「A to ZのEverything」とくる英単語の遊び心も歌詞カードを見るとさらに感じることができて、いしわたり淳治さんの作詞は聴いても見ても楽しい。

村上信五さんのラップパートで「スベればスベったで Tasty」という言い回しがあるのも格好よくて、ニュアンスとしては“それも味でしょ?”とか“味わい深い”という意味合いになるのかなと思うけれど、そんなセンスの良い言い方ありますか…と憧れのため息が出る。

村上さんの持つパブリックイメージも見せつつ、実は

振られりゃヨゴレも演じる全部 Entertain You

なんだから、ぐうの音も出ない。あなたのためにエンターテイメントを、なんて言われたら、惚れ続けるだろうと思う。ある意味、皮肉交じりなところも洒落ていて素敵。

ラップに入る前に、メンバーが思い思いに言葉をかけているのだけど、何度聴いても丸山隆平さんだけ「あばばば」と言語化できないエールの送り方をしているのが最高に面白い。一緒に言いたくなる「(Oh Yeah)」の合いの手も、ライブでどんな盛り上がりを見せるんだろうと今から楽しみで仕方ない。

 

「ほらいい顔してる」の歌詞のところや、安田さんの高音ハーモニーのところで伸ばしている音が次の音に潰されずにしっかりと聴こえるところが凄く良かった。音葉の語尾を、機械的にフェードアウトさせたり、バツッっと切ったりせずに、最後まで声が聴こえて綺麗だった。

大サビの「DO NA I…」のところでは、3回目から高音のハモりに錦戸さんが入って、その一つ後、4回目から安田さんが加わってボーカルに厚みが増す演出が素晴らしいと感じた。

 

大倉さんの低音ボイスが大活躍している曲が好きで、「ナイナイアイラブユー」や「罪と夏」など、低音がなくては成立しない曲が好きだった。なので「DO NA I」での大倉さんの素晴らしい低音は何度聴いてもいいなあと聴き惚れてしまって、さらに横山さんとの声のハーモニーが良く、曲の始まりから堪らない。

主旋律の後ろに被せるコーラスも、“パッシュバッ”という一見古く感じそうなコーラスでも、今の曲として格好よさを保って成立している凄さを感じた。

「DO NA I」では、渋谷すばるさんが高音を張るというより、低めの自然なトーンで歌っているのも新鮮で、そこに「惚れさしたるぜ かならず」の“ず”で、上がる音程が聴こえて、これだ…!とテンションが上がる。

 

そして今回の「DO NA I」で大好きなのは丸山さんのボーカル。

ラジオから聴こえてきた時の衝撃は今でも忘れない。優しい声色の印象を感じることが多かったこれまでを全く一新するような、がなりの効いたシャウトがかなりのギャップで、丸山さんのこんな歌い方聴きたかった!とトキメキが止まらなかった。「イッツマイソウル」での丸山さんパートが好きな方ならこれは堪らないはず。

丸山さんは『ん』の音でがなることのプロだと思っていて、無音になりそうな『ん』の音でさえ情感を乗せて聴かせる魅力がある。

だめだ Pretty girl いいボケが浮かばない

のところでも“だめだ”の前にがなりが入って、“浮かばない”の『ば』と『な』の間に、『ん』が入る。

“月から金の 出口のない”でも、『ん』が入る。丸山さんの、このがなりスイッチがオンになった時の音の取り方が凄く好きで、この音に当たると気持ちが良いという勘が鋭いのだろうと思う。

欲しいところにパンチが決まるドラムみたいに、決め所が完璧な丸山さんのボーカル。とにかく、この曲の丸山さんの歌い方と声に終始心を掴まれた。

 

ダンスも、膝を上げながら後ろに下がる振り付けや、“助け出すぜ”のところで手のひらをスライドさせる動きが、ダサくはならずに昔ながらの良さと今のポップさとが融合していて良かった。

さらに、“やばい Pretty girl”のところで安田さんは前を向いて、ほかのメンバーは背中を向けてグッとグーサインを右上に挙げるのが、堪らないダンディーさ。

そしてラストの、誰が前に来るのか分からない変則的な動きから、いつのまにかバッっと安田さんがセンターに!という振り移動がグッとくる。決まっている安田さんのドヤ顔が最高だった。

 

『格好つける』という意味合いの幅が、ここにきての関ジャニ∞だからこそ、どんどん広くなっているように感じる。

徹底的にキメキメでいく良さも勿論あるけど、私は今の関ジャニ∞が魅せる、すこし肩の力を抜いた遊びの部分を持ちながらの格好よさがとても素敵だと思う。

若さから溢れる『格好いい』とも違った、今の年齢だからこその色気を見せつけた最高にファンクな一曲「DO NA I」が関ジャニ∞のラインナップに増えたことが、とても嬉しい。