関西弁×英語のタッグで感じた錦戸亮さんのセンス「Tokyoholic」

 

ライブの流れのなか、ゲリラ的な空気で始まった「Tokyoholic」のインパクト。

関ジャニ∞が揃って演奏したインストの状態でのセッションを「NOROSHI」初回盤の特典映像で見た時の高揚感。あのメロディーはオープニングやバンドスタートの区切りに演奏するものになるのかと思っていたら。まさかの歌詞がついた。錦戸亮さんの作詞で、関西弁と英語で歌詞を組み立てる独創的なセンス。ゴリゴリのバンドで、攻めに攻めた歌詞を歌うけど、それが関西弁であることで言葉として耳にキツくこない。

しかしそのなかで、「I don't like you Tokyo!!」を東京で叫んだ!という衝撃は凄かった。言ってしまったー!と勝手にハラハラした。I don't likeにyouもTokyoもどちらも入れたのは、“あなたも東京も”なのか“象徴としての東京”なのか。様々な意味で取れるのかなと考えたりした。外へ向けて放っているのに、東京にいる“自ら”も含まれている感じがおもしろい。

 

「I don't like you Tokyo!!」

から

「I don't like you...」

と少しごもって、最後の最後に

I can't hate you Tokyo!!

と繋ぐのが、徹底された遊び心だなと聴いていてどうしようもなく楽しくなった。

【好きじゃない】という意味の「Don't like」よりも「hate」はキツい意味になる。どちらかと言うと品のない単語なので普段気軽に使ってはダメ。でもそれを「I can't 」で繋ぐから意味がある。それだけ強い言葉を使おうとするのに、それでも嫌いになりきれない東京。

 

音源が収録されているのは「なぐりガキBEAT」の通常盤なのだけど、音に注意して曲を聴いて初めて気づいたこともあった。

始まりの音がタンバリンをシャラッと渋谷すばるさんが手に取る音からになっていること、終わりの音もタンバリンを置く音で曲が止むこと。楽器の始まりはベースなんだとライブでは認識していたから、音源バージョンは音源バージョンにある魅力とこだわりを感じた。静かなステージにバンドが揃い、ステージに歩いてきた渋谷すばるさんがタンバリンを手に取るのが始まりの合図のようなイメージ。ライブでは手にサポーターをはめて、あの休みないスピードで最後までリズムを刻む姿が印象に残った。全力で弾く姿はタンバリンであっても格好よく見せることができると知った。

そしてメロディーの溜めと、なだれ込みの巧みさ。丸山隆平さんと大倉忠義さんのパートでリズムをゆるやかにしてからの大サビに入る見せ方。

歌詞の所ではベースがメインになって少し楽器が後ろに下がってから、歌詞の間にバッと前に出てくる、波のような押しては返しての強弱も注目するところが理解しやすい流れになっている。

「Tokyo‼︎」で聴こえる、村上信五さんの声で投げつけるようにやけっぱちな感じが曲に凄く合っていたり、サビでハモりではなくユニゾン錦戸亮さんと渋谷すばるさんの声が重なった時の、向かう所敵なしな疾走感。

錦戸亮さんの声は特に、しゃがれた感じで歌われると最高に渋い。

 

歌詞カードを見ると曲への面白みも増した。

2番の歌い出しは1番と同じフレーズなのだけど、歌詞カードには2番だけカタカナ表記で書いてある。「everyday」も「エビデイ」と発音寄りの書き方になっていて、これも錦戸さんのさりげない遊び心なのかなと思うと、いたずらっぽく笑う錦戸さんの表情が思い浮かべられる気がした。

 

歌詞に出てくる英文を、曖昧なままではなく意味をちゃんと知りたくなって分析をしていたら、洋画やドラマの会話の中ではなんとなしに聞き覚えのあった言葉だけれど、意味を気にしたことがない単語がいくつか出てきて調べているうちに楽しくなってしまった。せっかく錦戸さんが英語だから出来る表現をしているのに日本語に訳してしまうのは野暮なことのようにも思えたけど、あくまで個人の推測ということで今回は書きたい。

 

歌い出しにくる「I'm so damn hungry...」はそのまま訳すと【とても空腹】

でもおそらく、お腹が空いたという意味にするだけなら「damn」は無くても文になる気がするのだけど、色々な意味合いのある「damn」という単語を使うこと。そして歌のなかでの語感を大事にしたことにきっと意図があるのだろうと思う。

 

その次にくる英文が、調べていてとても興味深かった。

Why are you so mean to me?

so mean”は、【意地の悪い、たちの悪い、きたない、卑劣】という意味を持つらしい。

調べてみるまでは、「mean」は【意味】という意味で使われる言葉だと思っていた。文法の運びや強調の“so”が前に付くことで、そういう意味にもなるのだと初めて知って、勉強になった。

「Why」は【どうして】、「to me」は【私に(俺に)】ということだから、《なんで俺にそんな意地の悪いことすんの?》というイメージかなと思う。この曲の場合、訳しも関西弁のイメージ。

 

サビ前で立て続けにくる英文、

How far did I run?
Don't know where to go!
Hey!wait!
Here we go then!

にそれぞれある基本的な意味としては、

《どれぐらい遠くまで俺は走った?》

《どこへ行くかなんて分からない!》

「Hey!wait!」はそのままの意味として

《行くぞ》

という意味になるかなと思う。思うけど、せっかくセンス良くしてるのに訳してしまうのはやっぱり罪悪感がすごい。そんなダサくないわとおこられそうだけど、すみません意味を知っておきかったんです…

先ほどそのままの意味と書いた「Hey!wait!」の部分。ここまでの強気な歌の姿勢からしたら、文法に習わず「wait」の頭文字も大文字にして“Wait!”で声を荒げているニュアンスを出しても不思議ではないかなと思ったけれど、「Hey!」は頭文字が大文字なのに「wait!」で小文字になるところがなんだか《おい!》と強気に出てみたものの《待てよ!》と声がちょっと小さくなってしまった気の強い子犬みたいで、ちょっと可愛いのでは…!と思ってしまった。

 

 「Tokyoholic」はやはり関西弁と英語の振り分けのさじ加減が秀逸で。

I'm so damn hungry...

からまだまだ足りないという心境が伝わり、さらに関西弁で

満たされへんままただ消化してく everyday

と続くことで、ただお腹が空いているという文字通りの意味合いではなく思う事があるということが理解できる。

 

 

ライブで実際に聴いた時の

そんな上から見んなやこっちも必死なんじゃ

の強烈さ。関西弁でないとこのニュアンスは出ない。ライブでこの歌詞を錦戸さんが歌うたび、ワーッ!!と上がる歓声とドーム全体の空気が熱を帯びていく感覚は経験したことのないもので、お客さんに女性が多いコンサート会場とは異質のライブハウスのような熱量だった。

渋谷すばるさんのソロでのライブはライブハウスでも公演があって、いつか経験してみたいと思っていたなかで、今回のこの空気感はそれをすこし体感できたような気がして嬉しかった。

ライブセットリストの、バンド演奏をしている映像を挟んで、映像で見せて煽ってからの「Tokyoholic」→「象」→「NOROSHI」の流れが最高に楽しかった。

音楽に乗るって、ど、どうしたらいい…?と戸惑い続けてきた自分でさえ、ペンライトを持っているのもじれったくなって、置いた。拳ひとつで足りた。

 

自分はネイティヴでもなんでもないけれど、だからこそ英語に興味がある。「Tokyoholic」を聴いて歌詞カードを読んだ感想は、単純な使いやすい英語というよりもスラングを積極的に取り入れた英語使いの詞になっていて、それは普段から英語に関心を持っている錦戸さんならではの言葉選びだなと感じた。

教科書で習う単調な言い回しではなくて、楽しんでいる空気が伝わってくる。錦戸さんだからこの言葉にしたのだろうなという色が出ていて独特。

そんな魅力を炸裂させたのが今回の、作曲・編曲・作詞 錦戸亮 「Tokyoholic」なのだと思う。