読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

鋭く儚い「Black of night」

 

切ない。普段使っている意味とは違う意味で切ない。

見ていてキュンとなる切なさではなくて、胸をぐっと締めつけられるような苦しさがあった。

 

安田章大さんプロデュース、作詞作曲をして、映像も衣装も監督や担当の方と話し合い作られた今回の作品。

新たな振り付け師の方を安田さんが見つけ、オファーをすることが決まったということで、これまでの関ジャニ∞ダンスとはまた違う雰囲気。

安田さん作詞作曲というと、「TOP POP」のような明るく拓けたイメージがあったけれど、今回のテーマは安田さんのさらなる一面を垣間見た気がした。オープンにこれまで出してきた安田さんというより、ジャニーズウェブの連載などで時折見せる部分が前に出ているような印象。人の感情の深い奥の方を掘り起こす、感情を内に内に向けた曲だと思った。

 

歌う関ジャニ∞の表情に笑顔はなくて、終始ミステリアスでシリアス。思いつめたようなそれぞれの表情に、目が離せなくなってしまう。

ダンスの振り付けで、目の前に立ちはだかるガラスを右手で押さえ、左手の拳でガンッと割る振り付けと、“暗闇のラビリンス”での、はらはらと揺れ落ちるような手の動きが気持ちの裏腹さを表現しているようで好きだ。

さらにこの曲は、手を伸ばす振り付けが印象に残る曲だと思っていて、曲の中の主人公が抜け出したい、現状からのもがきを表しているのかなと思う。

頬に色がつくのを苦しげに立ち尽くしているのは、自分の望んだ色ではないからだろうか。

どれも、思いきり個人的な解釈になってしまうけど、感じることが多すぎてすこし戸惑うほど、色んな感覚が渦巻いた。

 

曲と歌詞だけを聴いていると男女の曲のようにも思うのに、MVを合わせるといろんな意味が混ざりだして、本当に多種多様な受け取り方ができる。まさにCDジャケット写真の、色のついた煙のように、形ないものに翻弄されていく感覚。

美しく、苦しく、儚い。その波の揺らめきに酔ってしまいそうだった。

 

狭いガラスの壁に閉じ込められるのも、様々なことを象徴している気がして胸がギューっとなった。

ガラスの壁の中、背中合わせなのは自分の背中で、つまりは自分の正面に映るのも自分の顔なのだと思う。

セットの作りが、後ろは何枚もの鏡になっていることがメイキングを見ると分かる。このセットの使い方が上手だなと思ったのは、錦戸さんだった。前後狭い空間の中で、窮屈さや葛藤を表すのは難しいと思うけれど、メイキング映像にあった、両手を柱部分の黒いところに置き、片脚を曲げて壁に寄り掛かかるポーズが美しかった。そのポーズひとつで、“出られない”という無力さが伝わってくると思った。実際に使われていたカットは上半身のみだったけど、錦戸さんはその曲ごとに役に入るように演じていて、身にまとう空気が変わり、ストーリーがつくところがすごい。

 

メンバーが着ている衣装の白いシャツが袖長めにされているのも、心細い心境を表しているように見えて、儚さを際立たせていると思った。

メイキングでリップシンクを撮る時に、丸山隆平さんだけが歌いながら微笑みを見せたことが印象的だった。それもただ微笑んでいるのではなくて、怪しげで何かを見透かすような笑みだった。丸山さんの曲の解釈を少し知られた気がして、感慨深かった。

 

曲を聴いていて耳に残るのは、呼吸音と心臓が脈打つ音。聞こえる呼吸は、吐き出すというよりも何かを言おうとして息を吸い込む音のように聞こえて、はっきり聞き分けることはできないけど、一人ではなく男女それぞれの呼吸音に聞こえる。

そしてガラスの割れる音も耳に残る。けれど、ガラスの割れる音はその場から抜け出すことができた解放を表す音ではなくて、割れた後も歌詞では“暗闇のラビリンス”と歌ったままだった。

最後のシーンで空が割れて光が射す瞬間、表情は明るくなるのかと思いきや、頭を下げ顔を背ける7人。その様子は、喜びや希望に満ちているようには見えなかった。

この曲がハッピーエンドになるのか、希望は残るのか分からないけど、様々な想像ができる不思議な魅力を持つ曲だと思った。

 

“いつからか この世界迷い込んだ”

部分の語尾だけでなく、途中に裏声になりすぐに戻る裏声の入り方や、

“腕の中で微笑む姿”

というところ、“腕の中で”の音程の波の作り方。

“笑う君はまるで悪魔だ”

“雨の中で泣いてる君はまるで少女だ”

“悪魔だ”という単語や、“少女だ”という部分の、タタタタタンっと言葉が並ぶ語感は安田さんらしくて、悪魔と少女を並べて使うことにも個性が出ていると思った。

タイトルになっている“Black of night”の入り方がまた絶妙で、前拍子に被せるように前の歌詞の語尾に追いかけて「Black of night」と入るのが、聴き手に息つぎをさせない感じがいい。

歌詞に使われている単語は、“罪”や“影”など暗いイメージのものが多いのに、曲全体の空気はどこか透明感がある。

曲の随所に、安田さん要素が存分に発揮されていて、それを歌うメンバーを見られることが楽しい。それについて行く渋谷さんのボーカルもすごい。サビにきて、ガッと前に出て音の色を強める大倉さんの低音も重要なアクセントになっていて、この曲の空気感を作るのに欠かすことのできない声だと感じた。

 

曲全体を聴いて、ここが好きだと思ったのは

「儚く消えてしまいそうで」という歌詞。

メロディーも音程の上がり方も、裏声に入る声の流れが、ガラスのように透き通っていて美しい。

 

 

明日、12月7日に発売のシングル「NOROSHI」

初回盤Aには「NOROSHI」のMVとメイキング、そしてレコーディングドキュメンタリーが収録されている。こちらのドキュメンタリーも良くて、書きたいことがいくつもある。

そしてこの「Black of night」のMVは、「NOROSHI」の初回盤Bに。

カップリング曲が揃うのは通常盤なので、どれもおすすめしたい。