初めての一人旅。in 大阪・京都



一人旅をしてみたかった。
ひとりきりでどこまで行けるのか。新幹線、ホテルのチェックイン、何も知らない場所での電車移動を経験して、右も左も分からない状況に自分を放り込んでみたかった。


何の理由も無くでは心許ないので、ライブが当たったらそれを支えにチャレンジしてみようと、去年の春から決めていた。
一度目は当たらず断念。二度目の挑戦でチケットを当てることができた。どこの宿がいいのか、新幹線のチケットは何時どこで取ればいいのかも知らなかった私は、周りに大阪へ行くことを話しまくり情報やアドバイスを収集することにした。
運よく身近に滋賀出身の人がいた為、大阪でおすすめのお店、近付かない方がいい所、駅と駅の間隔などを聞き込んで、必要最低限の情報は頭に入れることができた。

しかしここで、ある程度の情報を仕入れることが出来たからか、謎の“行ったらどうにかなるだろうスイッチ”が入り、雑誌を二冊ほど買って読んでからは特にスケジュールを組むこともなく、大阪旅当日を迎えた。


お店の開店時間など考えずに、安くで早くに着くならと、笑うほど早い時間で取った、早朝の新幹線のチケット。慣れない早起きをして、慣れない新幹線のホームに向かい、朝ごはんに食べるだろうと梅のおにぎりを一つとお茶を買った。いつもなら二つは食べられるおにぎりも、緊張から食欲は湧かず、一つ。初めてまじまじと見る待合室さえ面白くて、カフェスペースにあるメニューを眺めて、すこしリラックスしようとロイヤルミルクティーも買った。
間違えてはいけないと、チケットとホームの電光掲示板を何度も交互に確認して、新幹線を待った。

席に座って、テーブルを出し、窓の外を見る。一人で新幹線に乗るのも新幹線自体に乗るのも、何十年ぶりだった。出発した新幹線から見える景色がとにかく目新しくて楽しくて、イヤホンから好きな音楽を流しながらずっと見ていた。乗っている間、おにぎりを食べるタイミングがなくなりそうになるほど、ずっと外を見ていた。飽きない。
個人的に、新幹線で聴くと最高だったのは「TOKIO/AMBITIONS JAPAN」「レキシ/妹子なぅ」電車の中でのBGMセレクトをするのが好きな私は、座り心地のいいイスで長時間その遊びを出来るというのは素晴らしいご褒美だった。

おにぎりは食べて、ぽけーっと景色を眺めているうちに、富士山はシャーッと通り過ぎ、新大阪へ着いた。ホームの看板を見上げる。“新大阪”。
ほんもの。と思った。でも本当に自分が大阪へ来たのか、ここは遠くなのか実感が湧かなかった。
あ、でも。こっちに来たらエスカレーターは右側に立つことは事前に知っていて、忘れちゃいけないと心に刻み、エスカレーターがあるたび「OK OK…」と思いながら乗った。


まずここに居ては何もないことを早々に察し、ロッカーを見つけて少ない手荷物をしまい込んで、とりあえず大阪駅を目指すことにした。そこから3時間近く、大阪の街を歩きまわることになる。計画性のなさがここで仇になった。土地勘がないからどこへ行ったらいいかが分からない。でもまあ歩いていればなんかあるだろうと、ひたすら歩いた。ふと見上げたらグリコがあった。あっ、これだ。と思いながら大阪へ来た証に写真を撮ったのだけど、相当緊張していたようで、その看板のすぐ横にあるサタデープラスの丸ちゃん看板を撮りそこねた。撮ったグリコの写真を見ると、見事に丸ちゃんのところが光で反射している。

たこ焼きと串カツは食べる。と決めていたのに、勇気が出なかった。普段一人でお店に入ることに躊躇いはない自分ならいけるだろうと思っていたのに、何度も、たこ焼き屋さんと串カツ屋さんを通り過ぎた。心細いってこういうことだなーなんて思いながら、結局大阪に着いて最初にありつけた食事はサンマルクのフレンチトーストとオレンジジュースだった。どこでも食べられる(笑)となんかもう面白くなりながら、美味しく食べた。ちょっと泣きそうだったけど。


そんなで速攻ホームシック。でも外の景色は、どうしても来たかった大阪の街なわけで。気を強く持とうと思った。
その日に関ジャニ∞のライブに行く人とは思えないほど、心がポッキリ折れテンションは下がり。限界がきたところで、着いたら合流しようと言ってくれていたお友達との待ち合わせ時間が近づいていた。先に自分の宿のチェックインを済ませようとナビを頼りに宿へ向かった。想像した以上に素朴でこじんまりした宿に、“ここ泊まるのか…”と不安が募る。ドキドキしながらチェックインを済ませて、部屋のある階へ古めのエレベーターで上がると清掃のおばちゃまがいて、鍵をうまく開けられない自分を見つけて助けてくれた。親切にドアを開けてくれて、「大丈夫ですか?」と言ってもらった一言が、大阪に来て初めてのコミュニケーションで、初めて聞いた関西弁。それだけで嬉しかった。

宿選びの失敗も、そのうち良い思い出になるだろうと気持ちを入れ替えて、ライブに必要なものだけを持って、お友達の元へ。無事合流できたことでやっと安心して、一時的に一人旅は休憩にした。ゆっくりとお昼ごはんを食べる余裕もなく歩きまわっていたから、お友達からもらった大福がとてつもなく美味しかった。
しばらくして、京セラドームへ。初めて見る京セラドームは、テレビで見ていた通りおもしろい形をしていた。全力でライブを楽しんで、終わってから遅い時間にご飯屋さんに入って料理をシェアしながら感想を話したりして、全てが新鮮だった。

コンビニで朝ごはんを買い込んで、宿に戻り、なんでかカリカリ梅を食べながらテレビを見た。チャンネルがいつも通りじゃない心細さとおもしろさで、色々チャンネルを回してみた。そんな中でもHey! Say! JUMPのいただきハイジャンプが流れた時の、ジャニーズ…!という安心感はすごかった。未知の土地でのジャニーズの力。あとはジャルジャルが道行くカップルにゲスい質問をしている番組も見た。その後お笑い番組が始まってくれたので、これなら寝付けそうだと流し見しながらそのまま眠りについた。


大阪で、サタデープラスを見る。というのがちょっとした目標だった。起きてテレビをつけて、丸山さんが映っている。大阪にいる丸山さんを大阪で見ている。という喜びはひとしおだった。

2日目は京都に行くと決めていたので、支度をしてチェックアウトを済ませ、京都駅へ。電車移動もここまでくると慣れたもので、難なくこなせるようになった。
2日目こそは食べたいものはちゃんと食べる!と心に決め、まずは茶そばを食べに「中村藤吉」へ行った。そこそこ並んでいたけど、この後どこへ行こうか考えながらゆっくり待つと、意外と早く順番は来るもんで、カウンターで茶そばと美味しい抹茶ゼリーを頂いた。抹茶の苦味もあって、餡子とのバランスが良かった。

お腹も満たされ、さてどう周れば京都を楽しめるだろうと考えて、観光地だし、バスのフリーパスとかあるんじゃないかとひらめき調べるとあった。バス案内所に行ってみると、500円で行きたい所に好きに乗り降りできる素晴らしいフリーパスと地図を手に入れた。
大きな看板の前には、案内係のおじちゃんが経っていて、行きたい場所を言うと即座にバスの番号を答えるというプロの仕事さばき。どこで待てば乗れるのかを教えてもらい、半信半疑でバスに乗り込む。隣に座っていたご夫婦がフリーパスの使い方を分からなそうにしていたから、話しかけて、使い方を伝えた。自分は振り切ると人見知りスイッチなど吹っ飛ぶことがこの旅ではっきりわかった。


手づくりの金平糖を買いに行くため、降りるべきバス停は知っているのだけど、文字で覚えているため読み方が分からない。京都のバス停名は読解の難しいものが多かった。音で分からないというのは思っている以上に不安なもので、文字の形のみで確認をとるという、普段使わない脳を使っているような感覚になった。
地図と携帯のGPS案内を頼りに、金平糖屋さんを見つけることができ、りんご味の金平糖を一袋、買うことができた。渡された釣り銭がピッカピカだったことに衝撃を受けつつ、次の目的地、祇園へと向かうことにした。

信じられないほど複雑怪奇なバス路線をどうにか読み解きながら、番号とバス停名と、あとは感覚で、乗り降りした。バス停ごとの番号にだいぶ助けられたので、あれだけ説明しずらいバス路線を番号で割り振っているのは工夫されているなと思った。


よーじやを眺めて通り過ぎ、辻利のソフトクリームを食べた。寒すぎて、なかなか無くならないコーンの中のソフトクリームに若干いらっとした。でも美味しかった。


見たいなと思ったら立ち寄って、気ままに歩く京都散歩はとても楽しかった。唯一事前に調べて行きたいと思っていた喫茶店ソワレも通り過ぎたり迷ったりしながら、見つけることができて、休日にもかかわらず待たずに席に着くことができた。目当てにしていた、カラフルで綺麗なゼリーポンチを注文。ソフトクリームで凍えきっていたため、ホットミルクティーも注文した。並んで気付く。テーブルの上が水分と水分。お腹たっぷたぷ。

最後に、百貨店でやっていた手作りアクセサリー展にも立ち寄って、着物に合いそうな京都らしい三角イヤリングを旅の思い出として買った。無事に京都駅までバスで戻って来ることができた時の達成感はすごかった。一人ドヤ顔だったと思う。


新幹線に余裕をもって移動しなければと新大阪へ戻り、たこ焼きくらいは食べて帰ろうかとも思ったが、水分でお腹いっぱい。今回は断念した。夜ごはんは買っておこうと駅弁屋さんで柏ずしを買っておいた。結局新幹線では食べず自宅で食べたけど、これが驚くほど美味しかった。次も必ず買う。

帰りの新幹線は、家に帰れるかどうかが賭かっているので、行きにも増して用心深く新幹線の番号と時間を確認した。新幹線に乗り、帰りもまた外の景色をずっと眺めた。



大阪も京都も、まだまだ知らない場所が沢山ある。一人旅もいいけれど、今度は誰かと行ってみたい。商店街でコロッケ買ったり定食屋さんに入ったりして、関西の空気を体感したい。

まずは今回、行ってみないと想像することも出来ない場所や風景を自分で見て来られたことが、自分にとって大きな一部になった。不安になりながらも、なんだかんだこなし、楽しめたことも自信になった。もっと現地でいろんな人と接してみたかったという課題も残っているので、必ずまた行こうと決めている。