ゴスペラーズと関ジャニ∞で歌うハーモニー「星屑の街」

 

幼い頃、母が運転する車の中で聞こえてきたのはゴスペラーズの歌声。

ミモザ」がよく流れていた。

 

時が経ち、自分で音楽を選び聴くようになって、その中でもどこかゴスペラーズは特別な位置にいて、Little Glee Monsterとのミュージックフェアでのコラボを見てからはさらに“歌声”で曲を作り出す人々のすごさに惹かれるようになった。

関ジャニ∞を好きになってからの私には、関ジャニクロニクルでカレーを作ってくれた黒沢薫さんや、関ジャム出演で話しをされるお一人お一人の印象、音のチェックをするあの銀の棒は“音叉”と呼ぶのだという知識が加わっていった。

 

先日放送されたミュージックステーションで、ゴスペラーズと「星屑の街」を歌ったのは、関ジャニ∞丸山隆平さん、安田章大さん、大倉忠義さん。

関ジャムでもセッションしていたこの曲。その時は丸山隆平さんと大倉忠義さんの2人での参加。

本来、行われるはずだった関ジャムフェスのリベンジとも取ることができるけれど、この間隔の短さで再び同じ曲を歌うことは、挑戦であり、プレッシャーにもなり得るのではと感じていた。

テレビサイズの編曲で歌うことは、メロディーの流れを掴む難易度も一層上がるはず。

ゴスペラーズだから成すことの出来る、一音を逃さない歌い出し。ミルフィーユのように緻密な音の層。何がすごいかを意識せず、すっと聴いてしまうのは、それが徹底して自然であるからなのだと感じた。

 

 

「星屑の街」

作詞・作曲 北山陽一さん、安岡優さん

編曲 北山陽一さん

 

冬の季節に合うゴスペルの雰囲気が“Uu-”というハーモニーで描かれて、

一瞬の沈黙のあと、“Ha-”と一気に厚みを増す声。

オーケストラが一斉に鳴り響いた時の迫力に似ていた。

 

探してた明日が 今ここにあるよ

追いかけてた昨日を塗り替えながら 

くっきりと通る村上てつやさんの声が、瞬く間に夜へと導く。

はじまりの“Uu-”で、北山陽一さんが大倉忠義さんの方を向いてうんうんと頷き、大倉忠義さんがほんのりほっとしたように微笑む様子があった。

低音で地盤を築くイメージを持っていた北山陽一さんが“生まれ変わるさ”のパートを思いきり声を張り歌うギャップにハッとさせられて、人の声の表情は一辺倒ではないことに気づく。 

 

大丈夫 ずっと この歌を歌いながら

大丈夫 ずっと この歌とここまで来たよ 

酒井雄二さんの声が、夜空に掛かる雲を吹き消して、星の見える空をつくるかのように、晴れやかに響く。

“大丈夫…”とつづく短い歌詞の中に、言葉では言い切れない多くの思いを感じて、多くを語らずとも伝わる道のりに心を揺さぶられる。この歌詞の前にある、“二度とは帰らない 今日だっていいよ”という言葉と同じく、「星屑の街」で聞こえる肯定の言葉はとても穏やかで、そして美しい。

 

あの日見上げた星空より高く

夢で想うより遥か遠く

今夜連れてゆくよ ごらん 星屑の街へ 

 

ウーアーで低音をキープしていた大倉忠義さん。コーラスで音を重ねていた丸山隆平さんと安田章大さん。サビに入り、声の立ち位置が変わる。

関ジャムでは漏れ伝わる緊張感があって、どの程度声をマイクに乗せていいものか探り探りに感じられた最初のセッション。特に、歌の間が開く“遥か”と“ごらん”の始めの一音、“は”と“ご”の入りの息遣いを合わせるのが大変そうに見えた。そして、“ごらん”の“ん”で口を閉じずに発声できる黒沢薫さんのすごさも感じた。

12月1日放送だった関ジャムでのセッション。それから少しの期間があり、12月27日の生放送。ミュージックステーションでのセッションは、自信を持ってマイクに声が乗っていて、丁寧にアカペラを楽しんでいる空気が伝わってきた。

 

サビから大サビに繋がる時、黒沢薫さんと丸山隆平さんの主旋律から、安岡優さんと丸山隆平さんの主旋律にバトンが渡るところがすごく好きで、聴くたびに浸ってしまう。

まるで肩にそっと手を置いて大丈夫と伝えるように、安岡優さんが微笑みかけながら声を合わせていく空気感に、とてもぐっとくる。

2度目のセッションで明確に変化があったと感じたのは、サビでの丸山隆平さんだった。

丸山さんの声が綺麗に響きやすい、ゴールデンラインと私が勝手に呼んでいる声色は関ジャムの方だと思うのだけど、ミュージックステーションでの「星屑の街」のサビは音程なのか声の出し方なのか、印象が変わっていて、サビでメインを歌う黒沢薫さんの声色に近いハイトーンではなく、太く1段か2段声を下げた歌い方になっているように聴こえた。

それによって、並行して同じ声の色を響かせ合うのではなく、黒沢薫さんの声にフィットする形で丸山隆平さんの声が響いていた。

 

 

そしてラスト。

“ごらん 星屑の街へ”と歌うパートの、“街へ”の部分。

ボーカルが安岡優さん、丸山隆平さん、安田章大さん、大倉忠義さんの4人だけになる。声数をスッと減らして、浮かび上がらせる魅せ方が素敵だった。

 

大丈夫 きっと この歌がいつの日にも

大丈夫 きっと この歌は街のどこかで

 

セッションでは歌われていない、この歌詞を好きになった。

街中で、耳馴染みのあるメロディーに気がついた時、とてつもなく勇気が湧く。歌があり続けるかぎり、ふいな出会いにこうして喜ぶことができるのだと思う。

 

音に耳をすまして、隣にいる人の声を聴いて。

アカペラで歌う曲がこんなにも魅力的なのは、意識が横並びに向いていなければ成立しない、ハーモニーという繊細さで一つの音楽を作り上げているからだと感じる。

「星屑の街」は、“声”そのものの美しさを教えてくれた。

 

涙声の美しいSexy Zoneが歌うバラード「名脇役」

 

Sexy Zoneは涙声が美しいグループだと思う。

Sexy Zoneの曲を聴いて、好きだ!と直感したのは「A MY GIRL FRIEND」「無邪気な時間は過ぎやすく」で、どちらの曲にも共通するのが“涙声”なのかもしれない。

悲しそうなのが伝わる、聴いているこちらまで痛みを感じる表現。掠れ気味に、泣きそうになるとキュッと喉が狭くなるあの感じを、歌のなかで表現することができる魅力。

そして、名曲だとなんとなく知りながら聴いてこなかった「名脇役」をついに聴いて、これはもう。言いようのないくらい好きだと一度聴いて捕らえられた。

 

切ない曲も、片想いを歌う曲も多種多様にあるけれど、切なそうに歌えば成立するものでもない。

本人の中にある引き出しや、感情移入の深み。歌いはじめから曲が終わるまでの間に、どれくらい歌詞の主人公に入り込むことができるかが曲の魅力に直結すると思っている。そこには冷静さも必要で、のめり込めばいいということでもないのが難しいなと思う。

一人で歌えばその時間もしっかりと持つことが出来るけれど、メンバーごとにパート割りがあり、全ての歌詞を歌うわけではないとなると、それはさらに繊細な作業になってくる。

 

Sexy Zone名脇役

作詞・作曲:竹縄航太さん(HOWL BE QUIET

編曲:竹縄航太さん/sugarbeansさん コーラスアレンジ:竹内浩明さん

アルバム「XYZ=repainting」に収録されている。

 

強気で自信ありげなアプローチや、挑発的な煽りが魅力とされるパフォーマンスもある。

けれど私は、かっこがついていない、弱さを滲ませるステージ演出に惹かれる傾向にある。憂いをまとうという意味では、“かっこはついている”と言えるのだけど、歌う本人が感じてきた感情のグラデーションを垣間見える気がして。

 

ひたすら想いを募らせて、すごく近い関係性でいるのに、相手の方はその想いに気づく素振りもない。

どこにいても 何をしていたとしても

君のことばかり思い出し

おとなしく 苦しんでるよ

はじまりからもう切実で、“おとなしく 苦しんでるよ”という言葉には自虐的な視点すら感じる。それでいい、そうしていればいいんだと、この場から動けなくなっている主人公の心情が伝わる。

 

思い出したくもないよ

なんて思えば 余計にもっと

身体でもない頭でもない心が動くの

 

困らせないでよ 苦しくさせないでよ

そんな風に優しくすんなよ 

 

心だけを語らず、その前に“身体でもない頭でもない”と二つの否定形がつづくことで、“心が動くの”という結論に至ったあらがえない本心がわかる。

優しくしないでと言う女性視点の歌詞は耳に慣れていたけど、“そんな風に優しくすんなよ”と言う歌詞から、優しくされているのは彼の方で、きっとその優しさは何も考えていないから出来てしまう酷なものなのだと思う。

 

“思い出したくもないよ なんて思えば 余計にもっと”

“困らせないでよ 苦しくさせないでよ”

この二つのメロディー進行を聴いた時に、ああ好きだ。と降参した。

これほどバラードが溢れていれば、切ないメロディーラインもパターンは出来ていくと思うけれど、しかし意外と自分のツボにハマる耳心地のいい進行コードに出会うことは稀だったりする。ここまでは好き、この先でこう進んで…!と望みをかけるものの、あれっそっちに転調する?!と予想の斜め向こうに行ってしまう曲もある。

それは好みの問題だと分かるから、一個一個確かめるようにツボを押さえていってビンゴに当てはまる曲を見つけた時、最高に嬉しい。

しかも、ここの歌詞を歌う中島健人さんの声が、喉が狭くなる泣く直前のような声色で歌うから、儚げという言葉では足りない弱々しさにドキリとしてしまう。肩を落とすように、でも愛おしさで微笑んでしまう苦しみと幸せに板挟みにされるような。

 

 

タイトルだけを知っていた時には、ドラマや映画の登場人物に“僕たち”を重ね合わせて歌っている曲なのかと予測していた。

しかしそんなハッピーな浸りは存在しなかった。等身大で、余裕がなくて。もっとひたすらに切実だった。主人公であるはずの歌の中、タイトルを見た時にやっと、歌の“彼”の立ち位置を知る。

 

なんにも知らないくせして

「どうしたの?」なんか聞いてくんな 

穏やかな言葉づかいがつづくなかで、“聞いてくんな”と語気が荒くなるところに、隠し切ることのできない苛立ちといっぱいいっぱいな心情が溢れていると思う。

 他でもない君でこんな始末になってるんだよ

この一行に、やけになるほど高ぶる想いが見える。その気持ちすら、相手に伝えることができない。

“こんな始末に”と言ってしまいたくなるほど余裕をなくす姿に胸が痛む。始末という言葉を辞書で調べると、いくつかある項目の中に【結果。主として悪い状態についていう】とあった。

 

歌が進むと、序盤では“身体でも頭でもない心が動くの”と歌った歌詞が、終盤で“身体でも頭でもない心が言うのです”と変わる。

ぽつりとこぼれた敬語に切実さが灯って、そして前の歌詞を塗り直すみたいに

だからもう困らせてよ 苦しくさせていてよ

そんな風に優しくしといてよ 

と言葉が続く。

“もう”の二音でこんなにも切なくなれるのかと、言葉に変えることのできない情緒の深みを知る。

本心は苦しいままなんていいはずがないのに、それでもいいから繋いでいたいと願うアンバランスな描写に、一つの曲の中とは思えないほどの世界観を見る。

 

BSの番組「ザ・少年倶楽部」で歌っていた際のパフォーマンスが本当に素晴らしかった。

グランドピアノを弾きながら歌う中島健人さんは、CD音源よりもストレートな声の伸ばし方をしていて、菊池風磨さんは涙声に甘さがかなり増している。佐藤勝利さんの消え入りそうな声が哀愁を表現して、松島聡さんの歌声はドキッとするほど落ち着いた表情を見せる男の子で、マリウス葉さんの理性的で安定した声にある包容力。

アルバムに収録されている1曲である「名脇役

同じアルバムでも、他の曲を聴けば全く違う世界観の歌声が聴こえてくる。

恋に落ちたばかりの有頂天なラブソングを歌ったかと思えば、トリッキーなメロディーの曲を歌い、切なさに心が裂けそうなバラードも歌う。曲ごとに映画のチャンネルを切り替えていくような意外性に何度だって驚く。

そんなSexy Zoneが見せる様々な表情の中でも、Sexy Zoneの声で歌われる切ない心情の曲は特別な魅力を放つのだと、心から実感した。

 

りんごのコンポートがちょっと特別

 

アップルパイが苦手で、ごろっと入ったりんごもあまり喜べない。

食感は一つにつき一つが理想的。シャキシャキしてるならシャキシャキ。とろっとしてるならとろっと。だからサクッとふわっと!な謳い文句は嬉しく…ない。

温かい果物となるとなおのこと。冷えといてー!と思う。

 

だけど、12月にインフルエンザとの闘いで体力を使い果たした時、食べたくなったのはりんごだった。

すりおろしたのとか、なんかそういう優しいものが食べたい。そう思っていたら、りんごのコンポートをいただいた。なんと手作りの。

バニラアイスをソースとしてのせて食べたら美味しくて。

避けていたはずのシナモンもバニラアイスと食べたら大丈夫だった。それ以来、温かいりんごを見かけると気になる。また食べたいなーと思っている自分がいる。

 

ミニストップにアップルパイソフトがあることを知って、これは!食べる!と試しに行った。

ソフトクリームだけでも最高なのに、その下にパイ生地と温かいりんごが入っていて、シナモンもかかっている。

パイ生地がプレートのようにソフトクリームとりんごの間で仕切りの役割をしてくれているおかげで、ザクッと崩したところからソフトクリームが熱に触れて溶けていく。美味しかった。とても美味しかった。

お値段がソフトクリームシリーズの中でも高いけど、りんごだもんね…美味しいからね…と納得してしまう。

 

温かいりんごを克服できた。手作りのコンポートのおかげで。

だけど素直に話せば、克服できたことよりも、病み上がりを思いやって、作り持ってきてくれたことがありがたくて嬉しかった。

だから最近、私の中でりんごのコンポートがちょっと特別。