読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画「県庁おもてなし課」で、錦戸亮さんが普通の人を演じていることの魅力

 

映画「県庁おもてなし課」を時々、無性に見たくなる。

関ジャニ∞を知って、錦戸亮さんが出演している映画を一通り見てみたいと思ったことがきっかけでレンタルをして見たところ、レンタル繰り返し枠のスタメンに入るほど好きな映画になった。私は先入観で、観光活性化に熱く取り組む映画なのではと食わず嫌いをしていた。

しかし、観光地だけを押したり、あからさまな恋愛だけがあるような、そういう映画ではなかった。

 

まず、錦戸亮さん演じる「掛水さん」がとてつもなく可愛らしい人だった。こんなにも人当たりの優しい役柄を錦戸さんが演じているということにギャップを感じた。これもまた先入観で、錦戸さんというとドラマ「流星の絆」や「ジョーカー」のように気の強い“兄ちゃん感”のある役を演じるイメージが強かったからだった。

掛水さんは普通の人だ。普通の男の人。

濃い役柄を演じようと思えばどのようにでも出来てしまいそうな錦戸さんが、こんなにもシンプルに公務員役を演じていることへの意外性があった。特徴のない人や“普通”の人を演じることは難しいと、役者さんが語るのを読んだことがある。だからこそ、掛水さんという役柄に惹かれるのかもしれない。

セリフがなくても、表情と眉の動きのわずかな移り変わりによって心情が見える。どこにでも居そうだけど、どこにでもは居ない“掛水さん”という、錦戸さんが演じているからこその役の魅力がこの映画には満ちている。

県庁おもてなし課」では、気弱な性格の掛水さんのおかげで、錦戸さんの困り顔も、ニカッと笑う笑顔も沢山見ることができる。

 

そして出演者の方々が話す方言も魅力的で、高知弁は聞いているうちに耳に馴染み、特に「〜ながです」という言い回しが好きだった。「ないろう」とか「にゃあ」という語尾もいい。聞いていると、高知弁と関西弁がリンクする瞬間を所々に感じた。

普段は関西弁を話す錦戸さんが高知弁を話すことで、違和感が小さくなっていたのではと感じながら見ていた。似たイントネーションがあると、それはそれでこんがらがるのかもしれないけれど、方言の波の動き方を感覚で掴めているほうが、音を近づけやすいのかなと思った。

 

トーリーのなかでは微かな恋もあり、私はこの絶妙なさじ加減での描かれ方が好きだった。告白!駆け引き!みたいな分かりやすさではなくて、野暮でもドラマティックにでもなく 、静かに、でも確かに二組の恋が近づいていく描写は、品があって素敵だなと思った。

それぞれが心配することなんて何もないのに、勝手にヤキモキしている様子も可愛くて。明神さんの表情に注目していると、清遠佐和さんから掛かってきた電話を切った後、掛水さんが電話口の佐和さんのことを「ちょっとかわいかった」と言った時に、僅かにむすっとした顔をしていて、そこは幼い女の子なんだなぁと感じた。

 

掛水さんの行動で素敵だなと思ったのは、

運転中、助手席で急に不機嫌になった明神さんに、いらっとしたり面倒くさがるのではなく、車をちゃんと止めて、すぐ伝えるところがいい。そういうところに誠実さが表れているなと思う。掛水さんは話をする時や電話に出る時に、すっと道の端に車を寄せる。その動作が静かで綺麗だった。

運転中に電話がかかってきて車を停める時は、電話に気づき胸ポケットに手を添えてから車を停めて、それから電話に出ていて、ぱっと電話を取るのと違いリアリティーがあるように見えたのは、そういう細かな動作ひとつなんだなと感じた。

 

そのシーンから続く、アイス屋さんを見つけるシーンがとても好きで。食べながらふいに「機嫌なおった?」と聞く掛水さんの声のトーンもいい。せっかく車から降りたのに、車のシート分、距離を律儀に空けてしまう二人の歯がゆさもいい。

しかし掛水さんはただ穏やかな平和主義というわけではないと分かる瞬間があって、それまでの優しい空気とのギャップに驚く。印象的だったのは、清遠さんの民宿からの帰り、車の中で明神さんとケンカになって、掛水さんが冷静でいられずに怒るシーン。それまで穏やかで、どんな理不尽さにも柔らかく返し、「ええ人ですね」と明神さんからも太鼓判をもらっていた掛水さんが、怒るという感情を明神さんに見せた瞬間。明神さんにだから見せた感情。空気も表情も、男の子だった。

それでも怒り慣れていない感じが出ていて、そのぎこちなさも演技で表現しているのが凄い。

 

いざという時、大切な言葉を言えずに口ごもってしまいそうな掛水さんが、「もうええです」と小さい女の子みたいに拗ねる明神さんを前に、しっかり伝えた言葉。

「頼むき、もうええことにせんといて」

この時の声が、喉が閉まるような少し震えているような声が、耳から離れないほど良かった。

その後に続く言葉も抽象的ではあるけれど、でもはっきりと、お互いが感じているなにかが二人の間に空気としてあることを表現している素敵なシーンだと思った。

掛水さんは気の強い人ではないけれど、思いが強まった時はちゃんと言える人なんだなと、このシーンで一気に心を掴まれた。抱きしめ方にまで性格が表れていて、大げさではない抱きしめ方だけど断固として明神さんを離す気はないところが男前。よくぞこの場面を映像化してくれました…と思う。これまで映画などで見たことが無かった距離感。掛水さんと明神さんという等身大で素朴な二人の関係性が新鮮に感じて、とても良かった。

 

掛水さんの可愛いポイントは随所にあって、朝出勤の支度をするシーンでネクタイを首に下げて部屋を歩く様子は見ているだけで癒される。高知県巡りをしている時に芋天を食べて「あ、ほんまや!」って関西弁なのか高知弁なのか分からない天然なリアクションをしているところや、ゆずのお店に入っていく時にさり気なく「ゆっず♪ゆっず♪」と言っていたりするところなど、一個一個が可愛い。

 

観光を活性化させようというストーリーも、“人のいない所に人を呼ぶには?”という大きなテーマで考えると、様々な状況に当てはまることだと思った。実際にどう行動に移して魅力を伝えるのか。伝えるだけでなく、いざお客さんが来た時に何が足りていないのか。

観光コンサルタントとして依頼をされた清遠和政さんが、“おもてなし課”とネットで検索をしてみて、サイトを作ったことで満足してどのページも工事中ばかりなことに気付き、これでは駄目だと改善点をすぐに見抜いたところは、自分にも当てはまるところがあり、確かにそうだ…と勉強になった。

そして、報告・連絡・相談が絵に描いたようにしっかりと出来て、仕事も完璧に見える明神さんも、就活に悩み、どこにも必要とされていないのではないかと感じる劣等感を抱えていたということは意外だった。

掛水さんに「しっかりしてる」と言われて、不安な本心を話し、「私、役に立ちますか?」と聞くシーンは、明神さんの抱えていた弱さを表しているようで胸がしめつけられる思いだった。掛水さんから見たら充分に役に立っているに決まっているのに、そんな明神さんでも自分に居場所があると思えずにいたのだなと考えると、契約の切れてしまうタイミングで「おもてなし課」へ来ないかと声をかけてもらえたことはどれだけ嬉しかっただろう。

 

外へ向けて物事の良さを伝えるには、自分が直に触れて、関心を持つ。自分の考えることではなくそこへ来るお客さんの考えることを思い巡らして、映画の中で言う“民間感覚”に耳を傾けることが重要なのだと、この映画から教わった。そして、熱量。我を通すのではなく、伝えたいんだという思いを口から話す言葉に込めて、温度のある声で話す。

だから掛水さんの思いが、テレビの向こうまで伝わる。「多紀ちゃん」という、つい溢れ出た言葉に込められた想いも。

このシーンの「多紀ちゃん」は、映画館のスクリーンでなくてDVDで見ても驚きで、拍子抜けするほど可愛くて。すぐに巻き戻してリピートした。声の頼りなさ、力の抜けた感じといい、嬉しそうな困ったような表情といい、絶妙。

仕事中で、テレビに出ていて。でも伝えたいことを伝えきった後、一言くださいと言われて瞬時に思い浮かんだのは多紀ちゃんで。今の僕なら呼んでもいいんじゃないか…そう考えた末のあの一言だとしたら、そのズレた感じが物凄く掛水さんらしくていい。

何テイク撮っていたのか分からないけれど、あのニュアンスは錦戸さんだからできる感性の活きた表現だったと思う。

たった一言だけど、掛水さんの性格が全て溢れているような一言で、明るく言いすぎても照れすぎていてもきっと違う。映画全体の流れを汲んでのあのシーンは素晴らしかった。

 

エンディングで流れるのは、関ジャニ∞が歌う「ここにしかない景色」
『ようこそ』と歌うこの曲が、映画を見終えた気持ちに浸透していく。

誰かをもてなすというのは、気を張ることだし、難しい。内部に居すぎてしまうと客観性を気付かぬうちに見失う。相手のことを思っているつもりでも、相手の求めているものとは違うかもしれない。いい仕事がしたい、やる気を強めたいと思う時に「県庁おもてなし課」を見たくなるのは、そのヒントがここにあるからなのかもしれない。

もしも望みがかなうとしたら、ミニシアターをつくりたい。

 
もしも、好きなように使える予算があって、何をしてもいいと言われたとしたら。
自分が支配人になって、理想をいっぱいにつめこんだ、小さな映画館がほしい。
 
支配人の力を駆使して、とにかく自分が好きな映画を上映スケジュールに組む。
これを映画館のスクリーンで見たかった、ちゃんとした音響設備で聴きたかった、という思いの丈を盛り込んだ、オリジナルの映画館。スクリーンはそんなに大きくなくてもいいけど、座席はレトロな赤いふかふかの席がいい。
 
メインで順番に上映するのは
味園ユニバース」「ばしゃ馬さんとビッグマウス」「バッテリー」「ペネロピ」「キリマンジャロの雪」「かもめ食堂「めがね」「しあわせのパン」「8UPPERS」
 
上映前の音楽もきまぐれに選んで、それをレコードでかけられたらいい。いつも決まって夕方になると、ビリージョエルの「Honesty」をかけたい。
月に何度か、サックス奏者の方にロビーでの演奏を依頼する。
 
 
全体のイメージで言うと「ホノカアボーイ」のシアターがまさにそう。
シアターを出て、ロビーにはその日ごとのおやつがあって、マラサダもいいしポップコーンは欠かせない。片手で持てるサイズの、赤と白でストライプな縦長カップにポップコーンが入っていて、フレーバーポップコーンもある。ブラックペッパーとカレー味。ドリンクはジンジャーエールと、もはやコーヒー牛乳なミルクの多く入ったカフェラテがあって、夜はカクテルのダージリンクーラーをメニューにする。
 
ロビーの内装は壁の一つをベイビーブルーにして、窓のフレームは白に。パッチワークみたいに単色の布をつなぎ合わせたソファーも置きたい。
シアターへの入り口は赤いベロアの重たいカーテンで、金色のロープで両端に留める。
 
これを映画館で観たかった…と思うほどの映画を日常で見つけた時に、そんな映画館があったならとふと思う。後から気がつく映画の良さを、スクリーンで。公開期間に間に合わなかった後悔も、ここでなら取り戻せる。
 
 
こうやって書いていると、脳裏にずっと千鳥のノブさんの声が聞こえる気がするけど、たまにはわけもなく空想してみてもいいかなと思う。好きなものばかりなんて最高じゃないか。
 
自分でつくるミニシアターは空想のなかだけど、ずっと悔やんでいた「味園ユニバース」をスクリーンで観たかったという思いは、奇跡が起きて、本当に映画館で観ることができる可能性がでてきた。実現可能だなんて思いもしなかったけど、チケットを取ることができたなら、私の望みは一つかなうのかもしれない。
 
 
p.s.
「宛名のないファンレター」をいつも読みに来てくれる方、検索を通して読んでくれている方、ありがとうございます。
文章を書くばかりでお礼を伝えられないままでいたことが気がかりで、やっと言葉にできました。読者登録や星をつけてもらえることも、書き続ける力になっています。
どんな場所で、どんな人が読んでくれているのだろうと思いを巡らせながら書いています。
興味のあること、好きなこと、あっちへ行ったりこっちへ行ったりな文章ですが、これからもよろしくお願いします。

「パンぱんだ」が可愛いのはどうして?− ユニットシャッフルの魅力 −

 

癒しを必要としている時に見る「パンぱんだ」の包容力はすごい。

初めて知ったのは、ライブ「十祭」のDVD。大倉忠義さんと安田章大さんが、ユニットカバーという形で披露していたのを見たことから。なので元々がこの二人の組み合わせなのかと一時期は思っていて、本家は丸山隆平さんと横山裕さんの二人だと知って凄く意外だったのを覚えている。

丸山さんは可愛らしい曲のイメージもあったけれど、個人的に関ジャニ∞を知った当時、横山さんはシュッとしているイメージ。トークを仕切ったりしている落ち着いたお兄さんな印象を持っていて、この曲を横山さんが…!?と想像がつかないくらい衝撃があった。

関ジャニ∞のユニット曲はインパクトが強いものが多い。こんなことするの?!という驚きを見るたびに受ける。もしもユニット曲MV集が発売されたら、関ジャニ∞に興味を持ち始めている人にはそれを見せたいくらいに楽しい。そのインパクトの強さに引っ掛かりを感じる人がいるはず。

 

「ビースト!」「Kicyu」「アイスクリーム」…挙げきれないほど、どのユニット曲も意外性とサプライズに満ちていて、そんな中でもカワイイユニット曲ランキングを作るなら「パンぱんだ」は外せない。

本家の「パンぱんだ」は、音源は「FIGHT」映像はライブDVD「EIGHT×EIGHTER」に収録されている。

子供番組から飛び出してきたようなビジュアル、衣装がまたとてつもなく可愛くて。パンダの帽子をかぶって、モコモコしましまのフードつきパーカーを着ている丸山さんと横山さん。モコモコ手袋まで…!そして似合っているという衝撃。全体の色合いは白黒だけど、丸山さんの衣装は何重もの三角が重なっている幾何学模様のTシャツに水玉模様のサルエルパンツを合わせることでステージでも映えていて、横山さんの衣装はボーダーのパーカーに白Tで黒の膝上短パンがナイスバランス。

ジャケット衣装やステージで目立つ衣装が多いなかで、部屋着のようなリラックス衣装の二人を見られる嬉しさもこの曲の魅力かなと思う。ライブ衣装といえばゴテゴテでギラギラしたもの、という先入観のあった頃に見たこともあって、こんなにシンプルな衣装も有りなんだという驚きがあった。

今となってはライブならではの派手目な衣装の良さも分かるようになったけれど、それでも変わらず普段着に近い形の服は好みで、ライブMCで白Tに着替えて出てくる時とかなんかはグッとくる。具体的には「JUKE BOX」でのMCの渋谷すばるさんがとてもいい。

 

振り付けも覚えたくなる可愛さで、手を顔の周りで動かす振りが多いため、女性アイドルのダンスに似たキュルルン感が溢れ出ている。ここまで可愛さにメーター振り切った演出にしたアイデアが素晴らしい。

ライブDVDでは各公演のラスト名場面集が入っていて、丸山さんにとって馴染みいっぱいの“パン”が歌詞に盛り沢山なこの曲を歌っているという時点で面白可愛いのに、最後に“パン”を強めに言わずにいられない衝動に駆られる丸山さんとそれを懸命に止めようとする横山さんの攻防が微笑ましすぎる。最終公演は「じゃあ、ラストやし、一緒に言おうか」と横山さんが言って、丸山さんが「うん」と頷いた後、いくよ?と表情で小さく合図して、会場全体の阿吽の呼吸で「パーン」を言う流れを全部含めて、ほのぼのに満ちている。

この曲の時のバルーンの演出もとても好きで、カラフルなバルーンが曲中に登場して客席へと満遍なく移動した後に、サビのタイミングでバルーンが割れて中からパンダの風船と紙吹雪が降ってくる演出。始めから空中に仕掛けが用意してあるのではなくて、本当に突然出てきて驚く感じがいいなとDVDで見ていて新鮮に感動したのを覚えている。またパンダの風船のサイズ感が絶妙で、手に取りたくなるミニマムさがいい。

 

大倉さんと安田さん版の「パンぱんだ」も良さがいっぱいで、二人が並んでこの曲を歌っていると、ファンタジー感がすごい。なんとなく、丸山さんと横山さんは絵本。大倉さんと安田さんはファンタジーなイメージ。

ファンにたまらないユニットシャッフルの集合体が「十祭」だと思っているので、二人の組み合わせは最高に決まっているのだけど、想像以上の魅力と威力を発揮している。安田さんの衣装の似合いっぷりが半端ではなくて、着こなしているすごさ。大倉さんは若干照れていて、堂々としている安田さんと照れ笑いが溢れてしまう大倉さんに二人ならではの空気感が表れていていい。

二人の「パンぱんだ」を見て初めて、“あざとい可愛さ”とはこういうことか…!と分かった。「十祭」での二人の振り向きウインクは本当にズルい。確信犯的に狙い落としにきているのは分かっているのに、だめだ可愛い…と全面降伏せざるを得ない。

 

「パンぱんだ」は、コンビによってそれぞれ違った魅力が溢れ出る不思議な曲だと思っている。本家だけに止まらず、ユニットをシャッフルしてよくぞ完全再現してくれましたと感動した。1曲で2パターンも楽しみ方があることの贅沢さを感じながら、この曲の持つゆるさにこれからも癒されていきたい。

そしてやっぱり、かっこいいユニットも好きなのだけど「my store 〜可能性を秘めた男たち〜」のように可愛さのある衣装や演出も好きなので今後のユニットも楽しみでしょうがない。